第五十三話
6月2,3日は更新が出来ません。
よろしくお願いいたします
「すごーい、見てみてー」
俺たちは熱船からの眺めを楽しんでいる。
魔界は意外と広い。大陸を亀裂で切ったと聞いていたから狭いのかと思ったが、空から見た限りでは、かなり広い。何せ北側の海は見えないくらいだ。
熱船はまんま飛行船だったが、大きさが半端ない。普通は船部分は大した大きさじゃないものだが、この熱船は船部分の大きさが50m近くある。
それよりビックリしたのは熱船の浮力の作り方だ。
俺は熱船と言う名前と燃料を使うと言う言葉から、当然気球のシステムを想像していた。だが、実際見てみると、なんと燃料を使い、エンジンを回し、水を電極分解して水素を発生させているのだ。俺もくわしくはないんだが、ここまで出来るなら電力があっていいはずだ。電極分解してる時点で電気だしな。
これは魔界の科学力に大きな期待が出来る。
なら推力はプロペラをエンジンで回してるかと思えば、推力は魔石を使い、風を起こして推力にしている。はじめてのエスカードの時から思ってることだが、本当にこの世界は文明がちぐはぐだ。
「・・・・・・なあ、エンジン積んでるなら、なんでエンジンでそのままプロペラを回さないんだよ?」
「・・・・・・今なんと?」
ソニアに話しかけたつもりが、迎えに来た兵の中にいた羊さんみたいなやつが食いついてきた。
そいつはまるで羊が人間になったような、頭と顔は羊なのに体は人間ってタイプの魔族だ。
「だから、エンジンの動力部分にベルトでもなんでも巻き付けて、こう、羽を回転させれば風が産み出せるだろ。そのほうが簡単「アナタは天才か!!!!!」」
っ!いきなり大声を出されてビクッとしてしまった。
俺から言わせればここまで出来てて、プロペラもないなんて、バカが?と思うが、、、、、
羊男は何かぶつぶつ言い出した。あーじゃない、こうじゃないと。
「魔王様、何を言ったんだ?」
「いやな、ソニア。なんか文明が進んでるようにも見えるし、そうでないようにも見えるのが不思議でな。その話をしたら、羊くんが食いついてきただけだ」
「魔王様のふるさとは魔界よりも進んでるのか?」
「進んでるわね、・・・エンジンがあるんだし、そうね、私たちの故郷より2,300年遅れてるって感じかしら?」
アリサが入ってきた。
「・・・アリサも異邦人なのか?」
「いや、アリサは一度死んで生まれ変わったらここだったってやつだな。転生か?」
「そうなのか、どうりで、、、、、」
「何がどうりで?」
「いや、魔王様が特別に心を許しているなと思っていた」
アリサは一気に顔を赤らめて
「ばっ、バカ言うんじゃないわよ!ふんっ!」
そこまで照れんでもいいだろ。実際同じ日本人なんだから、気も許すさ。
「ご主人様、あれが街でしょうか?」
「おおおお?これは、、、、」
港から三時間ぐらいだろうか、下に街が見えてきた。街の一番の特徴は、建物が高いのだ。2階だては当たり前で、ビルのように真っ直ぐ上に延びてる建物がかなりある。それでも10階はいってないくらいだが。
だが高度な文明を連想させるだけの眺めはある。
街の奥のひときわデカイビルの後ろ側に熱船は停泊する。水素を抜くことで高度を下げているようだ。
「・・・城じゃねーのか?」
「コレが城だ」
「どう見ても俺には官庁にしか見えないんだが、、、、」
「東○都庁ね」
ソニアが城と言い張る建物はそんな見た目だった。20階だてぐらいか?
