第十話 ※
目が覚めると日が上っていた。
ゴブリンキャンプファイアは、黒い固まりになっていた。
俺は街に戻るために帰り支度をする。
新しい服に着替え、米俵と醤油をしまい、かまどとベッドをつぶし、火が燃えたあと全てに浄化水道をかけて回った。
最後に、アイテムボックスから、たまりにたまったタバコの吸殻を吐き出すように地面に出す。昨日着ていてぼろぼろになった服と臭くなった靴下、トランクスもその上に置く。
そして、高温の炎を火炎放射のように出すイメージをして、不用品を焼き払う。完全に灰になるまで焼くとその上から水をかけて後始末した。
こんなに細かいことをするのは、3年前に結婚した嫁がこういうことにうるさかったからである。
嫁は25歳のくせに、変なところが婆くさかった。
そう、俺は日本で死亡当時45歳、嫁は25歳、20下だった。別にリア充ではない、なれ初めはまあいいだろう。語るほどでもない。
そんな嫁が3年も小うるさく言うので、後始末やら、ポイ捨てやらに敏感になってしまった。
「友紀、どうしてるかな、、、、俺の死はちゃんと受け入れられたかな、、、、再婚してくれればいいけど、、、、」
少し感傷に浸りながらも、頭は娼館に塗り替えられた。
最低である。
「仕方ないよな、異世界なんだから!」
俺は街に向かって歩き出した。
ここまでどのくらいの時間出来たのか覚えてないが、そんなではなかった気がする。
俺は軽く走ることにした、マラソンぐらいの速度で。だって娼館が待ってるから。
一時間ほどして、街の門が見えてきた。門の隣の小屋の前にはあの衛兵が見える。今日は並んでないようだ。
俺は無言で魔道具袋から銀貨一枚を出して、手に握る。衛兵の前まで歩くと、
「お、ハードボイルド(笑)昨日は帰っ・て・・こなか・・・・」
俺は無言で衛兵の目の前に銀貨をつき出した。
「な、なんかお前、、雰囲気だいぶ変わったな、、、」
「そうか?なにも変わってないぞ」
「なんつうか、、なんか歴戦の戦士のような、、」
「ん?」
歴戦の戦士?ああ、傷か?昨日の戦闘で軽い傷がたくさんついてるんだった。はったりが効くようになったかな。
「なんだ、気づいてないのか、ほらこっち来て顔見てみろ」
お、鏡あるんだな。まあ、窓があるんだから、鏡もあるか。俺は鏡を覗くと、
「なんだこりゃ、、、、」
歴戦の戦士どころではない、マスクメロンである。
細かい切り傷が無数に付いていて、はっきり言って気持ち悪い。体も確かにたくさん傷があったことは、あったが、、、、でも俺の顔は確認出来た。二十歳の時の俺の顔そのまんまだった。
「そのうち、治るだろ。ほれ入街税」
俺は振り向いて金を差し出すと、
「いや、昨日ギルドカードを作ったんだろ?入街税はいらない。ギルドカードを確認させてくれ」
ほう、そういうシステムか。なるほどね。
俺は金を魔道具袋にしまって、代わりにギルドカードを差し出した。
しかし、なんでギルドカードを作ったことを知ってるんだ?プライバシーもクソもないな。こりゃチートがバレたら瞬く間に広がるな。まあ、俺はもう躊躇しないが。
「うむ。確認した。昨日はどこに行ってたんだ?」
「関係ないだろ、もう通っていいんだろ?」
俺は一昨日のこいつらの仕打ちを忘れた訳じゃない。自分のせいいっぱいのドスの効いた声でそう言って、ギルドカードを奪った。
「あ、ああ、、」
俺は振り返らず門をくぐって歓楽街に向かった。後ろで呆然とこっちを見ている衛兵の気配がした。
歓楽街への道を歩いていると、恰幅のいいおっさんと、身長140無さそうな首に茶色い刺青が入った幼女が前から歩いてくる。幼女は汚れたベージュのワンピースを着て、裸足だ。歳は10~13歳ぐらいだろうか、髪は薄い明るい紫だ、藤色って感じか。顔は北欧系のような作りで目がぱっちりしてる。唇がすごく赤く、幼女なのに女を感じさせる。
その幼女が俺を見て、びっくりするような顔をし、そのあと、口を無言であわあわ動かしている。おっさんと幼女が俺とすれ違う瞬間、
「か、固茹でたまご!!!」
幼女が突然周囲に響くほどの大声で叫んだ。
俺とおっさんはびっくりして足を止めて幼女をみた。
幼女は俺を見上げる形で見つめている。すごく熱の入った何かを訴えるような目付きだ。
「アリサ、どうしましたか?」
おっさんは幼女に話しかけるが、幼女はそれに答えず、まだ俺を見つめている。
俺は、ピンときた。来たが、、、
「ま、マジか、、、」
俺は気づいた。固茹でたまご?英語でハードボイルド。こいつ地球関係か!日本じゃない組なのか!待て、その前に何故俺の職業を知っている?
