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召喚術士の冒険記  作者: 壬生方 社箱
第一章 エスカード編
25/64

第二十三話 ※


大寝室から出れるバルコニーで、朝日の中、バルコニーの手すりにもたれながら上半身裸で一服をする人の姿がある。














「・・・チョロいわ、、」



そう、俺ではない。

俺はキングサイズのベッドでうつ伏せで大の字に倒れてピクピクしている。

なんか、見たことあるような光景だ。

ナタリーはつい今しがた、朝食の準備に着替えて降りていった。


そいつは、タバコを咥えながら部屋に戻ってきてドカッとベッドに座る。

「ふうー」


と、アリサが息を吐いたとこで俺はアリサからタバコを取り上げる。


「これだけはダメだ」


そう言って取り上げたタバコを途中から吸い出す。


「なにそれ、キュンキュンしちゃうじゃない!誘ってるの?」

腹黒い、嫌らしい笑いを浮かべて、俺を見る。


「勘弁してくれ、、、、」

俺はタバコを咥えたまま、着替えを持って下に降りる。

参った。職業は無駄ではなかった。

もうコレイジョウハ語りたくない。


こんな時は新聞でも読みたい気分だが、ないので風呂の準備に向かう。

お湯がたまると二人がやって来て、また3人で入り朝食を食べる。

米だけ炊きなおして、味噌汁は昨日の残りだ。

おかずは目玉焼きと、なんかの腸詰めだ。


昨日のことを考えると、もうなにもしたくなくなるので、あえて考えないようにして、話題にも一切ださない。


「今日はアリサの服をサムソンのところに取りに行くか。そのあとは食材も足しに行こう」


「そうね、あれから3日も経ってるしね」

クソアリサ、話を絡めるな。


「では、着替えて出掛けましょう。ご主人様、キッチンに魔力をお願いいたします」


「わかった」

俺、安請け合いしたが魔力残ってるのかな?二人に魔力まで吸い取られた気分だ。


魔力を補充して、奴隷商に行く。

入り口のガードマンみたいなやつに中に案内される。


しばらくすると、サムソンが入ってきた。


「これは、タカフミ様。アリサの洋服です。出来ております」


サムソンはもう一度部屋から出て、すぐ戻ってきた。

服をアリサに手渡す。


「確かにお渡ししました」


「ああ、ありがとう。ところでサムソン、アリ「余計なこと言うんじゃないわよ?」」


「・・・大丈夫ですか?タカフミ様。アリサがなにか粗相を?」


「・・・いや、大丈夫だ。帰ろうか、みんな」


俺たちは奴隷商をでた。


食材を野菜中心に買って、街を3人で見て回る。落ち着いて見てみると、結構いろいろあるなー。


「なんか、ほしい家具とかないのか?」


二人に話すと

「大丈夫です、ご主人様。ほとんど備え付けがありますし、細々したのは、私たちで買います。それよりお洗濯がしたいのですが」


「ああ、わかった。俺も手伝うよ」


「いえ、水道も道具もありますので、私がやります」


「じゃあ私は図書館行っていい?」


「アリサ、ナタリーを手伝ってやれよ」


「いえ、アリサにはたくさん教えてもらってばかりです。ここは私にやらせてください」


「私も今度は手伝うわ。今は図書館行かせてね」


「はい、アリサ。大丈夫ですよ」


二人が仲いいのはいいことだ。ただ、二人がタッグを組むと最強過ぎて歯が立たないから、ほどほどにしてほしい。

買った食材は俺のアイテムボックスにいれた。

ナタリーのは、無限じゃないから。

3人は別行動を取った。


何の気なしに冒険者ギルドに行く。

なんか面白そうな依頼はないかな?ドラゴンを倒すとか。

ギルドに入り、壁紙をみる。俺は思う。

何故読めるのに書けないんだ?書くのは勉強が必要で読むのは言語理解にふくまれるんだろうけど、いまいち納得がいかない。


暇だから副ギルドマスターに話そうとしても、副ギルドマスターもいないし、森の風もいない。

あと、知ってるのはギルドマスターだが、今は絡みたくない。そういう気分ではないのだ。


面白そうなのがないし、帰ろうとした時、

見るからに怪我人が入ってくる。


「す、スタンピードだあああぁ!!!」


そいつは大声で叫ぶと、

「ギルドマスターを呼べ!!早く!!」


ギルド内は一気に慌ただしくなり、そいつは上に連れてかれた。

