武具屋?
彼方:冒険者ギルドに初めて行ったら、だいだいチンピラに絡まれる。
武器もないし、ここは必要なことを済ませたら、ダッシュで逃げよう。
城を出て、石造りの街並みや青、緑、紫等地球にない髪の色をしている人、剣や鎧等武具を身に付けている人を見て、改めて異世界に来たのだと実感する。
感慨にひたってばかりもいられないので、行動を始める。
まずは、冒険者ギルドに行き、冒険者登録をする。冒険者ギルドの場所は通りを歩いている人に聞いたのでわかっている。
冒険者ギルドは三階建ての石造りの立派な建物だ。扉を開け中に入る。視線が集まるが無視をして、受付に向かう。窓口は三つあり内二つは女性が受付でそこは並んでいる。やはり若く綺麗な女性の受付が良いのかね。わざわざ並ぶのも面倒なので、今ちょうど空いたおっさんが受付をしているとこに向かう。
「依頼か?それとも冒険者登録か?」
「冒険者登録だ」
「登録費が二万コモだ」
金貨一枚を払う。おっさんがお金を受け取り、お釣りとして銀貨八十枚を受け取る。
「ここに名前、スキル、魔法等紙に書いているとおりに書いてくれ。書きたくないところは書かなくていい、名前だけは書けよ」
紙とペンを受け取り、名前と魔法のところにヒールとだけ書いて出す。
「少し待っていろ」
おっさんが紙を持ち奥に引っ込む。すぐに戻って来て銀色の小さなプレートを持ってくる。
「冒険者証だ。失くさないように注意しろよ。再発行に二万コモ掛かるからな」
冒険者証を受け取る。穴が開いているので紐を通して首に掛けれそうだ。
冒険者についておっさんの説明を纏めると、ランクはS~Fの七段階。受けられる依頼は自分のランクの一つ上まで、緊急依頼は例外で誰でも受けられる。
お金を預けることができ、お金はどこのギルドでも引き出すことができる。これは良いシステムである。いつも重い硬貨をジャラジャラ持たなくてもいいな。さっそく金貨十五枚を預けた。他にも色々と説明があったが省略する。だいだいは冒険者として常識ある振る舞いをすれば問題ないとのことである。
おっさんにおすすめの武具屋と宿屋を聞いたので、何か面倒事が起こる前にさっさとギルドを出る。
武具屋までの地図をもらったので見ながら行く。地図が大雑把なので着くまでに少し時間がかかった。教えてもらったとおりの外観の武具屋というか倉庫にしか見えないものに着いた。看板もないので、言われないとこれが武具屋とはわからない。ここは商売をする気があるのか?
とりあえず中に入る。高い棚が並び、床には箱が乱雑に置かれていて、棚や箱に武具、武具以外の物も適当に入れられている。とりあえず入れてみたという感じでゴチャゴチャとしている。倉庫一杯に物が詰まっている。足元にも物が落ちている、足の踏み場がないというほどではない。
武具には値札が付けられているので、値段がわからないということはなさそうだ。
おっさん曰くこの武具屋は色々な種類の武具がたくさんあり、あそこに行けば必要な物はだいだいあり、たまに掘り出し物もあり宝探しみたいで楽しいそうだ。
流石にこの量を全部見るのは時間がかかりすぎる、何日かかるかわからない。大雑把に良さそうな物がないか適当に探すことにする。
適当に物色して思ったがほんとに色々ある。どう使うのかもわからない物もあるし、手入れされてなさそうで錆びていたり、刃毀れしていたり、抜き身の剣がそのままあり、指を切って痛い。早速ヒールを使ってみることにする。ヒールと唱えるだけで傷が跡形もなく治っていた。魔法ってすげえな。
今度は注意して物色する。なかなか良さげな物が見つからない。半分くらいガラクタな感じがする。
おっ、良さそうな長さの刀を見つけた。ちゃんと鞘もついている。刃の状態を確認しないと、刀身がボロボロじゃ意味ないからな。
抜いてみると、綺麗な刀身が現れた。うん、武器のことなんて知らないが良さそうだ。刃渡りが五十㎝くらいの脇差かなあ。いや、脇差ってサブの武器だから、メインで使う場合は違うのか?まあ、面倒だから脇差でいいや。値段は十万コモ、金貨一枚か。
ここまで来る前にいくつか武具屋に寄ったので、ある程度高いか低いかわかる。少し高い気もするが気に入ったのでこれにする。
脇差の近くにあった小刀は見た感じ、脇差と似ている。同じ人が作ったのかもしれない。この小刀も買うことにする。
他にも色々と探した結果、脇差と小刀、飛道具も欲しかったので投げナイフ、防具は動きを邪魔しない程度に胸当てと籠手。
道具を入れる頑丈なリュック、いつまでも学ランのままでは目立つので服をいくつか、かっこいいのでマント一つ、色は深緑、森で目立たなそうだ。後、必要そうな物をいくつか買った。
全部で二十一万コモだったが、店主の爺さんに交渉して二十万コモにしてもらった。二十万コモで装備や必要な物を揃えられたので良かった。武具屋のはずなのになんでもあったので、ここだけで買い物が済んだ。
さっそく、買った服に着替え、装備を身に付ける。店内には爺さんしかいないから気にすることはなく、準備を整える。
簡素なシャツとズボン、深緑のマント、背中にリュック、防具に胸当てと籠手、左腰には脇差と小刀、腰の後ろに小さなポーチ、中には投げナイフなどが入っている。
鏡がないので全身を見ることができないが、ざっと見た感じ、なかなか様になっていると思う。こうやって武具を身に付けてみると気分が高揚してくる。今すぐにでも武器を振るいたい。
そのために、魔物を倒しに行きたいが、外を見るともう空が赤く染まり日が沈みそうだ。今から行ったら夜になる。異世界生活一日目から夜の森に入って死にたくないので、残念だが諦める。
彼方:宝にはたいてい罠が仕掛けられている。
よく見ると所々に血の跡がある。今まで宝探しに挑戦してきた人の証だ。
中には宝を諦めて帰った人、宝を見つけ無事に生還した人もいるだろう。
俺が探した後にも血の跡が残り……ヒールの扱いに慣れた。