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召喚術士の冒険記  作者: 壬生方 社箱
第四章 魔界篇
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第五十五話

今日は俺が魔王になる式典をやる日だ。

あれから7日経ったことになる。


この7日に起こった出来事と言えば、ソニアが訪問してきて、レティシアとは古い付き合いで友達みたいなものだとか、レティシアはいわゆるヴァンパイアで友達がいないとか、そんな話をしていった。

その次の日には、レティシアとソニアがやってきて俺の料理を食いたいと言ってきた。

二人は大満足で帰っていったが、初めは殺すだなんだ言ってたくせにギャップが半端ない。

アリサにも言われたが、油断はしないように、取り込まれないようにしないとな。


金をレティが人間世界の金貨と魔界の貨幣を交換してくれた。金貨2000枚のうち、500枚を交換した。

あとは魔界にある狩猟ギルドで自分で稼げとのことだ。ソニアいわく、狩猟ギルドは人間世界で言う冒険者ギルドそのまんまらしい。

だが、まだレベルあげには行ってない。




朝、支度を終えてから、ユリアの転移でレティの社長室の入り口に転移した。

ドアをノックすると、


「入るのじゃ」

「で、来たけどどうすればいいんだ?」

「正午にこの城の2階のバルコニーから、演説を行う。そこでお主の顔見せをするのじゃ」

「・・・俺は何もしなくて良いのか?」

「まずは着替えてもらおう」


パンパン


レティが手を叩くと、家まで案内してくれた鬼娘が入ってきた。俺を着替え部屋に連れていくと言うので、ついていって着替えだが、、、、、


「これはないだろう、、、、、」

「よく似合ってるのじゃ」

「ぷはっ!魔王よ!魔王だわ!あははははははは」

「アリサ、てめえ、、、、、」


置いてあった着替えは、真っ黒な革靴に、真っ黒なタキシードに真っ黒なカッターシャツ、襟がバカに長く立っている裏地は真紅な真っ黒なマントだ。

魔王って言うよりドラキュラ伯爵って感じしかしないが。


「顔は幼いが貫禄が出たのじゃ」

「・・・趣味悪いな」

「余がお主に振るので、一言だけでも挨拶が欲しいのじゃ」

「・・・・・・なんだ?俺が魔王だ、滅べ人間よ、ブハハハハハハとか言えば良いのか?」

「それがお主の望みならの」



・・・・・・・・・



昼になり、2階のバルコニーに着くと近衛兵とソニア、ジーンがずらりと並ぶ。

アリサたちもその列に並んだ。

下には見渡す限り魔族がいる。下だけじゃない、向かいのビルにも、建物の屋根の上にもたくさんの魔族がこっちに注目している。一万人はいるんじゃないか?


レティがバルコニーの先端に立つと、耳を塞ぎたくなるほどの歓声が沸き上がる。


「聞け、魔界に住むものたちよ!古から伝わる終焉の使者がやっと現れた!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」


レティが右手を掲げると歓声が静まる。


「遥か昔から我々魔族と人間は、血で血を洗う戦いを繰り広げてきた!だが、勇者グリンダムにより、正しい歴史を!真の悪は誰なのかを教えられた!それからは皆が知っている通り、人間を仇とせずに、不可侵の精神で我々は生きてきた。だが!我慢の歴史も今終わる!終焉の使者は、我々魔族の元に降りたったのだ!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」


「我々のご先祖の無念を!この世界の真の悪を討ち滅ぼす力が!我々魔族の元に集ったのだ!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」


「そしてここに紹介しよう!古きしきたりに従い、魔王として降臨する、魔王タカフミだ!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」


俺はソニアに連れられて、レティシアの隣に立たされる。


「あとは任せたのじゃ、魔王」


レティシアは俺を置いて、後ろに下がる。

辺りは俺の発言を待つように、静まり返る。

くそが、いいよ。俺も腹を決めた。


「あー、俺がタカフミだ」


集まった魔族たちは、誰も一言も発しない。


「俺は異邦人だ、人間の世界じゃ勇者とか呼ぶやつもいた」


魔族たちはざわざわしだす。


「だが俺は神に召喚されたんじゃねえ。龍神に召喚されたんだ」


ざわつきが更に大きくなる。


「龍神王は言った。もとはみんな悪いところがあり、誰もが被害者だった。俺は人間だけが悪いとは思わない、もちろん魔族だけが悪いとも思わない」


「お前はどっちの味方なんだ!!!」


下の群衆の中から誰かがそう言った。


「どっちの味方でもねーよ」


群衆のざわつきは更に大きくなる。


「ただ、一人の怨みが世界に哀しみをはびこらせているのは許せるものじゃねー。そいつも実は被害者なんだけどな」


群衆のざわつきは消えてなくなった。


「それでも、てめえが気に入らねーからと他人にも強要するのはガキのやることだ。ガキには大人が教えてやらねーとな」


「俺は誰もが世界を自由に往き来出来るような平和を作りたい。もちろん簡単じゃねえ。でもそれを、みえないとこから邪魔をするようなガキにお尻ペンペンするために、俺はここにやって来た。まだ魔王になる覚悟とかねーんだけど、みんなが力を貸してくれると嬉しい」


パチパチパチとまばらな拍手が聞こえる。


「だけど、なんの因果か、形だけでもここに立っちまったからには、俺はお前らを仲間と思う。俺が言えるのは一つだけだ。仲間は絶対に裏切らない。俺は魔界を守る!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」


「そして、神をぶっ潰す!」


「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」




・・・・・・・・・




「どうなるかと思ったのじゃが、なんとかなったの」

「はぁ、、、、、魔王になると言っちまったよ、、、、」


俺たちは演説が終わると、レティシアの社長室に戻った。


「意外と主様も流されやすいのね」

「かなり流されやすいわよ、なんたって、状況次第では獣とも男とも出来るんだから」


ユリアの一言にアリサが付け加えた。

俺がアリサを睨み付けると、アリサは、お~怖っ!と言って視線を反らした。

くそが、俺はお前を懲らしめる計画を、この7日間で立ててるからな!今に見てろよ!