その話がすごく気になるが、普通に扱えと大口叩いてしまったため、聞きに行くことが出来ない。

内容が本当なら町中に情報が走るだろうから、とりあえず街の正門に行ってみることにした。30ぐらいなら俺ひとりでなんとでもなるだろうし。



正門につくと、尋常じゃない緊張感と慌ただしさに包まれている。

俺は、この街に初めて来たときの、件の衛兵をみつけたので声をかける。


「なんか、スタンピードだって?」


「ああ、この街も終わりだ。お前も逃げろ。お前とも色々あったが死ぬことはない。生きろ。生きるんだ」

まったく笑いが挟めない雰囲気だ。

ちょっと涙目じゃねーか。


「おいおい重いな。そんなにやばいのか?」


「普通なら情報規制されるが、今回はそんな事言ってたら全滅だ。だから俺が今言うが、オークの大群だ。数は数千、キングも複数確認されている、ジェネラルは数えきれてない。捜索隊はほとんど治療院入りだ。終わりだろう。いくらお前がゴブリンの砦を落とせるほどでも、オークとゴブリンじゃ地力が違う」


「・・・いつくるんだ?」


「捜索隊の情報だと、まっすぐこっちに向かっている。速ければ今晩、普通に来ても明日の朝には着くようだ。さあ、荷仕度して逃げろ」


とりあえず情報は得た。ここは下がってアリサたちと合流しよう。

俺は家に戻ると、アリサも帰ってきた。


電車(train)に乗って向こうから来たわよ」


「あん?何が?」


「アンタの英雄への片道切符よ!」

また始まった。わけわからねーこと言いやがる。


「アンタが全て殺して街を救うのよ!」


「いやいや、普通に考えろ。無理だろ」


「ご主人様なら出来ます」


「なんの根拠だ?」


「アンタにはアレがあるじゃない」


「ん?」


「生活魔法の錬成よ!」


「どう考えたって無理だろ。例え最大火力で一発入れても2,300消えるだけだろ?そのあと魔力ない俺どうすんの?」


「前から言ってるでしょ。アンタは自分を過小評価してる。私の勘では、ちゃんとオークの真ん中に全力で撃てれば、たぶん一撃よ。それより余波で街が壊滅しないか心配だわ」


「お前、どんだけ俺のこと化け物だと思ってるわけ?現実的に無理だろ」


アリサは鼻で笑うように

「はっ 現実みてないのはどっちかしら?また勘違いよ」


「そうか、、、また勘違いか、、、って違うから!無理だから!」


ナタリーが間に入ってきた。

「ご主人様、私は魔力がありません。魔力の探知も不得意です。ですが、古から伝わるエルフの伝説の中にも、ご主人様と同じことが出来る方は誰一人いませんでした。誰一人です。ご主人様は一度も本気で戦っておりません。一体どれ程の力を隠してらっしゃるのか、、、、」


「いや、隠してないし、全部説明してるだろ」


「でも、探知が出来ない私にも、ご主人様からはとてつもない力を感じます」


「気のせいだ」


今度はアリサの番だ

「気のせいじゃないわよ。アンタが本気で魔法を撃てば、まえに言ったように街は灰になるわよ」


「その根拠は?」


「私の勘よ、、、いや、私の魔力の理がそう言ってる」


スキル名を出されると少しだけ信憑性が増す。少しだけ。


「アンタはこの街が好きじゃないかもしれない。ただ死んでほしくない人もいるでしょう?」


「・・・まあな」


「私はここで戦うわ。アンタと初めての思い出の家を守るために」

「私も私たちの帰る場所を守るために戦います」


こいつら汚いよね。そう言ったら俺がやるしかないのをわかってやがる

「死ぬぞ?」


「アンタは生きて。私はアンタとの短い思い出だけど、この世界のたったひとつの思い出を守る」


アリサは見たことないほど真剣な表情だ。ぐっ、また手詰まりだ


・・・・・


「わかった。お前らを守るために俺がここを守るよ」


「二言はないわね?」


「ああ、ない」


アリサとナタリーは顔を見合わせると、ニタアとした。

「やったわよ、ナタリー。これでうちの旦那様はヒーローよ! 本当うちの旦那様はチョロカワイイわ!」


「アリサ、さすがです。、、、ああ、ご主人様のかっこいい姿見てみたい。想像しただけで鼻血が出そうです!」





ドン引きだ、お前らドン引きだよ、、、、、、

この局面で、そういうことする?信じられない。

つうか、死ぬって考えないのか?


