第三十七話
宿に戻り、宿の精算を済ますと、俺たちは馬車に乗り込んだ。
サリイが一人で御者をする。
街の門を素通りして、馬車を走らせると後ろがざわついている。
街の門あたりだ。ギルドマスターの様子を知ってまた追っ手が出たかな?
「ナタリー、アリサ、敵が来てもいきなり殺すなよ?」
「わかってるわよ」
「大丈夫です。両足を切り落とせば追ってこれません」
「お前、本当に物騒だな、、、、、、。足も切り落とすな、とりあえずは無傷で対処しろ」
「かしこまりました」
しばらく後ろを警戒してたが、追ってくる気配さえない。どうしたんだろう。
まあ、来てもなんとでもなるって気持ちと、腹が減ったので、馬車を停めて飯にすることにした。
「食材はまだあるが、はやいうちに補充したいな」
「この先はギガントムテムの領地になります。追っ手もここまででしょう」
「関所とかあるのか?」
「国一つを囲えるわけではありませんので、関所はありません」
確かにそうだな、関所を置いても他から入られたら意味ないし、どこに関所を置くんだって話になる。
「そうだな、ところでサリイ、御者はどうだ?大丈夫か?」
「はいっ!慣れました!ボクに任せて下さい!」
「助かるよ。ナタリー、たまには覗いてやってくれよ」
「お任せください」
「出来たわよー」
アリサが料理を運んでくる。
今日は唐揚げとご飯か。まあ鉄板だな。昼飯だし、こんなもんで十分だ。
みんなで飯を食ってると、ナタリーの肩からゴマ吉がするすると食卓に降りてきた。
やばい、ゴマ吉の飯を忘れてた。
日本じゃマウスだったけど、マウスなんていねーぞ?野生のねずみなんて探せないし、、、、、
ゴマ吉はじーっと唐揚げを見ている。
「まさか、食えるのか?」
ゴマ吉はウンウンと頷く。俺が唐揚げが乗ってる大皿から1個手に取り、少し喉に刺さりそうな角を取ってやって、テーブルに置いてやると、パクっ!と食いついた。ゴマ吉はむぐむぐと飲み込んでいく。
「面白いわね、はいっ」
アリサが唐揚げをそのままテーブルに置いたので、
「角がないものを食ってるから、唐揚げをある程度丸くしてからあげてくれ」
すると、ゴマ吉はブンブンと首を振った。
「・・・・平気って言ってるわよ?」
「いやいや、、」
ゴマ吉はパクっ!と唐揚げに食いついて、またむぐむぐ飲み込んでいく。
「本当かよ、油もんだし大丈夫か?」
ゴマ吉はウンウンと頷く。
考えても仕方ない。異世界補正と思って乗り切ろう。
飯が終わり、テーブルやかまどなどを片付け、馬車に乗り込む。
本当に追っ手がこない。どうなってやがる。
馬車は何事もなく進んでいく。
御者席に行き、外を確認したナタリーは、
「もうギガントムテムに入りました。追っ手もないでしょう」
「そうか」
「このまま2日ほど進むと、村につくはずです。その村から山に登れば、龍のすみかと言われているウォブリ山に入れます。いかがしますか?」
「山か。山なら魔物もいるんだろ?」
「かなり険しいとの話ですね」
「まだダンジョンから出て来て間もない、戦闘を避けてギガントムテムに行こう、、、、、、いや、避けられないか」
「敵なの?」
「ああ、魔物だな」
俺の探知にかなりの数の魔物がかかった。群れをなしていて、こっちに気づいたようで近づいてきてる。
ナタリーがサリイに声をかけ、馬車を止める。
「やるしかなさそうだ、敵はやる気だぞ?」
どうやら俺たちを囲むように移動してる。人間か?なかなか統率が取れてるな。
「・・・盗賊かもしれん、統率がとれてる。囲まれてるな」
