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ばれてた

「今日はタナトスに行くぞ」

朝、アリサとツバキに告げる。気まずい空気もなく、仲良くしている。仲直りしたようで良かった。もし、まだ仲直りしてなかったらどうしようと少し心配していたが杞憂に終わった。


「うん、いつでもいいよ」

「私も準備はできてます……行く前に、一つ聞いておきたいことことがあるのですが?」

「ん? いいぞ。何でも聞いてくれ」

「それで、教会の執行官がカナタの事を勇者と言っていましたが、どういう事ですか?」

「それ、私も気になっていたんだ! どうことなの?」

「…………早く行かないと日が暮れるし、さっさと行くぞ!」


部屋を出るべく扉の取手を握ったところで、アリサとツバキに両肩をガシッと掴まれる。

「そんなに急がなくても、まだ日が昇ったばかりですよ? 話をじっくり聞くだけの時間はありますよ」

「逃げられると思っているの?」


ちっ、誤魔化せなかったか。何で聞いてんだよ。マリアがちょろっと一回言っただけじゃん! そこは聞き逃していろよ! 

聞かれたことは、もうどうにもできないのでしょうがない。ここは、適当に誤魔化して……


「嘘はいけないですよ? カ・ナ・タ!」

「私だって秘密にしていた事を知られたんだから、カナタの秘密を知らないと不公平よ!」

心を読んできただと!? 怖いんだけど! ……まあ、仕方ない。別にアリサとツバキに秘密にしている必要はないしな。


「わかった! わかったから手を放してくれ」

降参だというように両手を上げる。それを見て二人とも手を放す。


「あまり表沙汰にしたいことじゃないから、黙っていてくれよ、いいな?」

「わかりました。この事は誰にも言いません」

「うん、わかった」

二人が頷いたのを確認して、話しだす。


「俺はこの世界に召喚された勇者なんだよ、以上」

「……え? それだけ?」

あまりに短い説明に驚くアリサ。


「あ? 他に言う事なんてないぞ」

「いや、色々あるでしょ! 何で勇者が冒険者やっているのかとか」

「いやー、俺、勇者とか柄じゃないし、自分のしたいように好き勝手やるのが一番合ってるからな」

後ろ頭を掻きながら、そんな自分勝手な理由で勇者をやめたカナタに二人とも呆れる。


「カナタの適当な性格は置いといて、勇者なのに弱いですよね?」

「あー、それね。俺もそこは納得いかないんだよなあ。勇者として召喚されたはずなのに弱いんだから。まあ、今となってはどうにもならないし、いいけどな」


最初はすごく落ち込んだけど、ないものをいつまでも悔やんでもしょうがない。なかったからこそ、今があるので後悔はしていない。いや、本当はちょっとある。だって強かったら死ぬような目に何度も会ってないと思うし、もっと楽できたはずだ。でも、例え強かったとしても、もっと強い敵が出て来て、死にそうになっている姿が簡単に想像できるんだが……やっぱり今が一番だと思っておこう。


「まだ聞きたいことがありますけど、まあいいでしょう」

「秘密を話してくれて、私は嬉しかったよ」

「はいはい、そうですか……じゃあ冒険に行くぞ」



準備はできていたのですぐにサンフィアスを出て、一時間くらい歩いたら、タナトスに着いた。堅牢だったろう外壁は、今や所々ひび割れ、大穴が開きどこからでも侵入できる。


適当な穴から中に入る。外壁があれだけボロボロだったのだ、外壁より脆い建造物が残っているわけなく、建造物の原型を留めているものほとんどなく、瓦礫の山があちこちにあるだけだ。聞いた話によると地上には魔物がほとんどいないらしいので、そこそこ安全である。


「廃墟って聞いていたけど、それ以上ね」

「確かに、ほとんど何も残っていませんね」

「建物が崩れているから、反対側の外壁まで見えるな」


本当、何があったらこんなになるんだ? 一番有力な説は魔物の大群に襲われて滅びたらしいけど、それなら、建物まで壊れている理由の説明がつかない気がする。案外地震でも起こったんじゃないかと思うが、ここが滅んだ理由なんて俺たちには関係ないので、どうでもいいな。


何もない地上には用がないので、地下への入口へ向かう。地下迷宮へ続く穴は十数か所あり、どこから入っても大した違いはないので、一番近い入口に向かっている。


穴は直径5 mはあるだろう大きなものだ。準備をして、カナタから穴へと飛び込む。

華麗に着地と言いたかったが、着地した瞬間に衝撃が足から頭まで突き抜ける。


足がああああああ――っ!

ブレスによる身体能力強化があっても、痛いんだけど!? 意外と深かった! 見た感じいけると思ったんだけど無理だった。これなら遺産を使えば良かった。


痛む足に耐えて、その場で佇んでいると、ツバキを抱えたアリサが軽々と着地して、何事もないようにツバキを下ろす。


くっ、これが種族の差か。吸血種の身体能力マジで高いな。羨ましいわ!

恨めしそうにアリサを見ていると、アリサが声をかけてきた。


「そんなに見つめてきてどうかしたの?」

「……いや、何でもない。さっさと行くぞ」

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