2話 その3「ソラの特異能力」
3 ソラの特異能力
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記憶……家族との記憶。
「お父さん、その子誰?」
「新しい家族だよ。お前と同じく両親に捨てられていたんだ」
「君、名前は?」
「アリス……」
「僕はソラ。よろしくね」
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記憶……アリスとの記憶。
「ソラはどうしてそんなに私に優しくしてくれるの?」
「だって家族だから。アリスも父さんも血のつながりはなくても大切な家族だから」
「家族……」
「僕は今の家族を、つながりを大切にしたいんだ。二度と……」
「私も大切にしたい。だからソラの傍にいて危険からあなたを守る」
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記憶……かけがえのない人との記憶。
「アリス、父さんが……父さんが……」
「うん……大丈夫、私はいるよ……」
「私はソラを見捨てない、ソラが死ぬ道を選ばないように傍にいて支えるから……」
アリスごめん……僕は……
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ルシファーは意識を失ったソラをみて後悔していた。
「やりすぎた……これを知られたら法王様に怒られる……」
法王は優しい平和主義者だ。このことを知ったら絶対に怒るだろう。彼の怪我をすこし治療したいと考えた。しかし、ルシファーは治癒のスキルを持っていない。応急処置に使える技具も持っていない。逃げ出した他の技師たちが援軍を呼んでいるだろう。町に顔を出すわけにもいかない。町に行けば国家戦力級の技師と鉢合わせるリスクが上がるだけだ。
「まあ、意識を失っているといっても途中でやめたし死ぬことはない怪我だ。このまま退散するとしよう」
考えたところで今更過ぎることだ。怪我はいずれ来るであろう国技団の技師に任せよう。
そうして立ち去ろうとしたとき、倒れている彼に異変が起きていることに気が付いた。
「へぇ……」
彼の怪我が治り始めている。意識はない、スキルを自らの意思で使える状態ではない。そもそも彼はスキルが使えないと自分で言っていた。それなのに怪我が治り始めている。
「面白い子だな」
本人に自覚がないだけで特異なスキルがあるのか。興味深いな……気に入ったよ。
「たしか名前は……」
「ソラ!」
彼の仲間たちが増援を呼んで戻ってきた。その中にはフレイムもいる。
「そう、ソラだ。覚えておこう。あとこれ以上ここに残っても面倒だし、帰りますか」
フレイムとはまだ戦うべきじゃない。そのときじゃない。
ルシファーは立ち去りながら倒れているソラに向かって言った。
「また……サミットで会おう」