こ、こいつ!鑑定もちか!!
すかさず俺も鑑定する。
【ステータス】
名前 アリサ=ローレンス 年齢 14
職業 娼婦
LV 2
STR 9
DEX 22
VIT 13
SPD 21
INT 19
MEN 20
スキル
重力魔法lv1 闇魔法lv1 魔力強化lv1
簡易鑑定 魔力の理
おいおいおい、すげーレアスキルじゃねーか。
間違いない、こいつは日本以外の転移組だな。しかし、なぜ奴隷なんだ?さらに娼婦?転移組なのに娼婦かよ、なんでだ?
気になるな、気にはなるが他人の奴隷に関わってまたムカつかされたらたまったもんじゃない。それより娼館のが大事だ。
「アリサ、どうしたのですか?この方がなにか?」
アリサと呼ばれた幼児は、口は開かないがものすごい目付きで俺を見る。なんだか、鬼気迫るというか、ここが正念場とでも言うか、、、、、、
少し気になるな。
「ああ、おっさん、ちょっとその奴隷と話してもいいか?」
「ええ、けっこうですよ。お話しください」
俺は幼女に話しかける。
「どこの国だ?」
アリサは答える
「日本よ」
「日本?名前が、、、」
「転生よ」
なるほど、転生か。日本で死んで生まれ変わったらこっちだったってことか。だから言語理解がなくても話せるのか。
職業は?
「娼婦は?」
アリサは目を見開きびっくりした顔をして、考えてから絞り出すように、
「あなた、勇者なの?」
「違う」
「でも、、、見えるのね、、、、私は元ソープ○ンド嬢よ」
それでこの職業か、かわいそうに、、、なんかシンパシーを感じる。俺と同じ苦労をしてるんだな、、、、
「それでか、、、苦労してるんだな、、、奴隷は?」
「それは話せば長いわ」
「お前なら、奴隷にならなくてもなんとか出来ただろ」
幼女はさっきよりさらにびっくりした顔をして俺の両手を両手で掴んだ。
「あなた、、、何が、、何が見えているの、、、、」
ああ、こいつ簡易鑑定か。簡易鑑定は名前と職業ぐらいしかみえないんだっけ。つうことは、こいつ自分のチート能力知らないのか。かわいそうに、、、、、
俺が黙っていると幼女は俺とおっさんを交互に何度も見た。
そして、
「わ、私を、、買って、、」
「あん?」
「ここからは私が話したほうが良さそうですね。失礼します。私は奴隷商のサムソンと申します。よろしくお願いいたします」
ああ、主人じゃなくて奴隷商か。
「ああ、よろしく」
「この子はまだ当店に来たばっかりでして、私もちょっとした伝でこの子を仕入れることになったんですが、この子は奴隷として売られていくことを嫌がりましてね。仕方なく娼館で働いて金を返すなら売らないで置いてあげることにしたんですよ。それで今娼館の面接の帰りなんです。」
「はあ、なるほどね」
「いかがですか?お客様、この子をお買い上げになりませんか?ほかに売られることを、あんなに嫌がったこの子がお客様に買ってと言うくらいです、何か感じるものがあるのでしょう。普通は奴隷からお客様に交渉するのは罰則ものなんですがね、、、どうでしょうか?」
「いや、いらない」
「そ、そんな!」
と、アリサ。