「殺していいのよね?」
「ああ、かまわない」
「お任せください、手足を泣き別れさせてあげます」
「ボクも!」
全員アイテムボックスやウエストポーチから装備を取り出し、身構える。
容量は少なくても、全員が自分の装備を自分で持てるのはやはり良いな。咄嗟の身支度が早くなる。
「来るぞ!・・・狼か」
俺たちを囲んだのは狼だった。数は100はいそうだが、それより、狼の囲みの外側に一際大きな狼がいる。
体長は雄牛かバッファローほどあり、片目が傷で瞑れている。
他の狼はグレーなのに、そいつだけは体毛が紺色だ。
「大気を唸らせ敵を切り刻め・・・エア、、、カッター!」
口火を切ったのはアリサだ、うん、ちゃんと魔力を込められてるな。
エアカッターは、十数枚の刃となり、7,8体の狼を輪切りにした。
「ゴマちゃん、降りてもらいますね。行きます!」
ゴマ吉はひょいと音もなくナタリーから飛び降りて、体を10mほどに巨大化させた。
ナタリーは両手にククリを持ち、軽く助走をつけて天高く飛び上がり、狼の群れに着地する。
「はあぁぁぁぁ!」
ナタリーは独楽のように回転して、狼を切り刻む。
狼は怯むかと思ったが、あの大狼がいるからか、決死の覚悟でナタリーに群がる。
サリイを見ると、馬の隣で剣と盾を構えて待機している。俺の視線にサリイが気づくと、
「ボクは馬を守ります!」
「良い判断だ」
「アリサ=ローレンスが命ずる、闇の魔導書よ、我が理をここに示せ!!ダークミスト!」
数匹の狼がアリサに向かって、突撃してくる。
グリモアを開いているアリサの目の前に、直径30cmほどの黒い玉が現れ、詠唱と共に扇状に前方に黒い霧が広がる。
黒い霧は、2秒ほどで晴れたが、狼たちは走るのをやめて、右往左往しだした。
アリサが俺の視線に気づいた。
「暗闇効果よ、いやあああああ!」
「なるほどね」
アリサは杖を右手に持ち、狼を殴り飛ばす。
こりゃ、出る幕ねーな。
「じゃ、お前が俺の相手だな」
大狼と俺が見つめあう。大狼の前にいる狼たちがゆっくり近づく俺に、牙を剥き出し殺気だつ。
『ウォン!』
大狼が短く声を発すると、手前の狼たちは2つに割れて道を作った。
「ほう、いいぜ。殺ろうか」
俺はバールを取り出して、肩にかついで大狼の出方を待つ。
【大狼】
Aランク lv49
なかなかだな。ダンジョンでは鑑定しなかったけど、確認が取れたやつでは、こいつが一番強い。
『ウオオオオオオオオン!』
大気を揺るがすような雄叫びを挙げると、大狼は突っ込んできた。
俺は右にかわして、バールを横腹に突き刺す。
「っ!はやっ!」
バールは、大狼が後ろ足をけりあげ体制を変えることでかわされた。
大狼は右足で引っ掻きに来る、それをバールを縦にして受けると、そのまま大口を開けて噛みついてくる。
「っ!」
咄嗟にバールを横にし、牙を受けると大狼はバールに噛みつき、また右足で引っ掻きに来た。
俺はバールを手放し、後ろにジャンプしてよける。
なんだこいつ、戦いなれてやがる。
獣とは思えないような連携技だ。
俺は種火を連射する。
一つ一つをファイアーボールのように形作り、両手交互にファイアーボールを発射する。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
大狼は右へ左へ華麗に避ける。
嘘だろ?たかがレベル49だ。こんなに強いわけがない。
ステータスは俺より明らかに低いはずだ!
俺は大狼を中央に寄せるように左右にファイアーボールをばら蒔き、今だ!!
