第三十四話 ※
俺たち4人は上へと戻っている。
魔物はまったくいない。リポップとか遅いのだろうか。
「魔物って一度倒すと、湧くの遅いんだな」
俺は誰にと言うわけでもなく、ボソッと呟いた。
「ファブニール様に聞いたところ、ファブニール様の魔力が結晶化して、魔石に肉付けされるそうです。ここにはそれを自動でするシステムが組み込まれていて、上の階ほど結晶化が早く、下の階ほど結晶化が遅いそうです」
と、ナタリーが言う。いつの間にそんな話を?
「だから、ファブニールは動けねえのか」
「それは私もわかりません。どうなんでしょうか」
サリイ以外で適当に話ながら歩くと、もう地下10階まで戻ってきてた。俺はサリイに近づいて、
「悪いなサリイ、のけ者にしたいわけじゃないんだ。ただみんなキャラが濃くて、、、、埋め合わせしてやるからな?」
サリイは珍しく真面目な顔で、
「ボクはご主人様がそんな人じゃないのを知っています。それにこうやって気にかけてくれます。とても優しくて嬉しいです。ご主人様?大丈夫、わかってます。ありがとうございます」
「お、おう」
サリイ、そんな風に話せるの?つうかいつもはアホなフリでもしてるわけ?話の内容よりそこにビックリしたわ。でもまあ、意外にも色々考えてるのね。
・・
・・・
・・・・
「そういえばお客さんってどこにいるのよ、全く出てこないじゃない」
アリサはそう言ったが、俺はアホな話をしてる時でも、あり得ない異常事態を感じている。
「いや、アリサ、たぶんヤバイのがいる」
「探知にいるの?」
「・・・逆だ、、、探知に誰も何も掛からない、明らかに異常だ。下手したらこの先は死体の山かもしれないな」
俺たちはもう地下3階まで来てる。魔物さえいない。
「!! じゃあ早く行かないと!」
本気でヤバイ気がしてきた。ファブニールクラスじゃなきゃいいが、、、、、
「サリイ、ナタリー。気を引き締めろよ。たぶんお客さんは外で待ってる」
「はい!」
「ご主人様、布陣は?」
「基本どおりにサリイがまずは受け持て、ナタリーは魔法を警戒しながら動きまわって攻撃しろ。俺はサリイを軸にして対応する。アリサは巻き添えをださないように魔法を使え」
「わかったわ」
結局外に出るまで何もいなかった。外に出ると1人、目の前に女が立っている。
見た目は20代ぐらいだが、恐ろしく太っている。多分100kgは余裕で超えてるだろう。
「ふうううっ、面倒くさい、、、探したわよ、、、、、」
女は太った身体でよちよち歩いてくる。
「俺をか?周りに誰もいないが、どうしたんだ?」
距離はまだ50mはある。だがサリイは尻尾を毛羽立たせ、盾を出して警戒してる。
なるほど、つえーな。ファブニールほどじゃなくてもサリイの尻尾が強さを物語ってるな。
「ふう、、、私に質問?答えるのも面倒くさい、、、邪魔されると面倒だから全員飛ばしたわ」
女はまだゆっくり歩いてくる。
アリサは自分の空間魔法のアイテムボックスからグリモアを出して、左手に持って構えた。
とりあえず何されるかわからないから、サリイの前に俺は出た。
「飛ばした?殺したじゃなくてか?わざわざ飛ばすとか面倒だろ?」
「・・・・・そうよ、面倒くさいのよ。でも今殺して国に付け狙われるのも面倒なのよ、、、だから、、、、」
女がそういった瞬間、なにか鋭いものが目で追えない速度で俺の肩に刺さった。
いや、気づいたら刺さっていた。
「ぐうっ!!」
俺が刺さっている緑の物体を引き抜こうとすると、それはするっと女に戻っていった。
おれのステータスで一撃で刺さるのか。
「、、、、、はやく死んで鍵を渡してちょうだい」
「ご主人様!」「旦那様!」
2人が俺に来そうだったのを、左手で静止した。サリイは冷静だ、俺の後ろで俺の声が掛かるのを臨戦態勢で待っている。やっぱ男は違うな、こうでなくちゃな。
俺はアイテムボックスからポーション樽を出しながら、
「鍵ってことは、お前は鍵を取り込んでるんだな?何の鍵を取り込んでる?」
「ふうう、、、、かかってこないの?面倒くさいわね」
「面倒くせえ?お前《怠惰》か?」
「ふうう、、、そうよ、、、貴方誰?面倒くさいから自分で名乗って、、、、」
「残念だが、貴様に名乗る名はないな、俺に勝ったら教えてろう」