奴隷か、奴隷は欲しい。パーティー組むのも必要と感じるし、何より奴隷にするならやれる女じゃないとな。俺はロリじゃないんだ、ないんぺたんじゃ食指が動かん。
「お客様は、今娼館に向かおうとなさってたんでしょう?それはあまりおすすめできません。」
「なんでだ?」
な、なぜわかったこのおっさん、、、デキルな、、、、
「病気が危険だからです。その病気が原因で高額な薬代がかかったり、治らず死に至ることもございます。そんなリスクを背負うより、奴隷のが安全でございます。それにアリサは未通です、確実に安全でございます」
「でも、若すぎる。抱くのは無理だ」
「お客様はこの国の出身ではありませぬので?」
「違うが?」
「この国では成人は15歳です。あと1年で成人でございます。それにアリサはお客様のところに行きたがっております。成人してないからと、とやかくいいますまい。」
「お願いします、どうか、、、」
さっきまでは強気な口調だった幼女は、俺が買わないとわかったからか、低姿勢になった。
「年の問題と言うか、、、なあ、、、」
「顔がお気に召しませんで?美形な顔だと思いますが」
「顔は可愛いんだがな、、、」
むっちむちが好きなんだよ。棒みたいな体じゃ心が奮い立たない。
「体型なら、アリサはまだ成長します。良いものをたくさん食べさせれば、きっとお望みの体型になるでしょう」
折れないなこのおっさん。
「いやー金もないんだ、無理だ」
おっさんは少し考えて、
「わかりました、いかがでしょう?7日間待ちます。失礼ですが、先程のお話を聞いていましたら、お客様はただならぬ御方のようです。7日間待ちますので資金をご用意下さい。その際、当店にいらっしゃった時に、ほかの気に入った者をお買い上げになってもよろしいですし、アリサを買って頂いても結構です」
まあ、悪くない話だが幼女はいらないんだよ。
「ここで答えを出さなくて結構です。7日後に当店にお越し願えないでしょうか?勉強いたしますので」
「わかった、7日後に店には行く。金は出来るかわからんぞ?」
「かまいません、きっと大丈夫でしょう。ほらアリサ、最後にお客様に一言申しなさい。お客様は本当にお前に興味がないようだ、お代もお聞きにならないんだぞ」
アリサは俺の服の胸の部分を引っ張り、俺を中腰にさせると耳元で囁いた。
「私、元ソ○プ嬢で職業娼婦よ?絶対すんごいわよ。楽しませてあげる(はあと)」
俺は立ち上がって、
「もっと子供らしい事を言え」
「ほほ、私の店は大通りにあります。サムソン奴隷商と聞かれたらすぐわかるでしょう。では、お待ちしております」
「ああ」
「あ、それとくれぐれも娼館には行かないで下さいね。アリサが病気になってしまいますから」
「だから、ガキは買わないっての」
「ほほ、では失礼します」
俺はおっさんと幼女を見送る形になった。
くそー、娼館止められちまったよ。確かに異世界でその手の病気になったら治せないかもってのは、考えてなかったな。抗生物質がないんだろうしな。
まあ、仕方ない、我慢するか。
ならもうむちむちギャルを買うことを第一優先だな、金だ金。
とりあえず冒険者ギルドで耳を換金しよう。




