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平凡な能力 別れ

彼方:ヒール、それは最強の魔法。唱えるだけで相手は死ぬ


   ……だったらいいなあ。

「……」


幻覚が見える、目をこすってもう一回見るが変わらない。

マジか、あまりのショボさに言葉が出てこない。

嘘だろ、こんなの冗談だろ!? 嘘だと言ってくれ!


そうだ、この板壊れているんじゃねえの、じゃないとこんなのありえない。

何でスキル、異世界言語習得しかないんだよ!後、何で俺だけ収納空間のスキルないんだよ!

何で魔法一つしか覚えてないんだよ!しかも、ヒールって回復魔法だよな? ヒールが問題なのではない。ヒールしかないのが問題だ。はっきり言って雑魚じゃないか。実はヒールは最強の魔法なんてことはありえないよなあ。


「あっはっはっは! マジでうけるな。役立たずじゃん」

うるせぇ。金髪てめぇは黙ってろよ!

「相川君、笑うのは失礼だよ。それに役立たずなんて言いすぎだ」

「おいおい、これ見て役立たず以外何があるんだよ」

「あまり武藤君のこと悪く言ったら駄目だよ」

「へいへい、わかったよ」


「あ、あの、武藤君元気出して。……その……私にできることなら、何でも力になるから!」

「ああ、ありがとな。来栖」



一縷の望みにかけて、ヒールについて聞いてみたところ、やはりヒールは回復魔法でそれなりに有用な魔法だということがわかっただけであった。


いい加減に現実逃避をやめて、今の自分の能力を認めて、これからこの異世界でどう生きていくか考えることにする。


ヒールについて、これから怪我をすることも多いだろうし、回復アイテムを買うのにもお金がいるし、回復魔法はタダで怪我を治すことができるから、そう考えると結構いいかもしれない。

魔法は使うのは簡単で、集中して魔法名を唱えるだけで発動する。しかし、怪我などをして痛みで集中できないと魔法が使えないこともあるので、練習してヒールを使いこなせるようにしないといけない。


異世界言語習得は、聞いたこともない言語や見たこともない文字なのに、不思議と何って言っているかわかるし喋ることもでき、文字の読み書きもできる。このスキルすげえなと素直に思う。これがなかったら結構やばいので、このスキルがあっただけ良かったと思うべきか。


まず目先の問題として勇者としては雑魚である自分の扱いがどうなるか。これはこの国の人に任せると碌な事にならなそうなのと、自分の境遇を他人に勝手に決められるのが嫌なので、自分から要望を出すことにした。


勇者達がいる前で言ったので、ここで断れば勇者達の心象が悪くなるので、俺の願いを無下にすることもできない。さすがに無茶な願いだったら断るだろうが、俺の要求は二つだ。


一つ目は、この世界で生きていくために、一年間余裕で暮していけるお金として三百万コモ(金貨三十枚)、大金だが国ならそれくらい出せるだろうと思ったからだ。


二つ目は、俺に干渉をしないこと。


二つ目の要求が素直に通るとは思わないが、表面上は了承するだろうが、裏で監視を付けることくらいしそうだし。まあ、言わないよりは言っておいた方が本当に放っておいてくれるかもしれないからなあ。

多少渋られたが、要求が通った。


まあ勇者として力の無い俺の価値など他の勇者たちへの人質的な扱いか、その価値がないなら珍しいモルモットか、用済みとして殺されるか、そんな感じだろう。冗談ではない。人に自分の生き死にを握られるなど御免被る。なので、要求が通ったのは本当に良かった。



出ていくのを柊に止められた。

「待ってくれ。武藤君、僕たちと一緒にいないか? 僕はその方がいいと思うけど」

「やめとくよ。どうせ力のない俺じゃ、何の役にも立たないからな」

「役に立つかどうかは関係ない。一緒にいた方が武藤君のためにもなるから」


戦いになれば強いお前らは大丈夫だろうが、弱い俺は死んでしまうし、お前らの気分次第で俺の待遇が決まるのは嫌だからだ。柊は正義感が強いし、俺を見捨てることはないだろうが、個人でできることには限界がある。それに、ずっと頼るわけにもいかない。


さっさと出ていきたいので、召喚されたその日のうちにお金を受け取り、城を出ていこうと出口に向かっていたら、また止められた。


「ま、待って!」

走って来たみたいで、額にうっすらと汗が浮かび、息が少し上がっている。

「ん? どうした? 来栖」

「えっと……あの、……その……」

言葉が出てこないようだ。

「まずは、落ち着けよ」

「う、うん」

呼吸を整え、少しは落ち着いたみたいだ。

「武藤君、やっぱり、考え直さない?」

「いや」

「あぅ、……で、でも、こんな知らないとこでどうやって生きていくの? きっと外は危険がいっぱいだよ。だから、……私……たちと一緒にいよう」

かわいい女の子に懇願されたら、思わず頷きかけるが、駄目だ。

「悪いな。もう、決めたことなんだ。それに外がわからないことばかりで、危険なのはわかっている。けど、ここにいても安全ってわけでもないしな」

「……そ、それなら、私が武藤君のことを守るから! だから!」

大人しい来栖がここまで言うのに驚いた。

「ありがとな。気持ちは嬉しいよ。でも、守られてばかりってのも、男として情けないしな。すまん」

来栖は俯いてしまう。

「それじゃあ、俺は行くよ。来栖、またな」

「うん、またね」


振り返ることなく、俺は城を出た。


彼方:うーん、来栖の申し出を断ったのは勿体無かったな

   今さら後悔しても遅いが

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