「・・・お前ら死ぬって思わないわけ?」


「あら、ドラゴンの召喚を目指してる男がオークごときに負けるなら仕方ないわよ。そこまでだったんじゃない?」


「ご主人様は負けません。またこの家で楽しい夜を過ごすために」


「大丈夫!アンタが死にそうになったら一緒に死んであげるから」

「当然私もお供します」


言い返したいけど、最後の言葉を言われちゃうと、なんも言えねーな。

仕方ない、、、、


「わかった、、、、やるよ、、、」


「さっすがー」

「さすがです。ご主人様」


「じゃ、練習よ!」

と、アリサは立って俺を立たせる


「練習ってどこでやるんだよ。あんまり魔力使うと夜に来られたら魔力ないぞ?」


「なに言ってんのよ、魔法は大丈夫よ。絶対一発だから練習いらないわ」


「は?なんでそんなに確信が?つうかそれなら、なんの練習を?」


「決まってるじゃない!かっこいい詠唱よ!アンタはこれからヒーローロードを歩くのよ!かっこいい詠唱でみんなをズバッと虜にするのよ!そしてハーレム100人よ!」

腰に両手をあてたり、もじもじしたりジェスチャーしながらそれがどんなに素晴らしいかを力説する。



「・・・お前、来栖んとこいけばよかったのに、、、、、」


「あーら、また心にもないこと言っちゃって、、、カワイイわね」


イラッ

「そんな━━━」

俺が言い返そうとすると、指一本で俺の口をふさぐ


「上手に出来たら、またたっぷり可愛がってあげるわ、、、、」

「私もたくさん尽くします!!」


はあぁぁ、反論する気失せた、、、、、



俺はそこから二時間ほど、詠唱の練習をさせられた。

まったく必要ないのにである。身ぶり手振りまでいれさせられた。

ナタリーは街に情報を拾いに行った。

ナタリーが帰ってくると、情報ではオークは明日の昼前ぐらいに到着予定だそうだ。

そして今度は、交代でアリサが出かけるようだ。

アリサは帰りは遅いかもしれないから先にナタリーと寝てろと言われた。そんなこと言われたら気になるが、また軽口を混ぜられてうやむやにされてしまった。

本当にアリサは夜帰って来なかったが、朝起きたら隣で寝ていた。なんなんだいったい。







そして、次の日





朝起きて、身支度するとアリサに昨日の夜のことを聞こうとした。すると心配なの?カワイイワネとか、私のことが大好きなのねとか、詠唱は完璧なのかとかはぐらかされた。


身支度が終わって家を出ると、アリサが案内すると言って正門まで行く。

なんだ?ここの領主の兵これだけ?200ぐらいじゃないか?守る気あるの?


正門の塔を3人であがる。兵士に止められることもない。

塔をあがると、城壁の上に出れた。

ギルドマスターがいる。

アリサがギルドマスターと話する。


「状況は?」

まるでアリサが退治するみたいだ。


「まだみえないですね」


「そう。いい?旦那様。ここからまっすぐ先の、森との境目からここまで1kmってところよ。旦那様はどこまで魔法を飛ばせる?」


「やったことないけど、あのへんぐらいかな」

森の手前を指差す。


「や、やったことないんですか?!」

ギルドマスターがビックリする。


「大丈夫よ。うちの旦那様を信じて」

「昨日も話したでしょ?なら旦那様抜きでこの状況なんとか出来るの?」

昨日の夜はギルドマスターと話してたのか。あれ?領主は?


「いえ、無理ですね、、、、、」


「じゃあ任せなさい。どのみち死ぬなら、確率の高い方にかけるわ。まあ、うちの旦那様はやりきっちゃうけど」

「領主様の軍はあれだけ?」

アリサが聞いた。


「はい、スタンピードを信じてない様子です。本当だとしても門にはこれだけ。あと1000は領主の館を守ってます」


「クズね」


俺が気になるので口を挟む。

「領主様は聡明とか言ってなかった?ギルドマスター」


「はい、そうだったんですが、、、、10年会わないうちにずいぶんと変わってしまって、、、、体も戦えないほどお太りに、、、」


「そんな前の話かよ!!まあ、いい。やるだけやるわ」



・・・

・・・・

・・・・・


「来たわね」


予定通りの地点から、オークがちらほら出てくる。

アリサはギルドマスターと話をして、歩兵を全て城壁の裏に隠して、もし残った敵が居たら、全員街を出て戦うように、支持したらしい。城壁の上には弓兵がたくさん居て、近づく敵には矢を浴びせるらしい。


「いい?ダーリン、あとのことは私がなんとかするから、アンタは本気の渾身の一撃を練習通りにしなさいよ!」


「わかったよ」



ぞろぞろとオークが見え出す。まだ1000ほどだ


「全部が見えたらアンタのタイミングで打ちなさい」


俺は詠唱したくないので、もう一回聞く


「なあ、あれ本当にやるのか?」


「当たり前でしょ!シャキッとしなさい!」


ギルドマスターが聞いてくる。

「ほ、本当に大丈夫なんでしょうか、、、?」


「ダメなら死ぬだけよ!そろそろよ!」


さっきの5倍ほどが見えている。もう森から出てきてるのはちらほらだ


「よし、いくぞ!、、、、、、、、、我は、いにしえ、、、、の、、、、やっぱムリ」

めっさくさ恥ずかしい!回りがみんな俺を見てる。

言えるか!あほちゃうか!


