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プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作者: 虎馬チキン


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29/36

29 敗北

「む!? こやつら!?」


 ダークマターの連中は、カタストロフ達を無視して護衛対象である馬車を狙い始めた。

 魔法が、矢が、飛翔するアーツが、馬車目掛けて放たれる。

 あの馬車はイベントオブジェクトだが、決して破壊されない訳ではない。

 モンスターの襲撃から必死で守っていた事からもわかる通り、攻撃を受ければ普通に破壊され、中にいる悪徳貴族は死ぬだろう。


 そうなれば、クエスト失敗。

 俺達は、何がなんでも馬車を守り切らねばならない訳だ。


「剛力!」

「ぬぉおおおおお!」


 カタストロフの指示により、マックスが身を呈して馬車を守る。

 その圧倒的な防御力と回復力に任せて耐えるが、どう考えても長くは持たない。

 このゲームは、一人のプレイヤーかそこまでの突出した耐久力を得られるようにはなっていない。

 援護がいる。


「《ダークボール》! 《ダークボール》! 《ダークボール》!」


 カタストロフが連射性重視で闇魔法を放つが、正面の壁役に全て阻まれる。

 隠れたハンターも矢を放って援護するが、それも焼け石に水。

 ならば、俺が突撃し、奴らの隊列を乱すのみ。


 結局、やるべき事は変わらない。

 敵が手段を選ばず勝ちにきたというだけの話だ。

 不利になったのではなく、本来あるべき形になっだけ。

 そう思えば、何も不思議な事ではない。


 俺は奴らの後ろから強襲した。


「死神ぃ! 今度は俺が相手をしてやろう!」


 だが、そんな俺の前に破壊王が立ち塞がる。

 ギルドマスター直々に来るか。

 ……いや、最も強い個人が俺を止め、お荷物を抱えたカタストロフ達は数で袋叩きにする。

 なるほど、合理的だ。

 考えている。


「死ねぇえええ!」


 こんな脳筋全開のくせに。

 破壊王が大剣を振るう。

 唐竹割りだ。

 俺は体を回転させながらそれを避け、そのままカウンター気味に大鎌を振り抜いた。


「ふん!」

「……ほう」


 しかし、その一撃は即座に引き戻された大剣によって防がれる。

 そのまま、力任せに大剣が振り抜かれる。

 その一撃は大鎌を押しきり、俺の体を後方へと吹き飛ばした。

 凄まじいパワー。

 こいつも、俺と同じで攻撃力に極振りしているのかもしれない。

 下手したら、俺以上に。


「そら、次行くぜ! 《大破断》!」


 破壊王が大剣を振り上げ、振り下ろしながら飛ぶ斬撃を放つ。

 その威力は、サーベルが使った《ソニックブレイド》よりも遥かに強い。

 俺の《鎌鼬》に匹敵するが、凌駕しているだろう。

 さすがは、大鎌と同じ重量武器。

 その破壊力は折り紙付きだ。


「はっ!」


 俺はそれを大きく横に避け、流れるように腰から抜いたナイフを放った。

 さっきまでの、ただのナイフではない。


「小賢し……ぬぉっ!?」


 武器子謹製の特注品。

 標的に当たった瞬間に大爆発を起こす、爆裂投げナイフだ。

 武器子がやたらと品質に拘ったが故に数が少なく、値段も高く、しかも危なくて近接戦闘では使えない。

 だが、それだけのデメリットを許容できるだけの爆発力、攻撃力を持っている。

 普通のナイフと思って迎撃を選んでしまえば、初見での対処はまず不可能。

 破壊王の姿が爆煙に飲み込まれた。


「終わりだ」


 その爆心地に向けて、俺は駆ける。

 破壊王の姿は目視できないが、俺には《気配感知》がある。

 大体の位置さえ捕捉できれば十分だ。


「ッ!? なめんなぁああああ! 《大破断》!」

「!?」


 しかし、破壊王は視界が塞がった中で、的確に最善手を打ってきた。

 放たれたのは、さっきと同じ飛ぶ斬撃。

