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プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作者: 虎馬チキン


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15/36

15 ラストスパート

 血気に逸った奴の首を飛ばし、まずは一人斬り捨てる。

 片腕とはいえ、プレイヤーを一撃で即死させるだけの攻撃力はまだ残っている。


 そして、斬った後、すぐにバックステップで後ろに下がった。

 直後、さっきまでいた場所に大量の矢と魔法が炸裂する。


「チッ! 外れた!」

「クソッ!」

「やっぱ速ぇな……」

「おい!! 俺らも巻き込まれるところだったぞ!!」

「俺なんか普通に当たったぞ!!」

「気をつけて撃てや!!」

「知るかボケェ!!」

「何だとコラァ!!」


 口汚く罵り合いながら、それでも仲間割れまでは起こさずに俺を狙って来る雑魚軍団。

 多対一という状況は初日の大虐殺にも似ているが、あの時とは根本的なところが違う。

 初日の連中は他のプレイヤーに攻撃を当てるのを嫌がって動きが鈍ったが、今はバトルロイヤルの最中。

 徒党を組んだとはいえ、あいつらは元々敵同士。

 巻き込んで攻撃する事に、欠片の躊躇もない。

 それで味方を殺ってしまっても、むしろポイントが増えるのだから。


 巻き込まれる側である前衛は多少動きが鈍ったが、もう残り時間も少なく、今さら死を恐れる必要はない。

 ぶつくさと文句を言いながらも、俺に突撃してきた。


 こんな混沌とした軍団の中へ突っ込んだら、確実に死ぬ。

 故に、バックステップで後ろへ後ろへと下がりながら、さっきの奴みたいに血気に逸って突出してきた奴だけを狩る。

 遠距離攻撃は普通に避けるか、敵と障害物を壁にして防ぐ。

 俺のHPは風前の灯火。

 《HP自動回復》が多少は仕事をしてくれているが、それもないよりはマシという程度。

 一撃でも食らったら終わりだ。

 だからこそ、今は死なない事を最優先とする。


《残り時間4分です》


「ユリウスの仇!! 食らいなさい!! 《シャインストリーム》!!」


 音声アナウンスが流れると同時に、ここで聖女が俺を狙って来た。

 光の範囲攻撃魔法が、周りの雑魚軍団を呑み込みながら俺に迫る。

 危ないが、ちょうど良い目眩ましだ。

 これは使える。

 俺は後ろを向いて全速力で走り、魔法を避けると同時に、雑魚軍団から距離を取った。


「もう一発……」

「あなたの相手は私よ」

「うっ!?」


 俺に追撃をしようとしていた聖女に、サクラが斬りかかった。

 向こうは放置してよさそうだな。

 欲を言えばあいつらも倒してポイントを奪いたいが、今のHPでは危険すぎる。

 女の戦いには手を出さないのが懸命だ。


 そのまま裏路地に入って《隠密》で気配を消し、雑魚軍団を撒く。


「どこ行きやがった!?」

「逃げ足の速い奴だぜ!」

「でもよ、これって死神を敗走させたって事で、俺らの勝ちじゃね?」

「確かに!」

「確かに、じゃねぇよバカ共!! お前らは死神を見失うって事がどういう事かわかってねぇ!! いいか! 死神ってのはなぁ……ギャアアアア!!!」


 死神は、気づいた時には後ろにいるものだ。

 呑気に話していた雑魚軍団の一部を路地裏から奇襲した。

 突然の不意討ちに対応できなかった5人ほどを一瞬で仕留め、再び路地裏に姿を隠す。


「チィッ!! ゲリラ戦になったか!!」

「死神の得意分野じゃねぇか!! ど、どうするんだ!?」

「落ち着け!! とにかく探せ!! 探すんだ!!」

「なるべく一塊になって動けよ! 単独じゃ良い的だぞ!!」


 《気配感知》のおかげで、雑魚軍団がそこそこ統率のとれた動きをしているのがわかった。

 これでは迂闊に飛び出せないな。

 路地裏に潜みながら、少しでもHPが回復するのを待つ。

 できれば腰の回復ポーションに手を伸ばしたいが、今は一本しかない腕がそれで塞がれてしまうのは危険だ。

 ポーションを飲んでいる時に襲撃されるなんて事になったら、目も当てられない。


《残り時間3分です》


 そして、時間は過ぎていく。

 このままタイムアップでも俺はかまわないのだが、どうやら、そうもいかないらしい。


「フハハハハハ!! 困っているようだな死神よ!!」


 建物の屋根の上に立った、それなりに豪華なマントを身につけた男が話しかけて来る。

 見るまでもなく誰だかわかる。

 

