うちのギルドは前(株)です。 ②
「では、自己紹介も済んだところで諸君らの今後についての話をしよう。」
ヒゲこと、ヒルゲール部長は改めて㈱ターナーズ・ギルドについての説明を始めた。
「まず、当社には3つの部門が存在する。営業部・企画部・事務部の3部門だ。そして、知っての通り諸君らは営業部での採用と相成ったわけだ。」
いえ…初めて知りました。俺、営業職だったんですね…。
「営業部での主な業務内容は、新規開拓!この一点に尽きる。」
ヒゲの言説が熱を帯びる。言っていることはごもっとも、まさにそれは営業部の活動だった。
次の一言までは…。
「新規開拓…すなわち、モンスターの巣食う未踏破ダンジョンの攻略である!」
俺の淡い期待をヒゲは一言で粉砕する。
「ダンジョンの主を撃破し、所有権を獲得するのだ!」
とんでもないところに来てしまった…。思わず頭を抱えそうになる。
「どうしたカンザキ!!ブラッドデーモンに出くわしたかのような顔をしているぞ!」
「い、いえ。大丈夫です。」
ヒゲも思わず心配になるような顔をしていたらしい。というか、何だよブラッドデーモンって…。
「何か気になる事があるなら言ってみろ。」
促され、俺はおずおずと手を挙げる。
「では、あの…質問が。」
「なんだね。」
「危険な目に遭ってまでダンジョンを獲得して、ど、どうするんですか。」
それは、俺の正直な疑問だった。しばしの静寂…。
「呪文の事以外は興味がない質か…まあいい。説明してやろう。」
ヒゲはボヤキながらも俺に解説をしてくれた。
「今、この大陸では各地にギルドと呼ばれる組織が点在しているのは知っているな。」
「あ…はい。」
正直、よく分からなかったが頷いておく。
「我々も含めて、ギルドの目的というのはダンジョン攻略にある。主を倒し手に入れたダンジョンの数…それこそがギルドの格を表しており、その数によって覇を競い合っているのだ。」
バーンと机を叩きつけるヒゲ。熱入りすぎだろ…。
「そして、保有するダンジョンの数に応じて国からは補助金が支給される。」
なるほど、多くのダンジョンをクリアする程に名実共に力のあるギルドとなるわけだ。だが、そうなると金を出す国の目的が読めない。
「あ、あの…国は何を目的にしているのでしょうか。」
ヒゲ部長はふむ、と一息置いてから俺の疑問に回答する。
「国は各地のギルドを競わせることで戦力を増強し、この世界の何処かに眠る魔王を倒すことを目指している、と言われている。」
魔王…ベタだな。
「また、獲得したダンジョンは所有権を持つギルドが管理を一任される。」
「それで…どうなるんですか…?」
「様々な活用方法があるが、当社では何かしらの形で一般市民に開放することで収益を上げている。まぁ…専らそれは…企画部の業務内容だがな。」
「は…はぁ。」
「つまりは、我々が場所を獲得し企画部がその運営を行う。事務部は両部門の社員が働きやすいようにサポートや各種処理を行う、という構造な訳だ。」
「うまいこと出来てるんですね。」
そこだけ聞くとまともだ…。
「…我々は非営利団体ではないのだ!利益を上げてこその企業なのだと心せよ!」
ヒゲはそう締めくくる。
俺は文字通りのソルジャー採用により、企業戦士へと転身しつつあった。
小分けにして投稿していこうかと思います。