婚活の成果は
研究所へ通うこと数ヶ月…婚活の成果は思わしくなかった。かなり定期的に通ったのに、騎士様や官僚の方々と違って、挨拶する機会すらほとんど訪れないのだ。挨拶すらできないから、交流を持つことなんて不可能なわけで。
そもそも研究所の外で研究者の方をお見かけすることが皆無…一体これってどういうことなのかしら…。さすがに一日中研究所にこもってはいないわよね…?
不思議に思って情報収集したところによると、研究に没頭できるよう、研究所内には外に出ることなく生活できる環境を整えてあるそうだ。…どれだけ皆さん研究に没頭されてるの?!
ちなみにこの情報は、主に侍女仲間達からの提供だ。侍女の礼儀見習いとしてメアリー様のもとへ上がって…もうそろそろ一年経つのではという今日この頃。もちろん礼儀見習いを終える仲間もいるから、人の入れ替わりはあるのだけれど、これくらいの期間が経つと自然と仲も良くなってくるものだ。
仲良くなった侍女仲間達の半分は私とアルバート様が結ばれるのが良いとアルバート様応援派、残り半分は私が自力で見つけて来た人と結ばれるように応援してくれる派。
皆まで力を合わせてアルバート様を応援されては困るのだけど! でも、皆良い方達で私のことを考えてくれてるのはわかるから…。是非とも私が自力で見つけて来た人と結ばれるように応援してとは…そんな無理強いはできないのだった。でも、私の情報をアルバート様にお話しするのはやめてね…?
研究所に通うようになってからの数か月。アルバート様との接触は極力避けようとしていたけれど、なかなかそうもいかず。アルバート様にはメアリー様という強いお味方がいらっしゃるし、なにせアルバート様はメアリー様付きの近衛騎士、私はメアリー様付きの侍女…完全に接触を経つことは仕事上は無理。同じ空間にいるのだから、どうしても全く会話を交わさないということはできないものね。
ただ、休憩時間はできるだけすぐに研究所の方へ向かうようにしていたから、アルバート様との接触は少なかったけれど。
でも、時折小規模の晩餐会や舞踏会への参加をメアリー様に勧められることがあって。私だけでなく他の侍女仲間にも声をかけられていたし、せっかく勧めていただいたのにお断りするのも申し訳なく…。また、そこまで度々ではなかったのもあり、できるだけ参加するようにはしていたのだけど…。現状、研究者さん方と交流が図れていないのだから、エスコート役にはアルバート様しか名乗り出てくださらないわけで…。
そんなわけで、アルバート様と過ごす時間は私が望む望まないに関係なく、少しずつ増えていっていた。
そうして、公式の場にエスコートされていくことが徐々に増えていき、周りにはアルバート様のパートナーとして認知されてもいき…どんどん深みにはまっていくような、抜けられなくなっているような危惧はあったのだ。今でもアルバート様には、私よりもっと相応しい…釣り合いのとれるご令嬢が他にいらっしゃる、との思いは変わっていないのだし。
だけれど、少しずつだけど…少しずつだからこそ? アルバート様との距離感が縮まっていく気がすることに、前ほど嫌な気持ちや焦りは湧かなかった。
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少しずつではあるけれど、絆されていっているアイリス。だが、まだまだ婚活は継続予定のようだ。その内心は…。
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外堀…埋められていってるわよね。今更、簡単には抜け出せない状況なのもわかっているけれど…周りの雰囲気に押されてアルバート様の気持ちを受け入れるのは…違うと思う。
家と家の間で婚約が決まってしまったのなら、貴族の子女として従うしかないけれど、自分で見つけるように言ってきたのは両親。その両親は、アルバート様との婚姻を応援しているような素振りはあるけれど、決して強要はしてこない。自分の意思でアルバート様の気持ちを受け入れるのであれば、アルバート様への恋心がきちんと芽生えてからにしようと思う。今はまだそこまでの気持ちには…なれないものね。
なんとなくだけれど、お母様があれほど恋愛を勧めてきた思いが少しわかってきた気がしている。なかなかうまくはいかないけれど、自分の力で素敵な方を探すために努力する日々は、毎日が充実していたし、意外と楽しかったのだ。だから、へこたれずに婚活は頑張ろうと思う! もともと貴族子女の婚活は、難易度が高いのだし、簡単にうまくはいかないわよね。
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アイリスがアルバートに恋に落ちる日が先か…周りからの妨害をものともしない、アルバートとは別の運命の人をアイリスが見つけ出すのが先か。それはまだアイリスにも、アルバートにもわからない。
穏やかなアイリスですが、周囲の反対を押し切り結婚した両親の芯の強さも受け継いでいるのかも。貴族令嬢の婚活・自由恋愛は難しいけれど、アイリスにはいろいろな困難を乗り越えて、最終的には【自分の意思】で決めて欲しい。そんなことを、作者自身も願いながら…この話はひとまず完結とさせていただきます!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!