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盗賊

彼方:何も起こらないで、退屈していたけど、こういうイベントはまだ先がよかったなあ。

前の馬車に乗り出発する。昨日までと同じく何事もなく平和だったが、国境付近、森の中の道を通っているといきなり馬車が激しく揺れ、止まる。


頭を壁にぶつけて少し痛い。何があったんだ? 外の様子を見ようとすると、盗賊だ! 馬車を守れ! と護衛の叫ぶ声が聞こえてきた。異世界に来て初めての敵が魔物ではなく、人間とはねえ。


外の様子が気になるので、注意しながら幌の隙間から様子を窺う。馬車の左側は、見える範囲で馬車を囲むように盗賊が十六人と馬車を背にした護衛が三人、一人は血を流し、膝をついている。すぐに戦えるような傷ではないみたいだ。


右側は、盗賊が十二人、冒険者が三人、剣と剣をぶつけ合い戦っている。こちらはまだ無傷だ。そうすると、今襲ってきている盗賊は二十八人いて、護衛が六人、内一人が負傷。


敵はこちらの四倍か、多いな。戦況は良さそうなには見えない。このままだと護衛が全滅する可能性もある。だって、こいつらEランクだし。Eランクなんてまだまだ駆け出し冒険者だ。


護衛が全滅すれば、次は馬車の乗客が殺される。それは困る。まだこんなところで死にたくはない。乗客の中に戦闘ができる人がいないか周りを見るが無理だな。全員体を丸めて縮こまっている。


誰か助けに来てくれないかなあ、なんて思うが、そんな都合のいいことは起こらない。マジで、俺がどうにかしないといけないのかなあ? 


俺が何もしなくても護衛だけで盗賊を退治できる可能性もあるが、もしダメだったときは、高い確率で死ぬだろう。今の俺は客だ。別に戦う必要はない。護衛が盗賊を退治できれば、でも退治できるかどうかわからない。


改めて現状を考えて、護衛に任せるのはダメだ。他人に命を託すなど冗談でない! 


そうと決まれば、生きるために戦うしかない。戦えば死ぬかもしれないと思うと恐くて少し震えるが、戦わないで死ぬなんて選択肢はない。


今から初の実戦だ。殺し合いだ。何でこんなことになったんだと嘆いてもしょうがない。遅かれ早かれこういうことが起きただろう。今回はそれが早かっただけだ。


恐いのは、初めての殺し合いに緊張しているだけだ。こういう時は、考え方を変えよう。


盗賊のことを恐ろしい敵だと思うのが、まず間違いなのではないか? 


盗賊など所詮、群れて自分達より弱い相手としか戦えない雑魚の集まりにすぎない。


装備を見ても、武器は手入れをちゃんとしてなさそうだし、防具もつけていない、こちらの方が良いものを装備している。


元々、恐怖で震えて体が動かないなんてことはなかったので、震えはすぐに消えた。武者震いだったかもしれないけど。相手が雑魚だからといって、油断はしない。


致命傷でさえなければ、ヒールで回復できるので、憶さず、冷静に考え、敵を倒す。


覚悟を決め、脇差を抜き、マントに隠れるように持つ。まずは、負傷者を治す。馬車から出て負傷している護衛の元に走る。


「回復する。ヒール」

一回では完治しなかったので、もう一度使うと護衛の傷が治る。

「あんたは……いや、感謝する」

「俺も戦う。だから、あいつらを倒すぞ」

「ああ、任せてくれ」


とはいえ、怪我人を一人治した程度で戦況がひっくり返るなんて甘いことはない。


盗賊は俺の登場に多少驚いたようだが、一人加わった程度で数の有利は揺らがないのを思い出したのか余裕を取り戻す。

 

さて、どうしたものか。良い策など思いつきはしない。一人ずつ倒して、盗賊の数を減らしていくしかない。策などないので、正面からやり合うしかない。幸い馬車を背にしているので、前だけに注意すればいい。


盗賊に囲まれているので、護衛の冒険者は、守らなければならない範囲が広い。一箇所に全員が集まり連携して行動することができず、馬車を守るように離れて戦っている。


俺は、馬車の乗客なんてどうでもいいが、護衛が乗客が襲われるのに気をとられて、やられても困る。それに、乗客が襲われるということは、自分たちの後ろの馬車に盗賊がいることになる。後ろも警戒しないといけなくなる。


後ろに下がり、回復に専念することも考えたが、それはない。やはり、自分の力でやるのが一番だ。


一人あたり、四人倒せば終わる。それぐらいは護衛のやつらにやってもらわないと困る。


つまり、目の前の四人の盗賊を自分だけで相手にしなくてはいけない。このくらいできないと、この先生きていけないだろう。



彼方:弱いゴブリンとかを一匹ずつ相手にして、戦闘に慣れていく予定だったが、盗賊四人とか。

   うまくいかないなあ。

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