だが、さすがに20階だと真っ直ぐ上には伸ばせなかったのか、一階が一番広く、上の階にいくにつれ、狭まっている作りだ。
一階に入ると、ロビーのような大広間があり、その奥には一つのカウンターがある。そこには人間にしか見えない女が立っている。だが背中には小さな羽が生えてる、またサキュバスか。
「ようこそお越しくださいました。本日魔王様との面会のアポイントメントはお取りですか?」
「受付じゃねーか!ソニアいい加減にしろ、わかってやってるだろ!」
「魔王様、どうしたのだ?何が気に触る?」
「もういいわ、タカフミ、、、、、多分突っ込んでたらキリないわよ」
「だな、、、、、」
「アポイントメントは取ってない。現魔王様に取り次ぎをお願いしたい」
「でしたら右手奥の階段をお使いください」
「・・・・・・ザルじゃねーか、、、、何のための受付だよ、、、、」
「アポイントメントの意味知ってるのかしら、、、、」
俺たち一行は右奥の階段を登り始めた。
「はあ、はあ、まさか最上階までか?」
「そうだ」
「え、エレベーターつけなさいよ、、、、はあ、はあ」
階数を数えたら最上階は21階だった。
すると、ジーンがいきなり隣に現れる。
「・・・マーくん、未だこんなとこにいたの~?」
「「・・・・・・」」
俺とアリサは顔を見合わす。
「ソニア、何故転移で来なかった?」
俺はソニアを射殺すほどの目付きで睨んだ。
「わ、妾は、魔界を知ってもらおうと!」
「タカフミ、突っ込んだら負けよ」
「・・・・・・釈然としないが、そう思うことにする」
ジーンが最上階のドアの前に立っている門番に、事情を説明する。
その間にソニアは、何故魔王様はアリサの言うことは素直に聞くのだ?とか質問してる。
聞いてるんじゃねーよ、感想が同じなだけだ。
ジーンの説明が終わり、観音開きの大きな扉が開く。
すると、だだっ広い室内に、まるで社長室に置いてあるような机と、後ろ向きに座ってるであろう椅子の背もたれの裏側が見えた。
社長室の机の向こう側は1面窓ガラスになっていて、魔界が良く見える。
ツッコミたい、ツッコミたいが、
「ダメよ、タカフミ。敵はそれを待ってるわ」
「・・・わかってる」
あえて誰も一言も口を開かずに、ジーン、ソニア、俺たち五人が横一列に並んで立つ。
5分は経過しただろうか、現魔王と思われるやつがしびれを切らした。
背を向けていた社長椅子は、180度回転してこちらを向く。
「良く来たな、余が魔王じゃ」
「二段構えかよ!」
思わず突っ込んでしまった。
現魔王は、椅子の背もたれに向き合う形でも座っていた。要は椅子が回転しても、見えたのは後頭部なのだ。しかも頭がギリギリ見えるくらいの背しかない。声も女だった。
すると、現魔王はすくっと椅子に立ち上がり、机の上に仁王立ちで立って見せた。チビだ、120cmあるかないかだぞ?
「ぬあっはっはっは!どうだ!驚いたか?!」
「あの体制でずっと待ってたかと思うと、不憫でならねーよ、、、、、」
現魔王は、身長は120前後、腰まで伸ばした長いブロンドの髪をしている。顔はまるで外国の人形のように眼が大きく、胸は全くって言っていいほど膨らみがない。服は赤と黒を基調にした、膝たけのドレスを着ている。
「魔王よ」
ソニアが口火を切る。
「戻ったかソニア。して、そやつが?」
「うむ、こちらが終焉の使者だ」
「イマイチパッとしないのう。もっとイケメンだと良かったのじゃが」
「・・・クソガキが、、、、」
やりたい放題、言いたい放題かよ。
「して、全てお主の女か?」
全員が俺を見る。細かく説明するのも面倒くせえ。
「ああ、そうだ」
「狼もサキュバスにも手を出したか。顔に合わず手が早いのう。これは余も気をつけねば、、、、」
魔王は体をくねり、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
「てめえガキじゃねえか!」
「ふむ、ソニアとジーンを否定せんのか、なかなかやり手のようじゃの」
「こいつらは違う!」
「知っとるわ」
魔王はまた大口を開けて、ぬあっはっはっはと仁王立ちで笑った。
なんなんだこいつは、本当に魔王か?もっと魔王って言ったら威厳があるんじゃないのか?
