21 ダンジョン攻略
「ダンジョンの中って、薄暗くて嫌だよね~。あ、そこの角トラップがあるから気をつけて」
ダンジョンに入ってからしばらく。
俺達は、シャロの持つスキル、《気配感知》《罠感知》《マッピング》などに助けられながら、順調に先に進み、モンスターを討伐していった。
斥候を名乗るだけあって、《気配感知》のスキルレベルも、俺とは比較にならない程に高い。
かなり離れた位置にいる敵も見逃さないし、罠の発見や道案内にも余念がない。
こうした人員がいると、ダンジョン攻略は非常に楽だな。
ウチのギルドでは真似できない。
「む! なんかモンスターが一塊になってこっち向かって来てる! 結構数が多いよ! 注意して!」
そんなシャロが警戒を促した。
全員が、その場で戦闘態勢を取る。
さすが王道騎士団。
動きがとてもスムーズだ。
「来たよ!」
そして、目視できる範囲にまで敵が近づいて来た。
動く鎧『リビングアーマー』が2体。
動く死体『ゾンビ』の進化系である、機敏に動く死体『グール』が3体。
そして、醜い巨人を腐らせたようなアンデット系モンスター『トロルゾンビ』が1体。
計6体のモンスターが同時に現れた。
ちょうど、こっちの人数と同じだ。
この数で来るのは、少し珍しいな。
さて、戦闘が開始だ。
「《シャインストリーム》!」
「《ホーリーランス》!」
まずは、聖女とマインの遠距離攻撃が相手に襲いかかる。
アンデット系のモンスターは光属性が弱点。
これだけでも、相当のダメージを与えられる。
二人の魔法は、一番前にいたリビングアーマー2体に命中。
しかし、そいつらが壁になった事で、他のモンスターは守られた。
しかも、リビングアーマーは防御力の高いモンスター。
弱点である光魔法を食らっても、一撃では死ななかった。
範囲攻撃の《シャインストリーム》に加えて、追い撃ちのような形でマインの《ホーリーランス》を受けた1体は消滅したが、もう1体はまだ健在。
残り5体。
剣聖が瀕死のリビングアーマーを斬りふせながら、声を上げた。
「マインとキョウは僕と一緒にグールの相手を!! ジャンヌ、アイギス、シャロはトロルの相手をしてくれ!!」
「「「「「了解!」」」」」
ゲストとはいえ、今は俺もこのパーティーの一員。
リーダーの指示には従う。
言われた通りに飛びかかって来るグールの1体を迎え撃った。
「ハッ!!」
グラムを振るい、グールの首筋を刺突で貫く。
プレイヤーや普通の人型モンスターならこれで終わりだが、アンデット系モンスターは例え人型をしていても、首筋が弱点とは限らない。
体がバラバラになるか、HPを全損するまで動き続ける。
それがアンデットだ。
実際、グールは首から上を失っても、普通に動き続けていた。
大振りなで隙だらけなパンチが俺を目掛けて放たれる。
その腕を斬り落としながらグールの横を抜けて後ろに回り、振り向きざまに背中を斬りつける。
「《スラッシュ》」
新たに取得したアーツによって、グラムの刃がグールの胴体を切断し、HPを削り切って消滅させた。
見れば、剣聖とマインも、俺とほぼ同時にグールを倒していた。
だが、その間に、最後に残った大物であるトロルゾンビが、手に持った巨大な棍棒を後衛組目掛けて振り下ろした。
「《ガード》!」
それをアイギスが、盾のアーツで真っ向から受け止める。
トロルゾンビは体格だけならアーマードベアに匹敵するモンスター。
ボスではないとはいえ、そのパワーは非常に高い。
その攻撃を受けて小揺るぎもしていないあたり、さすが『鉄壁』の二つ名で呼ばれるだけの事はある。
「《リフレクター》!」
そして、アイギスは更なるアーツでトロルゾンビの体勢を崩した。
《リフレクター》は、受けた衝撃をそのまま相手に返すアーツ。
モンスター相手ならともかく、プレイヤー相手には、タイミングを見計らうのが難しい技だ。
だが、今の相手はAIの性能が低く、動きが単純なアンデット系モンスター。
アーツは問題なく発動し、トロルゾンビの巨体が大きくのけ反った。
「今だ!!」
剣聖の掛け声に合わせて、全員が攻撃を集中させる。
何発もの斬撃が、魔法が、矢がトロルゾンビに突き刺さり、速攻でHPを削り切られたトロルゾンビは光の粒子となって消滅した。
戦闘が終わった後、俺は剣聖達に話しかける。
「さすがだな。あの数相手でも全く危なげがない」
「いや、それはお互い様だよ。君も相当強い」
「ほんと、普通にユリウス並みじゃない? なんで、こんなに強いのに無名なんだろうね?」
「ああ、それは私も気になりますね」
「同感だな」
なにやら、俺の事情に興味を持たれたらしい。
俺は無名ではなく『死神』の二つ名が広まっているが、それを知られるのはまずい。
ここは適当に煙に巻くか。
「俺は、表立っては活動していないからな」
「ふ~ん。変なの」
「まあ、そういう方もいるでしょう。他人のプレイスタイルにとやかく言うつもりはありませんよ」
「そうだな。あまり詮索するものではない」
「はーい……」
「あ、あはは……」
マインが引きつった顔で笑っていた。
その顔やめろ。
別に嘘は言っていないだろうが。
その後も順調にモンスターを倒し、宝箱を見つけ、階層を進んだ。
ゲストという事で控えめに参加している俺ですら、大分イベントリが潤ってきた。
そのタイミングで、剣聖が話し始める。
「さて、それなりにモンスターも倒したし、アイテムも手に入れた。そろそろボスに挑もうかと思うんだけど、どうかな?」
その問いに、他のメンバー達が答えた。
「良いと思います。既に1日の成果としては充分稼ぎましたし、あまり消耗する前にボスと戦うのが一番でしょう」
「私も問題ない。ポーションも節約できているし、ジャンヌの回復魔法もある。壁役としての役目は充分果たせるだろう」
「あたしも賛成~! そろそろこのダンジョンも飽きてきたところだしね!」
「私も大丈夫です! まだまだ動けます!」
元気な連中だな。
まあ、この程度で音を上げるような奴らではないか。
「キョウ。君はどうかな?」
そして、剣聖が俺にも問いかけてきた。
「ああ。俺も問題ない。大分慣れてきたところだ」
剣の扱いについても、このパーティーでの動き方についてもな。
「そうか。───じゃあ、行こう」
そうして俺達は、ボスモンスターのいるダンジョンの最下層へと歩を進めて行った。