「ディバインオーラ!アグレッシブオーラ!」
アリサは付与魔法の攻撃と防御の魔法をみんなにいきなりかけた。敵が来ると感じたんだろう。
それと同時に、
「サリイ!いくわよ!」
「はい!」
アリサの号令で戦場が動き出した。
サリイが盾を前に突っ込んでいき、途中でカン!!カン!と聞こえる。サリイの盾に、怠惰の右手からでている緑の円錐がカンカン当たっている。左右からも合わせて5本ほどが縦横無尽に暴れているが、サリイは上手いこと剣と盾でいなしている。
ナタリーはまず俺のところにきて、ポーション樽からポーションを手で掬い俺の肩にかけている。
傷口が塞がるのを確認すると、ナタリーは一切かがみこみもせずに伸身宙返りで怠惰の裏に回ろうとする。
怠惰の上空まで来たときに緑の円錐がナタリーを襲う。
「魔法障壁!」
アリサの障壁に円錐は阻まれ、ナタリーは怠惰の裏側に付いた。だが円錐の数は10本ほどに増えて、ナタリーにも襲う。
円錐の攻撃は早く重いようだ。ナタリーも防戦一方だ。
俺がサリイの裏につこうとすると、怠惰が
「うああああああああああ!!!めんどくせええええ!!」
そう叫ぶと、円形に広がる衝撃波が俺とサリイとナタリーを吹っ飛ばす。
俺は吹っ飛びながら空中で、ファイアーアローを怠惰めがけて投げる。
「、、、なに?!!」
怠惰は無言でファイアーアローを素手で握りつぶした。
こりゃやばいか?
俺が着地するより先に、円錐がアリサに向かって全てが飛んでくる。
「魔法障壁!」
アリサが障壁を張ると、、、、、、、円錐は障壁の同じ場所を攻撃しており、障壁が砕けた、アリサを襲う
「!!アリサ!!」
俺が助けに走ろうとしたが、すでにサリイは走り出していた。サリイは怠惰に盾を向けながら円錐とアリサの間に入ったが、盾は吹っ飛ばされ、サリイの身体に円錐が全て突き刺さる。
「「「サリイ!!!」」」
「うあああああ!」
ナタリーはククリを前に構えたまま、弾丸のように前に飛んだ。飛びながら宙で前宙を繰り返すようにぐるぐる回っている。
俺もバールを取り出し、怠惰に向かう。
ナタリーの攻撃は怠惰に当たるまえに怠惰が左手をナタリーに向けると、左手から出た衝撃波でナタリーは吹っ飛んだ。
「きゃああ」
「ナタリー!!クソ、行くぞ、アブソリュ」
俺は練成をしようとしたが、円錐の高速な攻撃で練成をさせてもらえない。
「弱い!弱いぞ!強欲!!!この程度なのか?!さっさと死んで、鍵をよこせええええ」
怠惰が叫ぶと、怠惰の頭上に緑の2mはありそうな玉が浮かんでいる。
「・・・・・・・アリサ=ローレンスが命ずる!魔導書よ!我が理をここに示せ!ブラックホーーール!」
アリサがグリモア使って魔法を唱えると、アリサの頭上にも黒い2mほどの球体が浮いている。怠惰の頭上にあった玉はまるでストローで吸われるように、細く早く、玉の全てを吸い取っていく。
「ぐうう、、面倒な、、、、」
俺は樽を持って、サリイに走っていた。俺はサリイにたどり着くと、サリイをポーション風呂にぶち込んだ。
ナタリーを見ると、まだ立ち上がってない。衝撃波がかなりのダメージをあたえたようだ。
俺はバールをもち、怠惰に突っ込んでいき、バールに渾身の魔力を込める。
バールは光を発して白く輝いた。怠惰からは円錐が無数に飛んでくるが、それをバールで思いっきり叩くと、円錐は岩が割れるように砕けた。次々に来る円錐を砕きながら近づいて、
「食らえよ!」
俺はバールの最後の一撃を利用して、一回転してバールのくぎ抜き側で怠惰の腹を突き刺す。
怠惰はそれを食らうと、
「ぐあ!」
っと短く声を上げて、10mほど吹っ飛んだ。
俺はそのまま、ナタリーにたどり着きナタリーを抱きかかえる。
「アリサ!!!」
俺が叫ぶと、アリサも用意していたようだ
「アリサ=ローレンスが命ずる!グリモアよ!理を示せ! 潰して!グラヴィティ!!」
アリサは詠唱が終わると左手に持っていたグリモアを両手に持ち替えて、力を込めている。
怠惰は吹っ飛んだ先で、片膝を付いて動きが取れないようだ。
「な、、、なんだ、、、これ、、、は、、、、ぐう、、、」
「旦那様!早く!もう持たない!」
俺はバールの棒側を先にして、空めがけてバールを投げる。
「あばよ、怠惰」