「仲間のよしみだ。ギルドマスターとして、せめて私の手で葬ってやろ……」


 一人で語るカタストロフに攻撃を仕掛けた。

 武器の届かない距離、魔法の間合いにいるカタストロフを狙うには、遠距離攻撃を使わなければならない。

 ナイフを投げようにも、右腕は斬り落とされ、左腕はデスサイズを持って塞がっているから不可能。

 《鎌鼬》は予備動作が大きい。

 故に、俺は現在使える最速の遠距離攻撃を使った。


 《投擲》のスキルを使って、カタストロフ目掛けてデスサイズ(・・・・・)を投げつけた。


 回転しながら飛翔する曲刃が、カタストロフを真っ二つに切り裂いた。


「は?」


 間抜けな声を上げながら、崩れ落ちるカタストロフ。

 

「まさか、この私が……!! こんな、あっさりと……!!」


 油断して話しかけて来るのが悪い。

 そうして我らがギルドマスターは、実にあっさりと光の粒子となって消滅した。

 

「いたぞ!! あそこだ!!」

「チッ……」


 だが、代償として、宙を舞うデスサイズを見た連中に居場所がバレてしまった。

 しかも、デスサイズまで手放した。

 持ち主から一定以上の距離が離れたアイテムは、自動でイベントリに戻って来るが、今はメニューを操作している暇もない。

 

 腰のナイフを引き抜き、四方八方から迫って来る雑魚軍団に応戦する。

 戦闘回避を優先して、ひたすら走る。


「逃がさない! 《ウォーターランス》!!」

「《アースランサー》!!」

「《速射》!!」

「《剛射!!》」

 

 後ろから放たれる矢と魔法を《危険感知》に任せて察知し、回避する。

 狭い路地裏では横には避けられない。

 建物の間の壁を蹴ってジャンプし、森林エリアの時のように立体的な動きで避ける。


「化け物かよ!?」

「動きが人間やめてるな……」

「リアルチート野郎が!!」


 後ろの集団は速度の差で撒ける。

 問題は《気配感知》が捉えた、正面の曲がり角から近づいて来る集団。

 対処にもたつけば挟み撃ちに合うだろう。


 速攻でカタを付ける。


「見つけた!」

「今度こそ!!」

「殺ってやらぁ!!」

 

 現れたのは3人。

 即座に左足を軸にして右側へと飛ぶ。

 壁に張り付きながらナイフを投擲し、一人目の喉に命中させる。

 

「なにッ!?」


 まずは、一人。

 間髪入れずに壁を蹴って距離を詰め、光の粒子になる直前の一人目に刺さったナイフを回収。

 迎撃に振られた剣を屈んでかわし、逆手で持ったナイフでこれまた喉笛をかき斬る。

 残り一人。


「このォッ!!」


 籠手をつけた拳で殴りかかろうとして来る最後の一人。

 俺はナイフから手を離し、格闘家と思われる女のパンチを、腕に掌を添えて軌道を剃らす事で、いなした。


「嘘……ッ!?」


 そして そのまま手を伸ばし、女の首を掴んで締め上げる。

 さらに腕に力を籠めて、その首をへし折った。

 このゲームには痛みも苦痛もないが、現実ならさぞや苦しい死に方だろうな。

 

《残り時間2分です》


 仕留めた3人組が光の粒子になって消滅する。

 それを見届ける事なく、俺は再び走り出す。

 手放したナイフを回収する時間も惜しい。

 腰からまた新しいナイフを引き抜く。


 そのまま走り続け、雑魚軍団が絶賛探索している路地裏を抜け、大通りに出た。

 しかし、そこで想定外の奴に遭遇してしまった。


「あーーー!!! ここで会ったが百年目だよ!! さっきはよくも!!」


 ……ここでまた(・・)お前と会うとはな。

 つくづく奇遇なものだ。


「マイン……!」


《残り時間1分です》


 残り1分。

 おそらく、これがラストバトルになるだろう。

 その相手が、さっき斬り殺した実の妹というのも因果なものだな。


「手加減はしないぞ」

「上等だよ!! そっちこそボロボロだけど、私も手加減しないからね!」

「ふっ……それで良い」


 そうでなくては、おもしろくない。

 さあ、一緒にゲームを楽しもうじゃないか、妹よ。



 そうして、このイベントの最後を飾る戦いが始まった。  

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