第九話 ※
評価ありがとうございました。
初投稿で、初評価をもらえてとっても嬉しかったです。
「はぁ、はぁ」
俺は走った。がむしゃらに走った。ギルドのおっさんからはじめはゴブリンが良いと言われて、ゴブリンがよく出現する場所も聞いていた。
衛兵に挨拶もせずに門をくぐって、右斜め方向の森にひたすら走った。
細かい場所はわからないはずなのに、何故か確信を持ってゴブリンの方向へ走った。
「いる・・・この先・・・」
そのまま全速力で走ると前方にゴブリンが見える。
俺はそれでも足を止めず、羞恥と怒りに任せてまだ俺に気づいてないゴブリンの頭にバールを振り下ろした。
「ギイ!」
鳴き声か断末魔かわからない声をあげて、ゴブリンは倒れた。俺はゴブリンの左耳を指の力で引きちぎった。返り血が俺を濡らす。耳を討伐証明に集めろとは、さっきギルド員に言われていた。
まったく休まずに森の奥に走った。今度は4匹いるようだ。俺は走りながら左手に種火を圧縮し、左手を自分の正面で払うかのごとく横に降り、火球を走りながら投げつけた。当たったゴブリンは、高々と炎をあげもがく。と、同時にもう一匹のゴブリンの左側に走り抜ける形で胴体を釘抜き側で払い切りする。当然切れずにゴブリンの腹に刺さる。そのまま右手に種火を作り3匹目のゴブリンの顔をわしづかむように顔を焼く。
4匹めのゴブリンは、持っていたさびついた槍を俺に刺してくる。俺はバールの釘抜き側を頭上に振り上げ、木の枝に引っかけて体を浮かせて槍をよける。浮いた態勢からゴブリンを踏みつけて、バールの棒側をゴブリンの背中におもいっきり刺した。
「バール・・・役に立つじゃねーか・・・」
4匹の耳を引きちぎりアイテムボックスに入れると、また奥に走る。
走っていると衛兵、冒険者、ギルド員、奴隷の幼女、その主人の顔が浮かぶ。
俺はなんとも言い表せない羞恥心と怒りに身を焦がす。
「う、うおおおおおおおおお!!!」
雄叫びをあげて目の前に見えてきた無数のゴブリンに突っ込んでいく。
そこからはもう、あまり覚えていない。
無我夢中だった。八つ当たりだったと思う。
がむしゃらに生活魔法を使い、バールを振り回した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
気づいたらゴブリンの集落のような場所に立っていた。立っているのは俺一人だった。
廻りをみると、無数のゴブリンの死体が横たわっていた。俺は返り血で頭から全身濡れていた。
浄化水道を1分ほど自分にかけ続けると、体のあちこちがしみる。返り血を落としたはずなのに、赤い染みが浮き出てくる。俺も無傷じゃいられなかったようだ。
廻りの死体を鑑定してみると、普通のゴブリンだけじゃない、シャーマン、メイジ、アーチャー、ソードマン、ジェネラルなど色んなゴブリンが死んでいた。キングなんてのもいる。
アイテムボックスからタバコを取り出し、咥えて火をつける。タバコを咥えながら、落ちている錆びた剣で耳を切ってアイテムボックスにいれていく。
静かになった森の中で、耳を切る生々しい音と種火で燃やされて、まだ燃え残っているものの燃える音だけが森に響く。
タバコを2本ほどすう間に100以上の耳が集まった。もっとゴブリンの死体はあったが耳を取るのに飽きた。
俺は可能な限りゴブリンの死体を集め、山にして魔力を強く込めた種火で燃やす。
ゴブリンの山は高々と炎をあげながら燃えている。
またタバコに火をつけて、そこにあった切り株に腰かけた。
もう、色々考えるのは止めよう。
ばかくさい。
せっかくの異世界なのに、もったいない。
自分の思うように、心のままに生きよう。
異世界なのに、日本の倫理やルールを基準にしても意味がない。
他人が俺を見てどう思うのかもどうでもいい。笑われたっていいじゃねーか。
チートがバレたら大変?違う。バレてめんどくさいことになったら、違う国に行けばいい。人間の国に居場所がなくなったら、いっそ魔族の国にでもいくか?ああ、あそこは亀裂で渡れないんだったか。じゃあもう盗賊にでもなってもいいな。チートのせいでまっとうな世界で命が狙われるなら、盗賊になって命が狙われても同じ事じゃん!盗賊王にでもなるか!
