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元凶

「まずは、何か頼みましょうか。私は甘い物にしようかしら」

マリアがメニューを見て何にしようか悩んでいる。初めてお茶に誘われたけど、というか、この世界にお茶あるのか? まあ、そんなことはどうでもいいので、カナタもメニューを見る。異世界言語習得のスキルで字が読めても、意味まで理解できるわけではないので、どんな料理なのか全くわからない。カナタが困っていると、それを察したのかマリアが声をかけてくる。


「すみません、カナタ様はまだこの世界に不慣れでしたね。どういったものがいいですか?」

さっきちょっと食べたから、そこまでお腹が減っているわけではないし、軽いものが良いかな。

「うーん、俺も甘い物にしようかな。何か良いものないか?」

「カナタ様も甘い物が好きですか! それでは……これがいいですね!」

マリアは決めると店員を呼び、勝手に二人分注文してしまう。……まあ、いいけどね。変なものが出てきたら、文句言うけど。


「では、デザートが来るまで何を話しましょうか……?」

「先に聞きたいことがあるんだが、勇者についてどれだけ知っているんだ」

「……それは、私個人が知っている事ですか、それとも、教会が知っていることですか?」

「できることなら、両方聞きたい」

「そうですね、喋っても問題ないとこだけにしますか……まず、勇者とは、勇者召喚によって召喚された異世界人の事を言います。勇者召喚は今回のも併せて、教会の記録では、三回行われています。千年前と百年前、そして今回ですね。千年前は、堕神を討つために勇者が召喚されました。百年前は、魔人族との戦争ですね、三種族が力を合わせた連合軍によって戦争に勝利しました。そして、今回は今までと比べて、大した事はありません」

神ねぇ。異世界だから神がいても不思議ではないけど、堕ちた神とはいえ、神を討つなんて昔の勇者はすごかったんだなあ。


「……ん? 大したことない? 何、今回の召喚された原因を知っているのか?」

「はい、カナタ様を召喚した、あの愚かな国よりは知っていますよ」

あれ? 今さりげに国を侮辱したけどいいのか。

「じゃあ、世界の危機とかいうのが何なのか知っているのか?」

「フフっ、世界の危機なんて言っているのですか。随分と大げさに言いますね……勿論、知っていますよ。あの国の王の持っている予知のスキルなんかより、確かなものが教会にはありますから……実は、魔人族との戦争がまた起こるかもしれないのです」

「ふーん、それって大丈夫なのか。一度勝っているからといって、次勝てるかはわからないだろ」

「大丈夫ですよ。もし、魔人族と戦争することになっても勝ちますよ。ですが、こちらも相応の被害を被るでしょうが。前回の戦争で負けた魔人族は住んでいた土地を失い追われ、荒れ果てた未開拓の地に移住しました。そこで、百年間暮らしている魔人族は力を取り戻すどころか、過酷な環境により徐々にその数を減らしています。その内、私達三種族に反抗する力も無くなるので、態々こちらから攻めることはしないで、放置しています」

百年前から、発展している三種族と衰退している魔人族では勝負は目に見えているというわけか。


続きを聞こうと思ったら、頼んでいたデザートが来た。見た目は、パンケーキだ。三枚を重ねて積んであり、何かどっしり、ずっしりしている。シロップがかかっているのではなく、シロップに漬けたみたいだ。フォークで突つくと、シロップがじわっと溢れ出てくる。これは、普通の人なら見ただけでも、胸焼けがしそうだ。

向かいではマリアが目を輝かせて、ナイフで切り分け、美味しそうに尻尾を左右に振って食べている。食べるのに夢中で、話の続きは食べ終わってからになりそうだ。

カナタもナイフとフォークを駆使して、垂れるシロップに注意してパンケーキを口に運ぶ。とても柔らかく、シロップが口中に広がる。これは、美味しいなあ。甘党なので、甘すぎる味に文句は無く、満足できる。二人そろって、無言でパンケーキを平らげる。


「ふぅー、食った食った。美味かった」

「そうですね。とても美味しかったです。満足です」

二人ともしばらく余韻に浸る。

「あー、それで……何だっけ……魔人族との戦争か。このまま衰退していく魔人族は、戦う力が無くなる前に一か八か戦争を仕掛け、豊かな大地を取り戻したいってことか」

「いえ、違いますよ。そういうつもりがないわけではないでしょうが……これは、内密にしてほしいのですが、三種族と魔人族が戦争をするよう嗾けている者がいるみたいです」

「……マジか。俺が召喚された原因がそいつってことか。何が目的で戦争なんてさせようとしているんだろうな」

「残念ながら、嗾けている者が何者か、目的もまだわかっていないのです。唯一わかっている事は灰色の人型魔物らしきものが関わっているらしいです。教会ではアッシュと呼んでいます。他の執行官が倒して遺体を持ち帰ろうとしたところ、遺体が灰となって消えてしまったので、見つけたら生け捕りにするよう命を受けています」

へー……灰色の人型魔物? 何か覚えがあるような気がする……ああ! もしかして、前会ったあの化物か! 

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