勧誘と調べもの
声をかけるまでが勇気いるな。
やっべ、緊張してきた。心臓が早鐘を打っている。
女の子と話すことなんてあまりなかったからなあ。話したことあるのは来栖だけだしな。しかも、相手は見たことがないほどの美少女だ。別に来栖が美少女じゃないわけではないが。
こういう時は、一旦、深呼吸をして落ち着こう。
第一印象は大事だからな。第一印象でだいだい決まるといっても過言ではない。
覚悟を決めろ。俺ならできる。圧倒的な実力差のある相手にも立ち向かえたんだ。
なら、女の子に話しかけることなど、造作もないはずだ。
よし! 行くか。
彼女に向かって歩いていく。
「や、やあ。ちょっといいかな?」
「何か用?」
「お、俺とパーティーを組まないか?」
「……あなた、私のこと知らないの?」
「確かパーティーが二回全滅したんだっけ?」
「二回じゃなく、三回よ」
「俺はそんなこと、気にしないよ」
「私と組めば死ぬかもしれないのよ」
「大丈夫だ。俺は死なない」
「何を根拠にそんなこと言っているの?」
「俺が自分を信じているからだよ」
「そんなの、何の根拠にもならないわ」
呆れられながら言われた。
やっぱ、無理か。でもまだ諦めない。ここは、強引に押していくか。
「君はパーティーを組むことで相手が死ぬのが嫌なのか?」
「それは……そうよ。私とパーティーを組んだせいで、相手が死ぬのは嫌に決まっているじゃない」
ちょっとイラッとしてくる。
「君のせいで、俺が死ぬと思っているなら、それは思い上がりだ!
馬鹿にするなよ! 俺が死ぬのは単に俺が弱かっただけで、君は全く関係ない。
……だから、俺と組もう」
やってしまったと思うがもう遅い。これは終わった。
「……わかった。あなたとパーティーを組むわ」
「……え? マジで?」
「ええ、本当よ。私はアリサ。これからよろしく」
よっしゃあー! 何か知らんがパーティーを組めた!
「ああ、よろしく。俺はカナタだ」
「それで、これからどうするの?」
「そうだな。今日はもう遅いし、特にやることはないかな」
「そう。じゃあ、明日は?」
「明日は簡単な討伐依頼を受けよう」
新しい武器の試し斬りもしたいしな。
「わかったわ。それじゃあ、明日の朝にギルドでね」
「ああ」
そう言ってアリサはギルドを出ていった。
アリサの態度は素っ気ないが、まあ、最初はあんなもんだろう。
これから一緒に冒険していく内に、仲良くなればいい。
さて、どうするか。宿屋に帰って寝るには早いし、町を適当に散策するのもいいけど。
そういえば、昨日遭遇した怪物について調べてなかった。
一応、ギルド職員に聞いてみたが、知らなかった。
それなら、自分で調べてみるか。
ギルドには魔物とかの資料があり、冒険者なら誰でも閲覧することができる。
二階にある資料室に行き、Bランク以上の魔物の資料を見る。あの怪物はスピアマンティスより強かったからな。
パラパラと資料を流し見るが、それらしいものは見つからなかった。
ついでに、何かの役に立つだろうから、Cランク以下の魔物の情報もざっと見ておく。
新種の魔物という可能性もあるが、何か違う感じがする。やはり、あの怪物は魔物ではないのだろうか?
魔物ではないのなら、その他の生物ということになる。
この世界には、知性ある四つの種族がいる。
≪人間族≫ 身体能力、魔法適正ともに、並程度。この世界で最も数が多い。
≪獣人族≫ 身体能力が高く、魔法適正が低い。犬や猫、狐などの耳や尻尾を生やしている。
≪妖精族≫ 身体能力は並、魔法適正が高い。森妖精種と山妖精種の二種がいる。
森妖精種は、耳が長く、森に棲んでいる。全種族中最高の魔法適正を持っている。
山妖精種は、筋骨隆々で短身の体。鍛冶の腕に優れている。
≪魔人族≫ 身体能力、魔法適正ともに高く、この世界で最も数が少ない。
悪魔種、吸血種、鬼人種など、いくつかの種がいるが詳しいことはわかっていない。
中には既に絶滅している種もいる。
あの怪物である可能性としては、魔人族が一番高いと思うが、魔人族についてわかっていることが少なすぎるので、何とも言えない。
ここで、調べていてもわからない。
凝り固まった体をほぐす。窓から外を見ると、すっかり陽は落ち、もう夜だ。
長い間、調べものをしていたみたいだ。
その後は、宿屋に帰り、すぐに寝た。
さらりと種族の紹介でした