「盗賊王に!おれはな━━━」
いかん、この台詞はいかん。そもそも盗賊目指す必要はねぇ。
自由の代償が盗賊なら仕方ないってだけだ。
はあ、まあ、吹っ切れたな。
もう、なんでもいいな。
まずは娼館だな。
しかし、吹っ切れたら清々しい、晴れ渡る気分だ!
今まで、あれこれと右往左往してたのが馬鹿馬鹿しい!これでいいんだ!
辺りを見回すとすっかり日は沈み夜になっている。暗闇の森の中でゴブリンの山積みがめらめらと勢いよく燃えている。ゴブリンキャンプファイアーだ。
「いや、最低だな、、、、この光景、、、、」
気分が落ち着いたら、ずぶ濡れの体が気持ち悪い。
俺は廻りの木の枝を適当に折って、簡単な物干し台を作る。
次に浄化と言う名の水道で体と服を石鹸でよく洗い、タオルで体をふく。ついでにタオルも乾かす。また切り株に座って一服する。
そこで、俺は魔法の使いすぎのめまいが来てないことに気づいた。鑑定してみると、
【ステータス】
名前 タカフミ=コンドー 年齢 20
職業 ハードボイルド
LV 14
STR 315
DEX 332
VIT 296
SPD 280
INT 403
MEN 387
スキル
言語理解
杖術lv2
召喚魔法lv2 生活魔法 魔力強化lv4 魔力操作lv2
鑑定 アイテムボックス 詠唱破棄 並列魔法
成長促進 気配探知lv2 魔力探知lv1
????????????
おお!やべーー!
むっちゃくちゃ強くなってる!レベルは11上がったわ。
つうか、レベル14で勇者より少し低いステータスってやべーな。これなら、勇者を超えちゃうんじゃないか?
これが、職業ハードボイルドの効果だな!・・・
いや、絶対そうだ・・・・、そう思うことにする!
知らないスキルもなんでかわからんが覚えてるので、鑑定でチェックしてみよう。
【杖術lv2】
杖の扱いが上手くなる
まんまやんけ。ああ、バールを鑑定した時たしか杖って出てたわ。それでか。ならもっと早く覚えてても良いもんだけどな。
あ、いや、まともな戦闘はこれが初めてか。ウサギを数匹殺っただけだもんな。まあ、次。
【魔力操作lv2】
魔力を操作し、事象に干渉する力が行いやすくなる。
んーなんか小難しく書いてあるけど、要は種火でファイアボールを作るのが上手くなったってことかな。これこそもっと早く覚えててもおかしくないんだけどな。次次。
【並列魔法】
魔力の発現を複数同時に行使出来る。
ああ、うる覚えだが、なんか両手に種火出してそれぞれぶつけた記憶あるわ。確かに今まで1個ずつだったな。
俺は右手に種火を、左手に浄化を行おうとする。
魔力の操作にちょっと慣れたつもりでいたが、体の中の違和感がはんぱない。一回止めて両手に種火を起こそうとするとすんなり両手から炎がでた。出た炎もでかくしようと意識もしてないのに1mくらいとでかい。
ああ、属性を合わせれば楽なんだな。
もっかい火水やってみよう。
ゆっくりイメージを、、、左手に浄化の魔力を作り上げて、、、そのまま、そのまま、、右手に種火を、、、、よし。
「出ろ!、、、、おお!出た!」
右手から炎が高々と燃え上がり、左手からはマーライオンのように水が吹き出している。
「うん、まあ、並列魔法はこれでいいな、次だな。」
【気配探知lv2】
生物の気配を察知出来る。探知出来る範囲はレベルに依存しない。
じゃあレベルの意味なんですか?!
これは読んで字のごとくだと思ってたが、鑑定したら逆にわからないとかなんなの?!
ゴブリンがいるという確信みたいなのがあったから、大体はわかるわ。もういいわ、次!
【魔力探知lv1】
生物、無生物の魔力が探知出来る。探知出来る範囲はレベルに依存しない。
無生物も出来るのか。ふむ、探知を意識して自分を見てみるとなんとなく魔力量がわかるな。なんとなくだが今の魔力残量は半分ってとこか?