魔王はいきなり表情を真面目にして、俺に向けて手をかざした
「なるほど、化け物じゃの」
はあ?どうせてめえのほうが化け物なんだろ?、、、、、ほら鑑定出来ない。
「てめえのが強えーじゃねーか」
「素質じゃ。お主はとんでもない者に成長するの」
「・・・・・・そんなことがわかるのか?」
「魔力と言う物は、レベルが上がれば上限なく上がるというものではない。己のもつ器から引き出すのじゃ。そこのエルフが良い例じゃろ、種族として魔力が多い傾向じゃのに一向にのびんじゃろ」
確かにそれは、俺も疑問に思った。なるほど、そういうのもあるのか。
だがそんなことより、
「で、俺をどうしたいんだ?」
「それは余の質問なのじゃ。お主はどうしたい?魔王になりたいのか?」
「なわけねーだろ。これ以上役割を増やすな、俺はスローライフがしたいんだよ」
「まあの、そこまで弱ければ魔王にもなれぬし、神と戦うなどもってのほかだの」
わかっちゃいるが、面と向かって弱いと言われると腹が立つな。
「ならてめえがやれよ。俺にとっちゃ神も魔王もどうでもいい」
「魔王様!」
ソニアは大きな声で俺を諌めてきた。
「そうだろソニア、別に誰がやっても良いんじゃないか?」
魔王は真顔で、
「・・・・・・そう言っとるがソニア、どうするのじゃ?」
「魔王様、、、、タカフミ様は王の器をお持ちだ」
「お主、タカフミと言うのじゃな。ソニアの使命を知っとるのか?」
「・・・ここに終焉の使者を連れてくることだろ?」
「違う。魔王足り得る終焉の使者ならば魔界に連れてこい、もし魔王足り得ないなら殺せと命じておる」
俺たちは全員ソニアを見た。
聞いてねーぞそんな話。ソニア、嘘ついたんだな。一度連れてくれば任務は完了とか言ったくせに。
「」
「待ってタカフミ、よく考えて」
俺が文句を言おうとして、口を開きかけた時にアリサに止められた。
考え、、、、、、、、、そうか、ソニアは俺たちより破格に強いはず。鑑定出来ないからくわしくはわからないが、さっきの兵士で2倍以上だ、当然それ以上になる。
俺たちを殺そうと思えば殺せた。だがしなかった。それはソニアは魔王足り得ると考えたってことか。
そして、現魔王のチビは俺を化け物と呼んだ。力は将来的には足り得ると。なら魔王足り得ないのは性格?やる気?
「まず聞かせろ。何故殺す?」
「次の終焉の使者を呼ぶためじゃ、終焉の使者は一人しか存在せぬ」
なら、現魔王が俺にやる気がないなら、殺すって言われてるのも同じだ。
理不尽だ、やらないなら死ねと?
それに魔王の鍵を回収って意味もあるんだろう。
「神を倒すなら魔王にならなくてもいいだろ?」
「無理じゃの」
「なんでだよ」
「余から鍵を取り出せば余は死ぬ」
「・・・・・・待て、鍵は水晶の形態じゃないとダメなのか?持ってるやつが集まるだけじゃダメなのか?」
「わからぬ。じゃが普通に考えたらそうじゃろう」
やっぱりここをはっきりさせないと方針が決まらねえ。
大体、鍵を取り出さなきゃダメってんなら、俺はナタリーからは取り出せない。
・・・・・・これはこれしかないな。
「俺たちを魔界に住ませろ」
「魔王様」
ソニアは嬉しそうにこちらを見た。違う、ソニア。
俺の考えは、どうなるにしてもまずはソニアや現魔王に勝てる力がなかったら身を守れない。神に挑むのでもそうだ。
逃げるのも不可能だろう。鍵を体内に持つものは居場所がわかるとソニアは言っていたしな。
なら、正面から戦えないと自分のやりたいようにも出来ない。
俺は、俺たちはここで力をつけないわけにはいかないんだ。
「ふむ、魔界に住んでどうする?」
「修行をする。神に勝つために」
「なら、魔王になるのじゃな?」
「魔王はお前に任せる。俺は修行が忙しい。よく考えろ、今日来たばかりの俺がいきなり魔王っておかしいだろ。まず力をつけて、そんで魔王になれるかを見極めたらいいんじゃないか?」
「強くなられてから魔王にならないと言われたほうが困る。押さえつけれんからの」
「確かにそうだ、だが、だからって殺すのか?次の終焉の使者が来るのがいつかわからないのを待つのか?修行したって1日で強くなるわけじゃねーだろ。その間にお前らも俺たちを見極めたらいいだろ」
魔王は考えこんだ。
「ギリギリかの。余が望んだ答えではないのじゃが、合格としよう」
・・・野郎、、、、、テストだったのか?気概を見るためってか?
てめえ、いつかぶっ飛ばす。
「ただし、条件があるのじゃ」
「なんだ?」
「お主は今日から魔王なのじゃ。余は丞相となり国を動かす」
「理由は?」
「神輿じゃ」
「・・・・・・鍵を2つ持ったものが現れて、そいつが生きてるのに魔王にならないのはおかしいと?」
「そういうことじゃ」
「お前らの都合じゃねーか」
「郷に入っては郷に従えじゃ、それとも今死ぬか?」
くそが、選択肢がねーじゃねーか。
「本当に実務は何もしなくて良いんだな?」
「いい。とりあえずの期限は1年じゃ。1年である程度の成果を見せよ」
「わかった」
「ソニア、ジーン、皆を集めよ!これから緊急魔界議員会を開催する!」