「なにやってんのよ!みんなしぬのよ!」

俺の尻をがつがつアリサが蹴ってくる。スカートなのに。


「パンツみえるから」


「カボチャパンツよ!早くやりなさいよ!」




ふう、、

「わかった!恥ずかしがったら敗けだよな!」

「そうよ!開き直るのよ!」

「俺も男だ!完璧にやりきるぜ!」


「な、何を言っているの、、、?」

ギルドマスターは泣きそうだ。


「いくぞ!」

両手を大きく広げ、天にかざす。そして両手に種火をだし、全てを出しきり倒れるほどの魔力を込める。

なんか心なしかキイイイイイイインと音が聞こえる。


『我こそは古の大魔導師の叡智を受け継ぎし者』

ゆっくり両手を胸の前でバスケットボールを掴む態勢に持っていく。両手に錬成の魔方陣が現れ、両手の焔がひとつになってさらに練られ、大気を揺らすほどの魔力が貯まる。


『ソドムとゴモラを滅せし浄化の炎よ、大魔道士タカフミの名において命ずる。』

バスケットボールを掴んだような手をボールを維持するように、体を右にひねりながらゆっくりと右腰の横にもっていく。例のあの態勢である。◯◯◯◯波のような。


『今こそ我の手に顕現し、我の手により全てを灰燼に帰せ』

辺りには風が吹き荒れて、大気が振動する


「ヤバイわ、想像以上よ!ギルドマスター、発射されたらすぐ都市結界をして!」

アリサがギルドマスターに叫んでいる。

ギルドマスターも目を見開き俺の手の中のものを冷や汗をかきながら見ている。

全身を弓のように力を込め、腰を落とし発射態勢に入る。

アリサとナタリーは、座り込んで風に飛ばされないようにしてる



『消えて、、なくなれえええええ!』

『クリムゾン、スフィアアアアアアアアアアアア!!!!』


両手を龍のあぎとのように勢いよく前に突き出し、手の中で真っ白まで練られ、光り輝く光球が目で追えないほど早く発射されると、全ての音が置いていかれたように一瞬静かになる。


「都市結界はつどおおおおおおおお!!!!」

ギルドマスターが後ろを指差しながら叫ぶ。


光球は一瞬で城壁から7,800m離れたオークの数千匹の軍団真ん中に着弾する。

刹那の間があった。そのあとは地獄だった。

2.300mだろうか、城壁から最長が見えないほどの太く高い火柱が立ち上がる。そのあとに轟音が響き渡る。着弾点の半径300mは形あるものは全て消え去り、そのあと2000℃を超える熱線が周囲を溶かすように燃やしていく。同時にすさまじい衝撃波が周囲を襲い、あるオークは形が崩れながら消え去り、あるオークは弾丸のような速度で吹っ飛び、全てのオークは死に絶えた。

当然街にもそれらがやってくる。

都市結界は激しく振動している、はっきり言って絶対持たない。

俺は片膝をついて頭も上げられない。

ギルドマスターは呆然としている。

ナタリーは、城壁の上の床で頭を抱えてうずくまり、目線だけは正面を見てこれから起こるだろう災害を想定して遠い目をしている。

アリサは、、、、、、


「・・・・・終わったわね、ごめんね、アンタを舐めてたわ。ごめんね、、愛してる、、、」

反応しない俺の背中を抱くようにして、全てを諦めたアリサは目に涙を浮かべていた。


すると、、、


「本当、とんでもないことをするお方ですね」


俺の目の前に何の前触れもなく現れたリザードマン女が立っている。尻尾がふりふり俺の目の前を揺れている。


「アンタ、、、誰よ、、」

アリサがそう言ったような気がしたが、それを気にせずリザードマン女、ヴィーヴルは空に飛んだ。


ぶわっと空に上昇したところで、ヴィーヴルは巨大な龍に変身した。翼は動いてないのに、宙に浮いている。

そこからそのまま俺たちの前に飛んでいく、飛びながら、

「これは凄いですね、、、、私も無傷でいられるかどうか、、、」


ヴィーヴルは龍の姿で前面の結界に突っ込んでいく。結界が大きな音をパリイイインと立てて割れたかと思うと、龍が目の前で衝撃波と熱線を防いでいる。ヴィーヴルを先頭にして、街を囲むように結界らしきものが見える。


