第四十三話
翌朝、飯を食ってから、
「ヴィーブル、もう行こうと思う。行けるか?」
『はい、すぐにでも』
「ちょっと待ってよ、まだ朝よ?約束は昼よね?早くない?」
アリサが疑問をぶつけてきたが、俺は先にどうしてもつきたい。
「正直、ここにいても何にもならねーんだよ、どうせ来栖の出方次第なんだから打ち合わせすることもない。なら現地で待ってたほうが有利だ。いきなり後ろから襲われる心配もする必要なくなる」
「たしかにそうですね。早めに到着していたほうが得策でしょう」
「・・・・そうね、さすが終焉のハードボイルドね」
「・・・・・アリサ、もう一度それをネタにしたら、穴という穴を俺についてきたことを後悔するまで犯してやるぞ」
するとサリイが勢いよく、ガタッと立ち上がった。
サリイは元気よく右手を挙げて、
「終焉のハードボイルドっ!」
「やめろサリイ、そういうことじゃねーんだよ、、、、、、」
「アンタの意思もグダグダじゃない。ちゃんと犯しなさいよ」
「ご主人様、リラックスもよろしいのですが、早く行って対策しましょう」
「お、おう、、、すまん。ヴィーブル、頼む」
『かしこまりました』
俺たちはフル装備を身につけ集合すると、ヴィーブルはまた予告もなくいきなり転移した。
ダンジョンの入り口50m先ぐらいに着くと、ヴィーブルはすぐに姿を消した。
ダンジョンの入り口には今日もテントが数軒あり、冒険者がダンジョンに潜ってるようだ。俺はそいつらのところまで歩き、話しかける。
「あー、すまないんだが、これから死ぬほど危ないことが起こるかもしれん、みんな今日は帰ってくれないか?」
「ああん?誰だおめえ」
「ふははは、俺たちぁ毎日死ぬ思いよ。てめえに言われるまでもねえよ」
「それともなにか?金を補填してくれんのか?」
数えたら5パーティいる。どうも全員がこれから潜るみたいだ。ほっとけば勝手に全員潜ったかもな、失敗した。
「いや、お前らが良いならいいんだけどよ、俺は、は、ハードボイルドってもんだが、ついこの間デブの女が暴れただろ?あんなのが来るかもしれねーんだよ」
「!!、お前ハードボイルド大魔導師か!」
「デブの女ってアレかよ、あの噂の、、、、」
「ああ、噂ってのはしらねーんだけど、デブの女が暴れて相当けが人がでたんじゃねーか?」
そいつらは徐々に顔面蒼白になった。
「・・・・またアレがくるのか、、、」
「ハードボイルドが言うんだ、間違いないだろう」
「でもよ、ハードボイルドは指名手配が掛かってねえか?信じていいのかよ」
おっと、指名手配まで掛かったか。
「ちなみに俺はどんな罪状で指名手配が?」
「エスカードで領主を再起不能にして、大手商会に怪しいものを高額で売りつけ、ザバイルではギルドマスターを死ぬ寸前に追い込み、Cランクの冒険者から金貨を巻き上げて逃げたんだろ?生死問わずで指名手配が掛かってる」
「だが、ハードボイルドは強いから、見つけたら手を出さずにエスカードで待機している勇者様にお知らせしろってかなりの範囲に通達が出てるぜ?」
「・・・・・・・・」
こりゃあ、きっと来栖の仕業か?なんとなくだがそんな気がする。
「ご主人様・・・・」
「ああ、わかってる」
ナタリーたちもそう感じたようだ。
「・・・・ならなんでお前らはそれを俺に教える?賞金もかかってるんじゃねーのか?」
すると、その中の1人が、
「ああ、もちろん懸かってるぜ?だけどよ、俺ぁエスカードの出身だ、お前だろ?スタンピードを防いだのは?」
「ああ、そうだが」
「俺のオヤジもお袋もエスカードに住んでるんだ、助かったよ。ありがとう」
その男はひげもじゃでいかつい顔をしていたが、90度腰を折って頭をさげた。
「あたしもだよ!あたしはその時エスカードにいたんだ!」
「俺もだ、俺は偵察隊の生き残りだ」
「私も治療院におりました」
「俺はザバイルだが、エスカードが落ちたら次はザバイルだった!」
