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技師団物語~ソラハツナグ~  作者: 国立司
1章 聖者の神託
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2話 その5「目覚めた場所は」

5 目覚めた場所は……


「ソラ、よかった。目を覚まして。」


「先輩、あんな無茶二度としないでください!」


「ここは……」


 目が覚めると見知った女の子二人が涙目でこちらの顔を覗き込んでいた。ルシファーに一方的にやられてから現実で自分に何があったかは知らないが、どうやら無事だったようだ。


「医務室よ。私のスキルで治癒してここに運ばれたの」


アリスは優秀な治癒スキルの使い手だ。かなりコテンパンにされたはずだが、完治していた。意識が途切れる瞬間からは考えられないくらい体が軽い。頬をたたく。痛覚も……あるみたいだ。


「ありがとう、アリス。シャリーも心配かけてごめん」


 心配してくれていた二人に笑顔で感謝と謝罪を述べた。

 二人には心配をかけた。あの世界からも二人の声が聞こえたほどだ。

 そういえば……


「ライとジェームズは?」


「ライ先輩とジェームズ先輩は起きたことを技師団上層部に報告に行ってくれています。やっぱりあの技師さん超危険人物だったみたいで……」


「はは……あとで二人にもお礼を言っとかないとな」


 面倒ごとを二人に任せることになってしまったみたいだ。特にライはあの性格だ。普段ならまずやらないだろう。今度、あいつの好物のシント料理を奢るとしよう。ジェームズには……父さんの研究データでも見せるか。以前から興味津々だったし。

そんなことを考えていると、医務室の扉が開いて、フレイムさんが笑いながら入ってきた。


「はっはっは、ルシファー相手に無事とはやるじゃないか、ソラ」


「フレイムさん……」


「話はライとジェームズから聞いた。あいつ、聖教技師団を隠れ蓑にしていたか。こりゃ面倒なことになった」


「手も足も出なかったです。スキル抜きの心力法での勝負だったのに……です」


 単純な心力の総量の差も勿論だが、技術面でも明確な差があった。

 「空打からうち」、「舞空」、そして、最後の衝撃波……今度自分もできるように特訓して、いつかリベンジして……


「そりゃあ、あいつ俺よりも強いからな。そもそも人間じゃないし」


 心の中でリベンジを決意する中、フレイムさんが当たり前だと言わんばかりの表情で僕に言った。というか、さらっと衝撃の事実を教えられた気がする。

 国家戦力級ランカーのフレイムさんより強い?人間じゃない?いったいどういうことだ?


「まあ、だから気にするな。むしろそんな格上に立ち向かって仲間を助けたことを誇りに思え」


「はい……そうですね」


 みんなを守ることができたか……傍にいるアリスとシャリーを見る。

 実際には相手が見逃してくれただけだが、怪我をしたのが僕だけで良かったと心の底から思う。二人が大怪我をする姿なんて見たくはない。


「さてと、本題に入るか。ソラ、あいつは何か言ってなかったか?」


 その言葉で当時のことを振り返る。フレイムさんが聞きたいことは、おそらく僕とルシファーの二人しかいなかったときのことだろう。思い出せ……何かないか……


「『法王』……途中ルシファーがその言葉を口にしていました」


 みんなが逃げ出して少ししたとき、あいつが言っていた。しかも様付で。


「『法王』か……おそらく聖教技師団のトップのことだ。あの『白銀の竜王』が下につくなんて相当の実力者なのは確かだが……」


「正体は不明なのですか?」


「その通りだ。聖教技師団の組織としての実態は把握できていない。ルシファーがいたことも今回で分かったくらいだ」


情報技師サポーターに依頼は?」


「ああ、何度かあるが、成果なしだ。ギリーのやつにも頼んでこの結果だから諦めていたくらいだ。だからお前にこうして直接聞いてるんだよ」


 ギリー・ノートン先生は国技団でナンバーワンの情報技師サポーターだ。性格は変だが、その能力はジェームズがあの人には敵わないと諦めるくらいだ。あの人で無理なら国技団で潜入し情報を手に入れるのは不可能だろう。


「というわけで、ソラ、他に何かなかったか?」


 振り返ってみるが他にフレイムさんが聞きたいようなことは何も言っていない。不思議な世界にたどり着いていたが、あれは聖教技師団とは関係がない。父さんが関係しているみたいではあるけど。


「すみません、特には……」


「そうか。ソラ、後はゆっくり休め」


「はい」


フレイムさんはそう言って部屋を後にした。今更だがあの人もしかしなくても真面目に仕事してたな。普段からその調子で頑張ればいいのに。


「そうね。完治したといってもまだ安静にしておいてね」


「アリス先輩のいう通りです。今日は安静にして明日からまた学校に通えるようにしましょう。そうしたらまたいつもの日常です」


「いつもの日常か……」


 果たしてそうなのだろうか。聖教技師団の件だけでなく、あの謎の世界のこともあっていつもの日常が戻ってくるとは思えなかった。それどころか大きな変化が訪れる、そんな予感がする……

 そんなことを考えながら、僕は医務室の窓から雲一つない夕焼け空を眺めていた。


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