国外へ 恐ろしい魔物の話
彼方:最速で行く。途中の町とか知らん。
外から鳴り響く鐘の音に目を覚ます。いつの間にか寝ていたみたいだ。いつもとは違う部屋を見て、一気に意識が覚醒し、飛び起きる。外を見るとそこには昨日見た町並みがある。まだ日が出たばかりで薄暗い。良かった夢ではなかった。本当に良かった。
出る準備をして、食堂に行く。メニューは昨日と同じだった。朝からステーキってどうなんだと思うが、冒険者をやっていくのには、食べられる時に食べて体力をつけないといけないので全部食った。流石にお替りはしなかった。
宿を出て東門に行く。東門前で乗合馬車を探し、お金を払い乗る。乗合馬車には兵士が護衛につくので道中少しは安心である。アルトロイ国を出て隣国まで乗合馬車を三回くらい乗り継げば着く。周辺国の情報を聞いて、色々考えた結果、一番近い東のマドルフス国に決めた。
さっさと国内から出たいので、寄り道はしないで、最短ルートで行く。
馬車の旅は、最初は快適とはちょっと言えなかったが、結構揺れて、お尻が痛かった。ヒールを使ったら痛みは無くなった。しばらくすると揺れにも慣れてきた。
道中暇なので他の客と話し情報を集める。まだこの世界について知らない事ばかりなので、何気ない会話でも得るものはある。
外は、草原がどこまでも続いている。外の景色を見て最初は楽しかったが、同じような景色が続くので飽きた。
森の中の道を通ることもあった。獣の鳴き声が聞こえる。たまに、ぎゃああああとか、ぐわああああなど叫び声みたいなのが聞こえる。護衛に聞いてみると、人の叫び声を真似する魔物がいるそうだ。なぜ、そんなことをするようになったかは不明だが、叫び声を聞いて駆けつけた冒険者が襲われることが多い。
カメレオンみたいなドラゴンの魔物で、名前はヘルバリオン。周囲の景色と同化して姿を隠し獲物が近づいて来たら、舌で捕まえバクリと食べてしまう。Bランクの魔物で強い。
唯一の救いは移動速度が遅いことだ。一度攻撃範囲から出れば追ってくることはない。だが、逃げらず死ぬことのほうが多い。出会わないことを切に願う。
この魔物、賢いのか馬鹿なのかわからないな。叫び声なんて上げたら、普通近寄ろうとはしない。行くのは、正義感の強い奴とか、実力がある奴ぐらいだろう。俺は勿論、叫び声が聞こえても行かない。行くわけがない。だって、相手はBランクの魔物だ。勝てるわけがない。行ったところで、無駄死にするだけだ。
この魔物のせいで、叫び声が聞こえても、助けに行く冒険者が減ったそうだ。すごく迷惑な魔物だな。もし危機的状況に陥っても、そう都合よく助けにくる人はいないということだ。
最近になって、わかったことで、叫び声を上げても獲物が来ないことを理解したかはわからないが、助けを求める冒険者とかの声を真似する個体も出てきて、被害が増えたらしい。
やっぱ、こいつ賢いわ。
一つ目の乗合馬車は魔物とかの襲撃を受けることもなく平和に、町に昼頃着いた。長い時間馬車に乗ったままだったので、軽く体を解し、町の様子を見るのもそこそこに次の乗合馬車を探す。
昼ご飯をまだ食べてないので、道中の屋台で串焼きやサンドイッチを買い、歩きながら食べる。二つ目の乗合馬車はちょうど出発する前だったので、お金を払いそのまま乗る。
何事も起こらないで、夕方に次の町に着いた。宿を探し、明日乗る乗合馬車を探し、ご飯を食べ、寝た。
鐘の音で目覚め、準備をして、朝ご飯を食べ、非常食として、干し肉と固いパンを買った。今日の馬車で国境を越え、マドルフス国に入る。やっとこの国から出られるな。
役立たずの勇者をわざわざ国外まで追ってくることもないだろう。まず、監視されているかどうかもわからないが。例え、王様が約束を守り、俺に干渉しなくても、勇者であるという事で何か面倒事に巻き込まれるかもしれない。だから、俺のことを知る人がいない国に行くのがいい。
乗合馬車のところに着く。今回は二台の馬車で行くみたいだ。護衛は今までみたいに兵士ではなかった。国境を越えるのに護衛がこの国の兵士では、そりゃあダメだろうしな。
護衛は依頼を受けた六人のEランク冒険者だ。Eランク冒険者なんかで大丈夫なのかと思うが、今さら文句を言ったところで意味がない。
何も起こらなければいいがな。
ヘルバリオン:誰かっ! 誰でもいいから助けてくれ!
彼方: ……なんて、恐ろしい奴だ