「俺もだ!」
「俺も・・・」
「私も・・・」
「俺も・・・」
5パーティいるなかのほとんどがそんなことを言い出し、みんなお礼を言ってきた。
お前ら、、、、、、、
「やっぱり、旦那様は英雄なのよ。しゃっきりしなさいよね」
アリサが俺の背中を叩く。アリサ、、、、、
「今からその勇者がここに来る。そして多分戦闘になるだろう。多分ここにいたら巻き添えを食うから、今のうちに街まで避難して欲しい」
俺は胸を打たれたので、本当のことを言ってしまった。この雰囲気で嘘はつけねえ。
「勇者様と戦う?!、そりゃあ大変だ!」
「ハードボイルド、負けるなよ?!勇者なんかやっつけちゃえ!」
「おいおい、どこで勇者が聞いてるかわからねえぞ?」
「かまうもんですか!、私たちはハードボイルドの味方よ!」
「・・・・・・・」
「な、なぜだ、俺は勇者と戦うんだぞ?どう考えても悪役じゃねーか」
するとはじめに俺にお礼を言った男が、
「お前は誰が何と言おうとエスカードを救ったんだ。それに勇者様は勇者って言われてても、何もしてないぞ?自分の修行と、なんか使命があるからってそればっかりだ、誰かを助けたなんて聞いたことない」
「「「そうだそうだ」」」
「いや、俺だって偶然エスカードでスタンピードを防いだだけだが、、、、、、」
すると、人だがりの後ろからドワーフが、人を掻き分けて出てきた。
「ワシは、ギガントムテムのそこの村から、昨日来たもんじゃ。お前さん、長老からワイバーン討伐を受けただろ?アレはどうした?」
「もう倒した」
すると、おおおおおおお!!と周りから歓声が上がる。
あの誰も倒せなかったワイバーンを!とか友の仇をありがとう!とか叫ばれている。
「さすがだの、ほれ、お前さんは何もしてないなんてことはない。行く先々で人々を救ってるじゃないか」
ドワーフがそう言うと、また一段と歓声が上がる。
「すまん、疑うわけじゃないんだが、ワシは危険が来るならもう村に帰ろうと思う。もし証拠があるなら見せてもらうことは出来るか?」
「ああ、いいぞ」
俺はワイバーンが巨大なので、俺の背中側にワイバーンをアイテムボックスから出した。
すると、あたりはしーんと静まり返る。あ、アイテムボックスやばかったか。
数秒たつと、割れんばかりの大歓声が巻き起こる。歓声の中には賞賛と謝礼の言葉が混じっている。
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
俺もアリサたちも耳をふさぐ。
「確かに確認した。ワシが長老に伝えよう」
「じゃあ、頼むわ。それとみんなもう勇者が来るから、間に合わなくなる。みんな悪いが早くここから動いてくれ」
戦闘を見たいとか誰かが野次馬根性を出すかと思ったが、全員素直に帰ってくれた。
こんなことに巻き込まれて死んだら損だし、自分らの物資や馬なども、死んだらもったいないだろう、物分りが良くて助かる。
俺たち以外がいなくなると、ヴィーブルが姿を現した。
『終焉の使者様、私は常にそばにおります。転移が必要なら声をかけてください』
「助かるよ、ただ俺が何も言わなくても、やばいと思ったらヴィーブルの判断で頼む。それとその呼び方はやめろ、タカフミでいい」
『ではタカフミ様と。転移の件もかしこまりました』
「それとみんな、この位置で待つのはだめだ」
「どうしてですかっ!?ご主人様」
「それはな、サリイ。奴らは仲間に空間魔法使いがいるんだ。転移で後ろに現れていきなり攻撃されたら、馬鹿みたいだろ?」
「そうね、忘れてたわ。さすがね」
・・・・・・・・・・・・・
俺たちはダンジョンの入り口の右に100mはなれた所に待機した。山の斜面ががけになっているので、そのがけ下に背中をつけるように待機したのだ。
俺たちの移動が終了すると、来栖たちが転移でダンジョンの入り口前に現れた。
