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技師団物語~ソラハツナグ~  作者: 国立司
1章 聖者の神託
9/11

2話 その4「新世界と時の賢者」

4 新世界と時の賢者


「ここはどこだ…」


 目が覚めると、ソラはみたことのない場所にいた。つい先ほどまで昔の思い出をみていた気がしたが、それとも現実とも異なる。どこまでも続くのどかな平原、心地よい風、あまりにも平和すぎる世界がそこにはあった。その場所にテーブルとイスがあり、一人の男がイスに腰かけてこちらの様子をみていた。


「目が覚めたかい、ようこそ新世界へ」


「あなたは?」


「君の名前は?」


 笑顔で質問し返された。


「芹沢空といいます」


「そうか、セリザワソラっていうのか……もしかしてキミの父親の名前は芹沢陸三か」


「父さんを知っているのですか?」


「知っているとも。ここは君のお父さんが生み出してしまった世界だ」


「それはいったいどういう意味ですか?」


「キミはまだ知るべきことじゃない。だってキミはこの世界の住人ではないのだから……」


「言っている意味がよく分からないのですが…」


「ここは死者の世界……とでもいえばいいのかな。キミは死んでいない、来れるはずのない人間だ。何よりも真実を知れば、隠蔽のために『やつ』はキミを殺し、私のようにここに拘束されるか、この世界の肥やしにされるだろう。とにかくもう帰りなさい」


 父さんの生み出した死者の世界?「やつ」に殺される?

 突然いろいろなことを言われて困惑している。何より帰り方を知らない。


「どうやって帰れば……」


「自分の心に意識を集中してごらん。きっと帰るための糸口があるはずだ……たぶん……」


「何で自信なさげなんですか!」


「生きながらこの世界に来た前例がいないんだ。まあ、キミがそれだけイレギュラーだってことさ。だから、ひとまず試してごらん」


 帰れなかったらどうしよう……そう思いつつも言われた通り意識を集中してみる。

 すると誰かの呼び声が聞こえる。この声は……アリスとシャリーの声だ。

 その声を追いかけるように意識を集中させると、体が吸い込まれるようにこの世界から遠ざけられた。


「ありがとうございます。おかげで帰れそうです。ところであなたのお名前は?」


 現実に戻る中で僕は尋ねる。


「……時の賢者とでも名乗らせてもらおうかな」


 賢者は続けて言った。


「ソラ、キミは面白い力を持っている。その力を使いこなせるようになったとき、そしてどうしても自分じゃどうしようもないと思ったとき、私を思い出せ。1度くらいならキミの助けになるだろうから」


 賢者の言葉を聞いて、僕は現実へと帰っていった。


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「やれやれ芹沢博士も残酷だな……」


 賢者は彼を見送ってから呟いた。本来この世界に生きているものは来れない。それなのに彼はここに来ることができた。来ることのできる力を持っていた。

 世界の真実を知る賢者にはそのことがとても偶然とは思えなかった。


「『やつ』はソラのことを把握しているのだろうか?」


 そのことも疑問だったが、「やつ」のことだから把握したうえで放置しているのだろう。本当に悪趣味なやつだ。


「ソラ、キミはどんな結末を迎えるのだろう……」


 私のように真実に辿り着いてそこで終わるのか、それとも「やつ」の魔の手を逃れてその先へ進めるのか……後者になれることを願うよ。そして……


「キミは世界の破滅を止められるのかな?」

 


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