バールはグラヴィティの範囲にはいると、勢いがついて怠惰めがけて隕石のように落ちる。
「ぐふっ!」
バールの棒側は怠惰の首に突き刺さった。
「・・・・・強かったわね、、、、っ」
「サリイは大丈夫なのよね?」
アリサはグラヴィティを解くと、ぺたっと座り込んだ。
「ああ、多分大丈夫だ。 魔力低減がついてても、そんなに魔力を使ったのか?」
「グリモアにさらに魔力を突っ込み続けたのよ、それでも押さえつけてるので精一杯だったわ」
アリサの台詞を聞きながら、ナタリーにたどり着くとお姫様だっこしてサリイに向かう。ナタリーの心音は聞こえる、大丈夫なようだ。ナタリーをサリイのそばに一回置いて、サリイを風呂から出すと、サリイの傷口は塞がっていた。
「サリイ、大丈夫か?今完全に治してやる」
俺はアイテムボックスから材料を取り出して、上級ポーションを5本作った。
1本をサリイに飲ませる。
「、、、ご主人様ありがとう!」
「良かった、心配したぞ」
サリイはもう大丈夫そうだ。スレイを見ると怠惰の隣にいる。でもまずはナタリーだ。
俺はナタリーを少しだけ揺らして、
「ナタリー、ナタリー、大丈夫か?ナタリー」
すると、ナタリーは気づいた。
「、、、、、ご主人様、、、、はっ!敵は?」
「片付いたよ」
ナタリーは一瞬止まって、頭を下げる。
「申し訳ありませんでした、ご迷惑をかけました」
「気にするなよ、あいつは強かった。鍵もちだったんだ、仕方ないさ」
「それでも私も持ってるのに、、、、、申し訳ありません」
「いいっての。俺だって持ってるが結局はアリサが倒したみたいなもんだ」
「アリサが?」
ナタリーがアリサを見ると、アリサもこっちに歩いてきてた。
「グリモアさまさまね!」
すると、怠惰の死体から黒水晶がコロッと出て来て、淡い光を放っている。
「まさか体内から出てきたのか?」
アリサは黒水晶を拾って俺に差し出した。
俺は浄化で水晶とアリサの手を洗ってやって、黒水晶をアイテムボックスにしまった。
とりあえずはみんなが集合して無事を確認できてほっとした。
「あいつは相当強かった。あの緑の円錐みたいなやつを身体からたくさん出してたが、あれが鍵の能力なんかな」
「どうでしょうか、私もご主人様も?????になってて使えないんですよね?調べることは出来たのですか?」
「あっ、忘れてた、、、、、」
「まったく、、、、本当マヌケカワイイわね、うちの旦那様は」
「・・・うるせえ」
「まあ、今は困ってないからいいじゃない。龍神王に会ったら聞いてましょ」
「そうだな、じゃあ帰るか」
「待って、ちょっと私にやらせて」
アリサはまた重力のグリモアを左手で持って、
「アリサ=ローレンスが命ずる、グリモアよ、我たちに理の力を具現せよ、レビテーション」
すると、ふっと身体が浮いた。
「おおすげー」
「うわあ!」
「これは、、軽いですね」
「で、どうやって進むの?」
アリサを全員が見ると、
「・・・・・わからない」
「なんだそりゃ!!浮いてるだけじゃねーか。これじゃ推進力が、、、、ああー」
「アリサ、一回下ろして」
「わかったわ」
地面に全員が付くと、俺がみんなに指示を出す。
「アリサ、サリイ、ナタリー、俺の順番に一列に並んで、前の人の肩を両手で掴んで」
みんなは不思議な顔をして、俺の指示通りに動く。
「じゃアリサ」
そういうとレビテーションをして全員がその場で浮かぶ。俺はナタリーの肩伝いにスレイの前に回り、ナタリーと抱き合うような形になって、俺の両手をナタリーの背中側にまっすぐ伸ばす。
「ご、ご主人様?」
「いいからいいから」
俺は手から乾燥を出して、推進力にする。俺たちは電車の形ですーっと進みだした。風の量を増やすと推進力が増した。右と左の風量を変えれば曲がることもできた。
「すごーい!!やるわね!!飛んでるわよ!」
「楽チンです!ご主人様!」
「・・・・・・・幸せです、ご主人様・・・・」
ナタリーは完全に俺と抱きあう形になっており、少しポーッとしている。
「・・・・・あんまりイチャイチャするんじゃないわよ」
「不可抗力だから、アリサ。不可抗力」
「そうです、フカコウリョクです・・・・」
俺たちはすいすい進んで、町にたどり着いた。
アリサは喜んだのは始めだけで、あとはむすーっとしていた。