無生物か・・・ああ、バール。
バールを手にとってみると、うっすらバールの芯に光の筋があるような感覚がある。
「これだな。しかし、バールの魔力ちっさ!」
あと思ったのが探知が意識しないと使えないことだ。
こういうのは普通パッシブなんじゃないか?意識しないと使えないなら、不意討ちにはまったく意味がないじゃんか。
腹減ったな。飯が食いたいが何も持ってない。
アイテムボックスに残っていたウサギを思いだし、出してみた。
「なんかグロくて食べる気がしない、、、、」
ウサギは、バールしかなくてメッタ刺しにしたやつなのでぐちゃぐちゃだ。俺はウサギを両足を片手で掴んで、ゴブリンキャンプファイアーに投げ入れた。
「米食うかな、、、、でも炊くにも鍋がな、、、、」
とりあえず生活魔法のかまどでかまどを作る。
適当に周囲から薪を広い、着火する。
「あ、火の形が変わるなら、土もか?」
俺はかまど魔法で、土鍋をイメージする。あっさりできた。
そのままかまどの上に置いた。
米俵を召喚する。俵に穴をあけて土鍋に入れようかなと考えてる間に土鍋は真っ二つに割れていた。
「ああ、土鍋ってセトモノだから焼き入れして作るもんだな、形だけ作ったから、もろかったのか。」
魔力でなんとかならないものかと、もう一度土鍋を作る。今度は固く、かたーくするイメージで作る。土を圧縮するイメージだ。
「出来た、、、か?」
浄化水道で土鍋を洗ってみた。問題なさそうだ、同様にふたを作り、浄化で洗う。
俵の上部をバールでこじ開け、両手ですくって土鍋に2杯入れる。米を洗って水分量を調節して、かまどにのせる。
そう、俺は料理が出来るのだ。日本では42歳まで独身だった。
料理が好きなわけじゃないが、一通りは出来る。
火加減を調節して、ご飯をむらす。その間に醤油を召喚する。
「あ、箸がないな。」
俺はかまど魔法で、崩れないようにかたーい箸をイメージして作った。それを手にとって力を入れる。
「やっぱ、、、、、、俺、、、、、、馬鹿なのかな、、、、、」
俺は割り箸をイメージしてしまった。かたーい土の割り箸、割れるわけがない。
もう一度普通の箸をイメージして固く作り、浄化でごしごし洗う。
滅入る気持ちを払拭して、土鍋のふたを熱さに我慢しながら開けると、全てを忘れられるほどのいい香りが立ち上がる。
俺は醤油を適量かけ、飯をすくいあげ口に運ぶ
「う、うめぇ、、」
最高だった。かまどの前にヤンキー座りで座り、一心不乱に飯を掻き込む。浄化水道で水を飲む。
「あっつあぁ!」
俺は後ろに倒れた。かまどの火を消してなかったので放射熱で熱かったのだ。
馬鹿じゃない、馬鹿じゃないと思いつつも米の魅力のまえにそんなものも掻き消えた。
一服をして、落ち着いてると、眠気が襲ってくる。
まだゴブリンキャンプファイアは弱々しい炎をあげている。もうそろそろ消えそうだ。
今から街まで帰る気にはなれなかったので、かまど魔法で硬い簡易ベッドを作り、乾かしていた服を掛け布団代わりにかけ、横になった。森の中、しかもゴブリンの集落だからそこそこ危険だろうが、眠くてどうでもよかった。ステータス的に襲われても死なんだろと安易に考え眠りについた。眠さの限界だったから。
俺が寝たあとは、俺を遠巻きに見守るように生き残ったゴブリンがいた。囲まれていた。
だが、俺が朝起きるまで近寄ってくることはなかった。
自分たちの帰る集落なのに、仲間は死体になっていて、絶対に手を出してはならないほどの強烈な存在感をかもしだしてる人間が居座ってるのだ。
ゴブリンたちは襲いたい衝動よりも、関わったら逃れられない死のイメージに怯え遠巻きに俺を監視するだけだった。
朝、俺が目が覚める頃にはゴブリンたちは、ちりじりに去っていた。




