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教会の執行官

人気のない路地裏まで来て、修道服の女を掴んでいた手を離し、振り向く。

「で、あんたはどこの誰なんだ」

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は、教会の執行官、《罪の十字架》マリアベルといいます。私の事はマリアと親しみを込めて呼んでください。勇者様」

ふざけた雰囲気を消して、真面目な顔になる。

教会の執行官か……知らないなあ。教会ってのは、確かこの世界、最大の組織だ。人間族、獣人族、妖精族の繁栄と幸福のために尽力し、魔人族を敵視している。どこの町にも教会が建ててあって、時報の鐘を鳴らしている。その程度しか知らないが、一般人が知っているのはそんなもんだろう。


「……で、何で俺が勇者ってわかったんだ」

「それは、看破のスキルを持っているので、勇者様が異世界言語習得のスキルを持っているのが分かりました。異世界言語習得のスキルを持っているのは勇者様だけなので、すぐにわかりました」

まさか、そんなことで勇者だとわかるとは思っていなかった。看破、おそらく、相手が持っているスキルと魔法を知ることができるスキルだ。どこかで聞いたことがあるスキルだが、思い出せないし今はいい。つーか、俺が勇者だとわかっていて声をかけてきたということは、面倒な予感しかしない。嫌だなー、本当に嫌だなーと思うが聞かないわけにもいかない。


「それで、その教会の執行官が、わざわざ追ってきてまで俺に何の用なんだ? 」

「……そうですね。偶然、町中で勇者様を見つけたので、声をかけただけで、特に用というほどの事はありません。追ったのは勇者様が突然走って逃げたからです」

……はあ!? お前、用もないのに勇者様なんて呼んで、俺に迷惑かけたわけか! もし、俺が勇者だとばれて騒ぎになって、何か不利益被ったら責任取れるのか!? マジ勘弁しろよ。自分が勇者なんて一度も名乗ったことないし、勇者の自覚なんてこれっぽちも持ってないのに。


「……そうか。なら、俺が勇者だということは黙っていてくれ。じゃあ、そういうことで」

用件だけ告げてさっさと去ろうとするカナタをマリアベルは止める。

「ちょ、ちょっと待ってください! 勇者様、折角会ったんですから、お茶でもしませんか?」

「え? 嫌だよ。それじゃ」

「……お茶に付き合ってくれないと言うなら、黙ってませんよ、勇者様のこと。それでもいいんですか?」

軽く脅迫されて、カナタの足が止まる。ちっ、勢いでこの場を離れようとしたが、無理だったか。笑顔で脅してくるんじゃねぇよ、怖えよ。走って逃げたところで、どうせ追いつかれるだろうし、渋々振り向く。


「……わかったよ。お前の言う通り、付き合ってやるよ。後言っとくけど、俺の事を勇者と呼ぶな」

「ありがとうございます。私、勇者様のお名前を知らないので教えてくれませんか……後私の事はマリアと呼んでください」

わかったから、二度も言うな、笑顔が怖いんだよ。

「カナタだ」

「それでは、カナタ様行きましょうか」

笑顔でカナタの先を歩いて行くマリアの後ろをついていく。マリアの後姿を見て気づいたが、頭に獣耳が生えているのだから、左右に振られている黄色い尻尾があるのも当然だ。獣人族か、身体能力が高いっていうし、俺の全力疾走に、呼吸を全然乱すこともなく追いついたのも納得かな。それとも、獣人族とか関係なくマリアがすごいだけかもしれない。何か厄介なのに見つかったものだ。人混みの中で見つかるなんて本当に運がないなあ。


マリアに連行されて、路地裏から表通りに出てきた。マリアは周りを見て、決めたのかあるカフェを指差す。

「カナタ様、あそこにしましょう」

どうせ、カナタに拒否権はないだろうし、もう正直どこでもいいので頷く。

通りにせり出したテラス席に座る。なるべくなら、あまり目立たないように店内が良かった。マリアは背負っている自分より大きな十字架を下して座る。これだよ、どこの世界に十字架背負って歩く奴がいるんだよ。いや、目の前にいるんだけどさ。目立ってしょうがねぇよ! もうこの時点で帰りたくなってきた。


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