「右手に水、左に風!、錬成!アブソリュート、ゼロ!」
両手を突きだして、絶対零度の竜巻を手から扇状に噴射する
と、
「ヴォォォォォン!」
大狼は避けれないと判断すると、咆哮する。
咆哮と相殺するようにアブソリュートゼロは掻き消えた。
「・・・・うそだろ?」
ファブニールでさえ、一時的とはいえ凍らせたのにたかがlv49に通用さしないとは、、、、、
いや、今のは魔力の込める力が足りなかった。
だとしても、、、、、
大狼を見ると、口角があがって見える。
くそが、笑ってるのか?
『もう終わりか?つまらんな』
「はっ?」
大狼は喋った。
「話せるのか?!」
また大狼はニヤリとしてから、
『貴様の気のせいだ!』
明らかに話したと同時に、大狼は頭から突進してきた。
俺は会話が出来ると思い、気が抜けてしまってまともに頭突きを食らう。
「ぐはっ!」
堪えるのは堪えたが、10mほど後ずさってしまった。
『ほう、耐えるか。頑健だな』
「てめえ、、、、、」
『狼が話すのがそんなに珍しいか』
「・・・・」
『なら冥土に持っていけ!』
また大狼は突進してきたが、俺がジャンプでかわそうとすると、頭突きではなく、前足を袈裟斬りにするように振り下ろしてきた。
俺はギリギリ右へジャンプしかわしたが、すぐに大狼は追撃で前足を振り下ろす。
それをまた右へジャンプし、バールを見つけて拾い上げる。
更に追撃の前足をバールで受け止める。
俺が受け止める形で力比べになる。
「てめえ、本当にlv49か?!」
『ほう、ジャッジメントを持つか。そんなのに頼ってるから、貴様は負けるのだ!』
大狼はまた大口を開けて、噛みついてくるが、
「ワンパターンだな!」
俺は前足をバールで受け止めながら、オーバーヘッドキックの要領で大狼の顎をけりあげる。
大狼は2mほど吹っ飛んだ。俺は体制を建て直してバールを振り上げる。
「うあああああ!」
同時に大狼は噛みつきにくる。
「・・・グラヴィティ!!」
グリモアの詠唱をしていたアリサのグラヴィティが大狼にかかると、大狼は行動が遅くなった。噛みつきは間に合わず俺のバールが大狼の横顔をもろに殴り付けた。
『ギャワワン!』
大狼は盛大に吹っ飛んだが、すぐに体制を整える。
『ぐっ、勇者か、、、、、』
「・・・勇者?」
『・・・また会おう、終焉の使者よ』
大狼は、ものすごい速度で、この場を離れて行った。
「待て!逃げるな!」
ダメだ、とても追い付けそうにない。
後ろを見ると、狼との戦闘は終わっていた。
残った狼たちは、まるで急に支配が解けたように、ちりじりに逃げ出した。
みんなを確認すると、ナタリーが少しかすり傷をおっている。
ポーション樽を出して、ナタリーに塗ってやる。
「みんな、怪我はないか?」
「ありがとうございます、ご主人様」
「大丈夫です!」
「私は平気よ、でもずいぶん苦戦したわね?意外だったわ」
「ああ、俺も意外だった。しかも喋りやがったよ」
「何か、ご主人様のことを終焉の使者と言っていましたが、、、、、」
「やめてくれ、まるで中2病だ」
「チュウニビョウ?ですか?」
アリサは腹を抱えて笑っている。すごいわ、終焉の使者よとか俺を指を指す。
「うるせえ!俺が言ったんじゃねえ!お前だって勇者って言われたじゃねーか!」
「・・・あれはご主人様に言ったんじゃないのですか?」
違う、間違いなくアリサを見て言った。タイミングもアリサのグラヴィティを食らった時に言ったんだ。
どういう意味だ?まさかアリサが勇者なのか?いやいや、来栖が勇者だろ。職業も娼婦だぞこいつ。
「いや、間違いなくアリサに言ったな」
「・・・なんで私なのよ」
「知るかよ!でも大狼はアリサに向かって言ったんだ」
「・・・それは、、、、、、、私が強すぎるからねっ?!やるわね私!勇者に間違われるほど強いんだわ!」
・・・なんですか?それじゃ俺は勇者には見えないくらいの力しかないと?