炎と衝撃波はもう消えている。

オークも消えている。森はかなりえぐれて、剥げた木、燃えてる木、燃えてる土などが所々見える。


すると、ヴィーヴルは元にもどり、こっちに振り向き、

「あなた様はまだ死んではなりません。ご自身のお力がおわかりになったでしょう。今日は私が事態を収拾いたしました。そう何度もできないので、気をつけてくださいね」


そういうとヴィーヴルは消えた。


あたりはしーんと静まり帰っている。

城壁の下、門の辺りで誰かが「おわったぞ、、」と言った。そうすると周りがそれに続くように「おわった」「おわったよ」とかぼそぼそ言い合い、そのうち、


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


と大歓声が街に響く。


俺はまだ片膝のままでぐったりだ。

アリサは黙って俺の背中を抱いている。ナタリーも俺のところにきて、俺の頭を自分の胸で抱いてきた。

一番初めに復帰したのはギルドマスターだ。


「ありがとうございます、英雄様。残念ですが、もう隠し通すのは無理です。どうせバレることです、みなさんに紹介させていただきます」


ギルドマスターはそう言って俺が目線をギルドマスターに向けると、目が合った。

そうすると、拡声器でもつかってるかのような声で周りに叫ぶ。


「聞けええええい! エスカードの民よ!エスカードの兵よ!」


よく声が通り、回りを沈める力があるような声だ。実際しーんとなった。

アリサとナタリーはこれからどうなるか察したんだろう。むしろアリサが察したんだろう。2人でおれの肩を担ぎ、城壁の街側のふちぎりぎりに立たせて、下から見えるようにする。


「オークのスタンピードの脅威は消え去った!!! 街には微塵の被害もない!!! この襲撃による被害者も0だ!!!」


ギルドマスターはチラッとこっちを見る。

絶対にダメならここでアクションを起こすだろうと最終確認だろう。

俺は、もうどうでもいいや。疲れたからと思っていた。


「それもここにいる、かの偉大なる古の大魔道師グリンダムの叡智を受け継ぎし者!! 大魔道士タカフミの大いなる偉業による賜物である!!!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

大歓声があがる。


「さらに!! 都市の結界が崩壊する刹那!! 天界からの使者、大いなる龍を呼び出し!! 全ての民を守ったのである!!!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


「エスカードの民よ!!大魔道士を称えよ!!! 大魔道士に最上の感謝を!!! わが街エスカードの誇りをもって恩に報いるのだ!!!!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

大歓声で演説らしきものが終わった。


俺はだるい体で、

「お前の街じゃねーけどな、、、、」


ギルドマスターは

「そこは演出です、仕方ありません」

とにっこり微笑んだ。


ナタリーは

「お疲れ様でした、ご主人様。本当にかっこよかったですよ。私は偉大なご主人様に仕えて本当に幸せです」


俺はナタリーに声に出さず、笑顔だけで返答する。


アリサは

「さあ、これからどうしよっか?たぶんここにすぐにでもなだれ込んでくるわよ?」


「お前、、、あとはなんとかするとか言ってなかった?」


「ギルドマスターの演説は想定外よ、私のせいじゃないわ」


「へーへー、そうでしょうよ」

と俺がアリサに悪態をつくと、鎧を着た兵士がたくさんあがってきた。


俺は上がってきた兵士にもみくちゃにされ、胴上げ状態で街の噴水まで連れてかれる。

その間も周りでは「タッカフミ!」「タッカフミ!」「タッカフミ!」と聞こえている。

噴水を一周する辺りで、副ギルドマスターが待機してて冒険者ギルドに誘導する。副ギルドマスターはギルドの中に俺を入れると、兵士を帰した。

副ギルドマスターは、


「よくやったな」


「おっさん、よく噴水で待機してたな。助かったよ」


「ありがとう、、、、」

副ギルドマスターは頭を下げて、部下をたくさん用意して、隠れて俺を俺の家に帰す準備をしてくれた。

そして俺は家に着いた。



誰が先導するわけでもなく、その日の夜は街中あげての大宴会だった。

飲んでいない人がいないほどだ。時に笑う人、時に安堵から泣く人。みんながおもいおもいに大宴会を楽しんだ。


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