「勇者一行も早く着いたわね」
「だな」
俺たちは来栖たちに向かって歩き出す。
来栖は殺気を纏ってると思えるほど、鬼気迫る表情をしている。
来栖の後ろにはユリアとコニーがついている。コニーは表情が読めない、まあそれは元々だな。だが、ユリアの顔は俺たちを見ると、悲痛と悲しみに染めた。助けてと送ってきたのはユリアか。
「・・・・ヴィーブルも味方につけたんですね、先輩」
「仲間じゃねーよ。それよりなんでいきなりけんか腰なんだ?なんかあるのか?」
「しらばっくれるのはやめてくださいよ、持ってるんでしょ。魔王の鍵を」
「持ってる」
「それを渡してください」
「知らないのか?魔王の鍵は俺の胸に取り込まれてる。取り出すには殺すしかねーんだぞ?」
「すでに魔王に取り込まれてしまったのですね、残念です」
「あまり残念そうにみえねーんだが」
「ええ、こうなることは予想してました。先輩すいません、死んでいただきます」
「お前、勘違いしてるぞ、魔王なんていねーんだよ。別に鍵を集めて魔王の封印をとか、そういうのないんだよ。だから無理に鍵を集める必要はないんだよ」
「僕に殺されないための考えたいい訳がそれですか?少し弱いですね」
「・・・・・・そんなんじゃねーよ、お前どうしたんだ?誰かに騙されてないか?」
「僕は神から神託を受けてるんですよ?誰に騙されると言うんですか?」
「・・・・・神は日本人だぞ?」
「先輩、もう嘘はいいです。剣を抜いてください」
「嘘じゃねえ!お前は神に騙されてんだよ!元は神も日本人だ。話すとなげーんだが、神はこの世界をぶっ壊したんだよ!そんでそれに頭きたやつらが神に対抗しようとしたんだが、神は天界に逃げ込んだ!魔王の鍵なんて言われてるが、魔王は一切関係ねえ!これは天界に渡るために鍵だ!」
「なら何故魔王の鍵と?」
「・・・・・・わからねえ、多分だが作ったのが魔族だからか」
来栖は、さらに殺気を強くした。辺りの大気が震えるようだ。
「もう魔族にまで取り込まれましたか、もう先輩を救うことは出来ません」
「魔族も元は人間だ!!お前は勘違いしてる!神だけが悪人ってわけじゃねーが、今は神が悪人だ!お前こそもう神から離れろ!、、、、、、、、そうだ、俺と一緒に来い!俺がお前を導いてやるから!」
「話は終わりです、先輩。抜かないならコチラから行きますよ」
「待って、タクト!!」
ユリアが来栖の腕を掴む。
「タカフミの言ってることは筋が通ってるわ!、どっちが正しいかはわからないけど、タカフミについていって確認したらいいと思うの!」
「・・・・ユリア、君まで先輩に取り込まれたんだね?」
「!!!!!! どうしてそうなるのよ!ずっと一緒にいたじゃない!」
「ならなんで僕じゃなくて先輩のカタをもつんだい?」
「それは、、、、、、タクトに戦って欲しくないからよ!」
「今までだって色んな敵と戦ってきたよ。ユリアが僕を止めたのは今回が初めてだ」
「だって、、、、、だってタクトおかしいもの!!!普通じゃないわ!、あの、、、苦しい時、悲しい時、楽しい時を一緒に過ごしてきたタクトに戻って!!」
「そう、そこまで先輩に洗脳されてしまってるんだね」
「なんでタカフミなのよ!関係ないじゃない!!」
「僕がユリアと先輩が通信してるのを知らないと思ってるのかい?」
ああ、《助けて》が裏目にでるなこりゃ。
「それは、、、、、タクトに戻って欲しかったからよ!タカフミの力を借りたかっただけよ!」
「もういい、ユリア。先輩のほうに行けよ。先輩がいいならそうすればいい」
「!!!!!、なんで、、、、、、なんでそうなるのよ!!!私が何時そんなこと言ったのよ!!」
ユリアは涙をつーっと流す。
「そうです、タクト様には私がついてます。あなたは要りません」
いきなりコニーが口を開く。そして来栖の隣に並んだ。何か手に持って、、、、、、、魔導書か!!!!
