日常の終わり そして始まり
主人公:これから俺の……いや、俺たちか? どっちだろう?
まあ、とにかく物語が始まる。
放課後の図書室、人気がなく、静かなで穏やかな空間。
人気がないから無音というわけではなく、外からは部活をしている音がほどよく聞こえている。
ここで、小説を読むのが俺の日常である。
小説は良い、つまらない毎日同じことの繰り返しのような退屈な日常、取り立てて何も起きない日々。それとは違い、小説を読むことは、非日常の世界、退屈とは縁遠い、刺激に満ちた世界の中に入ることができる。
わざわざ、放課後の学校に残ってまで読書をしないで、家に帰ってから読めばいいと思うかもしれないが、家では静かすぎて、小説の世界に入り込めない。
ほどよい音を奏でる放課後の学校は小説を読むのに適していると思う。
今日もそういう事で学校に残って読書をしている。
ふと、いつもとは違う音がするのに気づく。廊下から話し声がする。それがだんだんと近づいてきている。普段人が来ることはあまりない、来たとしても、二、三人。それも静かに読書をするか本を借りてすぐ帰るか。
こんな騒がしい連中が来ることは滅多にない。読書の邪魔をされて、すぐに読書に戻る気分でないのと少し気になったので、扉の方を見ていると、扉を開いて四人の生徒が入ってくる。
男子女子二人ずつ、男子一人と女子二人に見覚えがある。というか同じクラスである。クラスでも目立つ中心的な人物達である。名前は男子の方は柊、女子の方は……何だっけ、何度か聞いたことはあるけど、思い出せない。ぶっちゃけ、他人にあまり興味がないので覚えていない。後の二人は、一人は知っている女子だ。友達と言えるほど親しいわけではない。今も目が合った瞬間に視線をそらされてしまう。嫌われてはないと思う。たまに向こうから話しかけてくることがあるくらいの知り合いだ。もう一人の男子は誰だか知らない、クラスメイトのこともわからないのに他のクラスの奴なんて知るわけがない。
あいつらは席に着くとノートや教科書等を取り出した。聞こえてきた会話でわかったのは、どうやら勉強会でもするらしい。
そういえば、再来週テストだったけ。こんなに早くからテスト勉強とはよくやるねぇ。俺には真似できねぇわ、テスト勉強といえば一夜漬けだからなあ。赤点さえとらなければいいしな。
テスト勉強するのはいいんだけど、正直言って、別の場所でやってくれと思う。生徒なのだから図書室を利用するのに文句は言えないが、クラスメイトの女子と知らない男子が騒がしい。もう少し静かにやってくれませんかねぇ。もうね、はっきり言って邪魔なんだよね、目障り、この場合だと耳障りかな?図書室では静かにしようって教わらなかったのか?読書に集中出来ないじゃないか!
はぁー、しょうがないな。家に帰って続きを読むか。
小説を鞄に丁寧にしまい、席を立ち、出口に向かって歩く。あいつらは出口の近くの机にいるので傍を通らないといけないが、気にしないでそのまま歩いていく。
あいつらの傍を通った時、いきなり床が光った。
下には見たこともない文字と模様。
光をどんどん輝きを増し、目を開けていられない。地面が無くなって、どこまでも落ちていきそうな感覚に襲われる。
主人公:くっ、目くらましか!? 敵か!? 敵なのか! 次は落とし穴かよ!