 だが、俺の《危険感知》が反応している。

 当てずっぽうに放ったにも関わらず、俺に当たる攻撃。


 すなわち、横薙ぎに撃った広範囲攻撃。


 致命の破壊力を持った斬撃が俺に迫る。

 だが、


「甘い」

「ぐあっ!?」


 俺は八艘飛びで斬撃をかわし、上空から破壊王を斬りつけた。

 手に持った大鎌から、標的をかなり深く斬り裂いたという手応えが伝わってくる。

 しかし、急所は外したようだ。

 殺した時特有の光の粒子が出ない。


「なら、もう一発……」

「いえ、そこまでですよ」


 その声が聞こえると同時に《危険感知》が反応。

 すぐに、その場を飛び退く。

 直後、そこに大量の魔法と矢が飛んできた。

 直線上にいた破壊王を巻き込みながら。


「うぉい!? 当たってんぞ!」

「ご安心を。レオンさんとパーティーを組んでいるメンバーによる攻撃です。ダメージはありませんよ」

「チッ! なら、まあ、いいだろう。気に入らねぇがな」


 爆煙の中から破壊王が現れる。

 肩口に大きなダメージエフェクトが付いているが、まだまだ健在そうだ。

 そして、破壊王と呑気に喋っているのはサーベル。

 こいつは、破壊王と入れ替わるようにカタストロフ達の相手をしていた筈だ。

 つまり、こいつがこっちの戦いに手を出してくるという事は……


「ええ、お察しの通りですよ。こちらは今終わったところです」

「ギャー!」

 

 見れば、ダークマターの連中によって馬車は破壊され、中から悪徳貴族が引き摺り出されて、剣や槍でグサグサと殺られているところだった。

 そして、すぐに悪徳貴族も光の粒子となって消滅する。

 近くにマックスとカタストロフの姿はない。

 殺られたか。


「チッ」


 俺は小さく舌打ちをした。

 これでクエストは失敗。

 こっちのメンバーも倒され、相手はまだ結構な人数が残っている。

 加えて、ダメージを受けているとはいえ、健在の破壊王とサーベル。

 正面からでは勝ち目がないな。

 全くないとも言わないが、護衛対象を失った今、正面から相手をしてやる義理はない。


「退却だな」

「! 待ちやがれ!」


 俺は近くの茂みに飛び込み、ハンターと同じように姿を眩ました。

 それを追って破壊王が駆ける。

 追って来るようならゲリラ戦だ。

 俺の得意な戦場へと引き摺り込む。

 ……というか、足遅いな破壊王。

 攻撃力の代わりに速度を犠牲にしたのか。


「待つのはレオンさんの方ですよ」 

「ぶげっ!?」


 あ、サーベルが破壊王の足引っ掻けて転ばせた。

 チャンスだ。

 俺は爆裂ナイフを投擲する。

 しかし、それは残っていた大盾使いに防がれた。

 俺が倒したのとは別の奴だ。


「何しやがる、サーベル!?」

「あなたが無策で追いかけようとするからですよ。こういうのは森の中などでのゲリラ戦は死神の土俵です。

 追いかけても殺されるだけですよ」

「じゃあ、どうすんだ!?」

「どうもしません。彼らの護衛対象を殺し、『深淵』と『剛力』をも打倒した私達の勝利です。

 死神の首は欲しいですが、まあ、無理してまで狙うものでもないでしょう」


 どうやら、サーベルはここで退散するつもりらしい。

 尚も納得できずに吠える破壊王を、他のメンバーが必死に宥めていた。

 あいつがギルドマスターじゃなかったのか?


 それでも、最終的には多数決の意見が通り、破壊王は丸め込まれて、しぶしぶ撤退して行った。

 だが、最後に、


「おい、死神! 聞こえてんだろ!? 

 今回は俺達の勝ちだ! だが、俺の勝ちじゃねえ! 俺はお前を倒せなかったからなぁ!

 次に会う時は、必ず俺の手でお前を殺す! 覚悟しとけ!」


 大声でそう告げて、破壊王は去って行った。

 追撃はキツイと判断し、俺は残っていたハンターと合流してギルドへと戻った。


 こうして、闇ギルド『サクリファイス』は、闇ギルド『ダークマター』に敗北したのだった。

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