【空間のグリモア】
術者の理を体現させる究極の魔道書
魔道奔流 魔力低減
【魔道奔流】
魔力量に関わらず事象の効果を増幅する
最上位スキル
【魔力低減】
理の体現に必要な魔力を低減する
最上位スキル
鑑定したら、間違いなく魔導書だ。しかもグリンダムが持ってったって言ってた空間じゃねーか。
なんでコニーが、、、、、、、コニーを鑑定すると、、、、、、、鑑定がはじかれた。
「私にジャッジメントなんて利きませんよ?タカフミ様」
「・・・・・鑑定と言わずにジャッジメントだと?お前誰だ?コニーじゃねえな?」
「おっと失礼、私はコニーですよ。正真正銘」
「・・・・てめえ、、、、、、」
すると、来栖は剣を振り上げた。
「魔法障壁!!!」
アリサが魔法障壁を詠唱して、障壁を出した場所は、、、、、、ユリアの頭の上だった。
キン!
魔法障壁は来栖の刃を受け止めて砕け散った。
「っな、なんで、、、、、」
ユリアはもう言葉に出来ずにいる。
「この程度の障壁で僕の剣が受けれると思わないでください。今のは振り下ろしただけですよ」
ユリアは腰が抜けたように地面にへたり込んだ。
「アリサ=ローレンスが命ずる、付与のグリモアよ、理を示せ!スピードスター!!」
アリサはグリモアで、すでに走りだしているナタリーに魔法をかけた。ナタリーは目で追えないほどの速度を得る。ナタリーはユリアに向かって一直線だ。
「ナタリー!」
来栖は何も、全てを気にしないとでも言うようにゆっくり剣をまた振り上げている。
「!!!」
ナタリーは間一髪でユリアを抱き上げ、来栖の剣は空を切った。ナタリーは一直線にこっちに戻ってきた。もどってきたナタリーはユリアを地面に置くと、両手にククリを出して構える。
ユリアは、無言で涙を流し続けている。くそが、来栖。
「言っときますが、今のは間に合わせてあげたのですよ?ユリアにもちょっとくらいは、今までのタクシー代を払わないわけには行かないですからね。餞別ですよ」
「来栖てめえ、、、、、」
「もう一つ言っときます。何か先輩は僕が操られてるとか、騙されてるとか思ってるみたいですが、僕は正気です。勇者は使命のためには全てをかけるんですよ」
「正気のわけねーだろうが!コニーの様子がおかしいことに気づかないのかよ!!」
「コニー?コニーは初めからこうですよ?そして初めからグリモアに認められていました」
「そんなわけない!!みたことないわ!!」
泣いていたユリアが立ち上がり、声を張り上げる。
「言う理由がなかったですから。ちゃんと僕のアイテムボックスに入っていましたよ?」
「なんで、、、、、私の何が気に入らないの!!!」
「別に?何も気に入らなくないですよ、ただ、居ても居なくてもどうでもいいってだけで」
「・・・・・・・・そんな、、、、、、、騙され、、、、、、私、、、、、」
ユリアは膝から落ちる。
「もういい、しゃべるな来栖」
俺は龍神にもらったバールを構えて、全員の前に出た。
「てめえがいらねーなら、ユリアは俺の女にする。文句ねーな?」
「どうぞどうぞ、僕の使い古しですが、そんな貧相な身体でもいいならもってってくださいよ先輩」
俺は全身に渾身の力を入れる!
「てめええはあああああ!!もうしゃべるんじゃねええええええ!!!」
弾丸のように飛び出した俺のバールと来栖の剣が、火花をあげてぶつかり合った。
今、魔王の鍵を宿す終焉の使者と勇者の戦いが火蓋を切られた。