勇者と言われるのは嫌なはずなのに、アリサが間違われると思うとなんか腹立つな。
「ですが、勇者である異邦人はご主人様なので、多分ご主人様に言ったんだと思いますよ?」
「まあ、そうだろうな」
「・・・アンタ、あんなに嫌がってたくせにここで認めるわけ?」
「う、うるせえ!、、、、あれ?ゴマ吉は?」
ゴマ吉を見ると、狼の死体に巻き付き、飲み込みやすく砕いてから狼を丸のみにしている。
腹を見た感じだと、今食ったので三匹目だぞ、、、、、
「「「・・・・・・・」」」
ゴマ吉は俺たちの視線に気づくと、舌をペロペロだしてこっちにずりずりやって来た。
俺の目の前で頭を俺の目線までもたげる。
「・・・旨かったのか?」
ゴマ吉はウンウンと頷く。
「まあ、ならいいんだが、、、、、」
「ゴマ吉は一匹仕留めてました!」
「お、マジか。どうやって?」
「こう、、、、にょろにょろっと、、、、巻き付いてました!」
サリイのゴマ吉の真似のジェスチャーが面白い。
俺とアリサとナタリーは、それを見て笑った。
サリイは俺たちが笑うと、調子に乗ってゴマ吉の真似を繰り返した。
さて、レベルは変わったかな?
【ステータス】
名前 タカフミ=コンドー 年齢 20
職業 ハードボイルド
LV 30 ★
STR 531
DEX 725
VIT 589
SPD 578
INT 936
MEN 925
スキル
言語理解
杖術lv3
召喚魔法lv4 生活魔法 魔力強化lv5 魔力操作lv5
鑑定 アイテムボックス 詠唱破棄 並列魔法
成長促進 気配探知lv4 魔力探知lv3 錬金lv5 練成
????????????
【ステータス】
名前 アリサ=ローレンス 年齢 15
職業 娼婦
LV 30 ★
STR 308
DEX 530
VIT 311
SPD 558
INT 624
MEN 646
スキル
重力魔法lv1 闇魔法lv1 付与魔法lv4 空間魔法lv1 風魔法lv5
魔力強化lv5 魔力操作lv4 簡易鑑定 魔力の理
【ステータス】
名前 ナターシャ=フォレストウルフ 年齢 48
職業 踊り子
LV 45
STR 850
DEX 789
VIT 425
SPD 803
INT 380
MEN 622
スキル
二刀流lv5 身体強化lv5 忍耐lv2
魔力操作lv3
????????????
【ステータス】
名前 サリイ 年齢 12
職業 騎士
LV 43
STR 781
DEX 708
VIT 824
SPD 559
INT 345
MEN 570
スキル
剣術lv5 盾術lv5 頑強lv5 解体lv2
魔力操作lv2
【ステータス】
名前 ゴマキチ 年齢 2
職業 暗殺者
LV 6
STR 75
DEX 90
VIT 59
SPD 81
INT 44
MEN 40
スキル
罠探知lv2 気配消去lv3 獣術lv2
言語理解 巨大化 詠唱破棄 脱皮
敵が弱すぎたか。レベルも高くなってるし、この程度じゃ足りないんだろう。俺たちはレベルがあがってない。
だけどゴマ吉がレベルが5も上がった。
多分俺の成長促進は効いてると思われる。召喚も隷属扱いには違い無さそうだ。
だが、奴隷じゃないからかステータスの伸びは俺たちより悪いな。1lvあたりの上昇が半分ぐらいになってる。
俺たちは、周囲を片付けて、今日はここで夜営することにした。




