二度あることは何度もある
これはもう笑うしかない
安心して、その場に座り込みたいが、まだ駄目だ。
町に辿り着くまでは、気を抜いてはいけない。
とはいえ、さすがに次は無理だ。
この場ですることをしたら、離れて少し休もう。
やることと言ったら一つしかない。戦利品の回収だ。
死にそうになりながらも、倒したのに魔物の素材を回収しないわけにはいかない。
鎌切の槍を甲殻の隙間に刃を入れ切り離した。
槍は思いのほか軽い。長いので、手で持つしかない。
他にも甲殻をいくつか剥ぎ取る。
次は大狼の大きな牙を二本剥ぎ取り、そこらに転がっている狼十匹の牙も回収する。
こういう時に収納空間のスキルがあればいいのにな。あったら死体ごと全部持っていけるのに。
冒険者ギルドで、討伐依頼がある魔物だったら、討伐した証拠を出せば、討伐報酬がもらえるかもしれない。たとえ、もらえなかったとしても、素材は買い取ってくれる。
いつの間にか、無くなっていた脇差は遠くに鎌切の頭と一緒に落ちていたので、回収した。
刃にひびが入っていた。これは大丈夫なのかね?
この場で、やることは終わったので、道なりに町へと出発する。
十分くらい歩いただろう。
疲れきった体を休めるべく、近くの木に背を預けて座る。
はぁー。もう本当に疲れた。
体を休めると、体中にのしかかっていた重しが落ちていくようだ。
このまま寝てしまいたい。寝たらたぶん起きられないだろうが。
そういえば、干し肉とパンがあったな。リュックから取り出して、食べる。
味はそこそこだが、体が少し満たされる。
食べ終えて、しばらく、そのまま休む。
体力もだいぶ回復したので、立ち上り、また歩き出そうとしたら、茂みから狼が五匹出てきた。
ふつふつと体の中から何かが沸き上がってくる。
「ふっ、ふはははははは!……ふざけんじゃねえ!
てめぇら、本当なんなの? 俺に恨みでもあるのか!」
槍を手放し、脇差を抜き放って、狼たちへと歩いていく。
「ああ、いいぜ。やってやるよ。
てめぇら全員、ぶち殺してやる!」
脇差を振りかぶり、力任せに狼の脳天をかち割る。
脇差が真ん中から折れて、先端が飛んでいく。
だが、気にすることなく、折れた脇差で次の獲物を斬る。
狼たちは俺の鬼気迫る様子に怖れたか、逃げてしまう。
追いかけるのが面倒なので、狼たちを見逃すことにする。
まだ、息のある狼に止めをさし、牙を剥ぎ取り、飛んでいった脇差の先端と槍を回収する。
怒りに身を任せて戦っていたので、狼が退かなかったら、やばかったかもしれない。
はぁー、疲れた。早く町に着かないかなあ。
槍を肩に担ぎ、歩き始める。
その後は、今までのことが嘘のように、何事も起きなかった。
何も起きないことの方が多いので、こんな何度も襲われるのは、すごく運が悪い。
結果的には生き残り、勝つことができたので運が良かったとも言える。
陽が落ちる前に、町の壁が見えたときは、思わず、体から力が抜け落ちてしまいそうになった。
しかし、町の中に入るまでは安心できない。
最後の最後で油断して死ぬとか、かっこ悪過ぎる。もし、そんなことがあったら、死んでも死にきれない。
最後まで警戒を緩めることなく、やっと町に辿り着いた。
門を潜り抜け、町の中に入った。疲れて、さっさと寝たいので、宿屋を探す。
表通りを宿屋を探しながら歩いていて、気になったことがあった。
何故か知らんが注目を集めている。
もしかして、この槍が目立っているのかと思ったが、冒険者が槍を持っていても何ら不思議はない。
服装はこの世界で買ったものだし、似たような格好の人を何回か見た。
おかしな格好をしてないよなと思いながら、服装を確かめる。
……なるほど。そういうことか。
服やマントが、切り裂かれ、赤黒い色に染まり、腹には大穴が開いている。
こんなボロボロの姿をしていたら、そりゃあ目立つ。
気づいたところで何もできないので、気にしないことにして、宿屋を探す。
宿屋を見つけ部屋をとり、装備を外し、ベッドに飛び込み、疲労からすぐに眠りについた。
ZZZZZZ




