服装
食事を持って戻ってきたツバキに食べさせてあげると言われたが、恥ずかしいので断って自分で食べた。さっきの事は表向きは気にしていないように見える。アリサは用事があるようなので出かけている。
ボスとの戦いでの作戦について、ツバキには言っていなかったことが不満らしい。作戦は、下手をしたら死んだふりではなく、本当に死んでしまうため、最初から実行するつもりがあったわけではない。
アリサにはそれとなく言っていたので、カナタの意図を汲み取って、ボスの注意を引いてくれた。敵を騙すにはまず味方からというから、ツバキにはカナタが死んだと思ってもらうために黙っていたのだ。
さすがに今日ずっとベットで大人しくするなんて退屈なのだが、さっき、立ちくらみをしたように体調が万全ではないので素直に寝ることにする。
次の日、日が昇る前に目覚め、ベットから起き上がり、体の調子を確かめる。どこにも問題はないので、ツバキが買ってきた服に着替えて隣のツバキが泊まっている部屋に行く。ボロボロになって着れなくなった服はツバキが処分してくれた。
短い間に二回も服が駄目になって困る。服についてアリサやツバキに聞いてみるかな。
隣の部屋のドアノブを握り開けようとしたが、鍵がかかっているのか開かなかった。だ、誰ですか!? と中から慌てたツバキの声が聞こえてくるので、名乗ると、ちょっと待ってくださいと言って、何かバタバタと騒がしい音が聞こえて少しすると扉が開いてツバキが顔を出す。
「早いですね。体調は大丈夫ですか?」
慌てて着替えたのか、少し乱れた黒のワンピースだけで、フリルの付いた白いエプロンは着けていない。
「体調は万全だ。まだ寝ていたんなら悪かったな」
「いえ、先程起きて、ちょうど着替えていたところです」
もし鍵がかかっていなかったら、着替えを見ることができたのに、残念だ。何を考えているんだと思うが、これも精神的に余裕があるからかなあ。
「ツバキは服ってどこで買っているんだ? 服が駄目になる度に違う服を探すのが面倒だから、同じ服を何着か欲しいんだが」
「メイド服専門のお店で買っていますが、私ではカナタの希望に沿えそうもありません。アリサに聞いてみた方がいいと思いますよ」
「わかった、アリサに聞いてみるよ。……そういえば、今まで聞いていなかったけど、何でメイド服着ているんだ?」
「それは、趣味です。冒険者としては適切な格好ではないかもしれませんが、一応このメイド服は戦闘用なので大丈夫です」
メイド服を見せるようにその場で一回転する。ロングスカートがふわりと揺れる。本当に大丈夫かなと思うが、初めて会った時走れていたし大丈夫か。というか、戦闘用ってなんだ。何でメイド服にそんなものがあるんだよ。
アリサの所に行き、服について聞いてみた。
「それなら、私が着ているの服はどう?」
アリサの着ている服は、青を基調にした軍服みたいな服で、下はスカートになっている。正直軍服ってかっこいいと思う。
「男にスカートを履けとか、酷いな。誰得だよ」
「そんなこと言ってないでしょ! イモータルシリーズはどうかって聞いているの」
「ん? イモータルシリーズ? それが服の名前か。服の事は全然詳しくないが、シリーズっていうことは色々種類があるってことか。かっこいいし、いいな。その店はどこにあるんだ?」
イモータルって確か、不死者、死すべき運命じゃないとか意味あったよな。験担ぎかな?
「興味があるのなら、一緒に行きましょ」
言うや否やアリサは部屋を出て歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、こんなに早く行って店は開いているのか」
慌ててアリサの後を追いながら聞く。
「うん? もう日も昇っているし、開いているわよ」
当然の事を聞かれて、首を傾げながら答える。
この世界では朝が早いことが当たり前だということに、まだ慣れていないので勘違いしていた。
アリサとカナタ、二人でイモータルシリーズが売ってある服屋に行く。服屋は表通りに面していて、二階建ての大きい建物だ。ちょっと高そうな店だな。
中に入りると、色とりどりな服が飾られている。適当な服の値段を見ると、一万コモ超えている。古着屋で買ったときは上下合わせて千コモだった。イモータルシリーズがある一角まで来た。
デザインはだいだい同で、色は、黒、白、茶、緑、青など色々とある。うん、かっこいい良い服だ。値段の方も高いけど。コートもあるがここはマントにしておこう。色は、黒にしよう。
上着とズボン、インナー、マントを試着してみることにした。軍服って堅いイメージがあったが、意外と丈夫で柔軟だ。軽く動いてみるが動きを阻害されることはない。鏡で全身を見て、似合っていていいな。よし、買おう。値段は全部合わせて、十万コモと高かった。そのまま着ていくことにした。これで、服の問題はなくなった。