「レティシ、、、、、、レティ、この服はどうすればいい?」

「お主へプレゼントなのじゃ、それを着て過ごすがよい」

「アホか、てめえは!これから魔物退治に行くんだぞ!、、、、、まあいい。しまっとくよ」

「これからはソニアを護衛につける、ソニア、よいな?」

「もちろんだ」

「いや、いらねーから」


ソニアは目を見開き、あからさまな落胆の表情をする。


「何故じゃ」

「いつまでも強いやつに守られてたんじゃ修行にならねーよ。それに俺はいつでも、てめえのけつはてめえで拭いてきた。力が必要ならこっちから頼むから、それまではいらねーから」

「まさかと思うが、この城「住まねーよ」」


こんなエレベーターもない面倒くせえ城やってられるか。今の家くらいがちょうどいいよ。


「わかったのじゃ、しばらくは自由に過ごすとよい。」

「寂しくなったらうちに来いよ、飯ぐらい食わせてやるよ」




・・・・・・




狩猟ギルドは登録が必要らしいので、今日は登録だけしておこうと思い、街を練り歩く。

周りからは、顔まで見えなかったのか、誰にも魔王とか呼ばれない。だがめっちゃ見られてる。そりゃそうか、魔族しかいないところに、人間、ダークエルフ、獣人が歩いてるんだからな。

すると、人間の子供と区別がつかない幼女が、俺たちに向かってトコトコ歩いてきた。


「ねえ、おじちゃん、魔王様?」


幼女に問いかけられる。


「・・・おじちゃんじゃないがな。お兄ちゃんだ」

「お兄ちゃん魔王様なんでしょ?」

「そうだ」


周りから歓声が巻き起こる。

一瞬で俺たちは住民に囲まれた。ペタペタさわってくるやつ、握手を求めるやつ、サインしてくれと言うやつ色々だ。芸能人かっ!


「待て待て、皆のもの。魔王様が困っておる。魔王様、本日はどのようなご用件で?」

「いや、狩猟ギルドに行こうかと」

「かしこまりました。ご案内させましょう」

「いや、自分たちで行くよ。俺もこの街の住民になるんだ、慣れないとな」


回りからは、庶民的だとか、お優しいだとか色々聞こえてくる。

ついでに周りの住民を適当に鑑定してみる。

どいつも平均して、ナタリーの半分くらいだ。


「えーと、」

「ジギルでございます」

「お前たちの強さは、どのくらいなんだ?」

「我々は戦う力が少ない界民でございます」

「ならお前らが平均か?」

「左様かと」




きちんと話を聞いてみると、大体平均、界民はステータス500前後、兵士で1000前後、隊長格で2000前後らしい。

ただの市民がランスロットの2倍だ、そりゃ人間じゃかなわないわけだ。


俺たちは界民の手厚い歓迎の声を受けながら、狩猟ギルドまでやって来た。敵対されるよりましだが、これはこれで疲れるな。


狩猟ギルドに入ると、まるで冒険者ギルドだ。カウンターがあり、受付にはボインのねーちゃんが五人いる。壁には依頼らしき物が貼ってあるが読めない。だがアリサたちは読めるようなので、魔族専用語ではないらしい。まあ言葉も通じたしおかしくはない。


「おい、お前、こっちにこい」


受付のボインちゃんではなく、普通のおっさんなのに羊のような丸い角を2本生やしたギルド員らしきやつに呼ばれた。

これ魔族か?羊のような獣人じゃないのか?


「早く来い、俺は魔王でも特別扱いしないぞ」


まるで怒ってるような表情をしたおっさんは、再度俺たちを呼ぶ。普通ならカチンと来たかもしれんが、魔王と知ってやってると思うと何故か好感が持てる。俺はおっさんのところに歩いて行った。


「まあ、わかると思うが登録がしたい。明日からは狩りでもしようと思ってな」

「ここは人間がやれるような魔物じゃねえ。死ぬぞ?」

「そこそこはやれる自信はあるし、界民はやれてるんだろ?なら大丈夫だ」

「ふん、無理するなよ」


なんだこのおっさん、ツン「おっさんツンデレね」


やはり日本人は思うことが同じらしい。


「ツン?なんだそれは」

「いや、良いんだ。どうやって登録すればいい?」

「難しいことはない。この紙にそれぞれ書いてくれ」


おっさんは台紙についた紙と鉛筆を、5セットだした。

俺は書けないのでアリサが代わりに書く。

内容は、名前と職業、年齢だ。

嫌な予感がする。


「・・・・・・本気か?」

「何がだ」

「お前とその女の職業だ」

「残念ながら本気だ」

「そうか、、、、、苦労してるんだな」


なんだろう、笑われるのもムカつくが同情されると、モヤモヤした気分になる。


「なんでしょう、このパターンは初めてですね」

「釈然としないわ。笑われた方がましね」

「ぶっちゃけ反応に困るな、、、、」


同情したおっさんから、依頼は狩った後からでもかまわないとの話と、手始めに行くといい場所を聞いてから、おっさんに出されたギルドカードを手にして、俺たちはギルドを後にした。


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