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皇太后メアリー視点

 息子が即位し皇太后となった後は、表舞台からは退き悠々自適に暮らそうと決めていた。隣国から嫁いできてからの日々は、あっという間のようでもあり、とても長くもあった。隣国の皇女として誕生し、幼い頃から正妃教育は受けていたけれど、実際に皇后として国王である夫の隣に立ち続ける日々は、重圧も多かったのだ。


 気の置けない友人達を招いてのお茶会や、楽団を招いての音楽鑑賞などなども楽しいが、貴族の子女達を行儀見習いの侍女として受け入れ、仲人のようなことをしているのも、引退後の楽しみの一つだ。


 そんなある日、新しい侍女としてアイリス・クラウス伯爵令嬢を受け入れることになった。クラウス伯爵といえば、特に大きな役職にも付いておらず平凡な家柄と見られがちだが、クラウス家の歴史は古いし、誠実な人柄で領地運営も領民の保護も怠らない、国にとっては貴重な貴族の1人だ。

 ただ…伯爵は夫人とは貴族には珍しく恋愛結婚であったのだが、その際に家同士のゴタゴタがあり、そういうことはどうしても社交界に伝わるもので。少し変わった伯爵だとの認識が、皆に植えつけられているようだった。

 さて、そんなクラウス伯爵の令嬢…いったいどんな娘であろうか。



 実際に対面したアイリスは、とても素朴で可愛らしい娘であった。まだ少女としての可愛らしさを充分残してながらも、きっとこれから花開いていいくであろう魅力を内に秘めているようであった。何より性格が穏やかで、はにかんだ笑顔もなんとも可愛らしい。

 アイリスはあっと言う間に、メアリーのお気に入りの侍女の1人となったのだった。


 行儀見習いということで、侍女としての仕事や礼儀作法は一通り教え込む。だけれど、ずっと侍女として働くというわけではないのだし、一時的に預かっているだけなので、自由時間も多く与えていた。専属の侍女や女官だけで、本来はまったく支障はないのだから。



 ※



 次男の息子であるアルバート・カルザックを専属の騎士として任命したのは、やはり孫息子は可愛いというのもあるが…なかなかアルバートの婚約者が決まらないばかりに、アルバートが女性に辟易しているのを知っていたから。

 私の元で仕えていれば、最低限必要なもの以外の社交は欠席で構わない。政治バランスもあるだろうけれど、婚約者が決まっていないばかりに令嬢方に取り囲まれ、女性に苦手意識を持ち始めているアルバート…これ以上、女性への苦手意識が高まらないうちにと避難させた形だ。

 アルバートのこともあるから、アルバートの婚姻を望むような家の娘は、たとえ申し出があっても侍女として受け入れなかった。

 アイリスは家格としては伯爵家であるし、年齢もアルバートとの釣り合いがとれるのだけど、本人の希望がまったく別のところにあったので受け入れたわけだ。面接したものによると、演技とは思えなかったそうだし、演技だったとしてもその時はアルバートに近づかせなければよし。


 そう思っていたのだけど、意外なことに…アルバートの方がアイリスへ恋をしてしまったようだった。

 確かにアイリスは今までアルバートに近づいてきたような娘とは違って、素朴で素敵な女性だ。きっとその辺りに惹かれるものがあったのだろう。

 アルバートが恋に落ちたなら、話は別。早速、アルバートと話をし、全面的に応援することに決めた。



 まずはアイリスへアルバートの幼い時の思い出話でも聞かせながら、アルバートへ興味をもってもらうことから始めるとしようかしら。


 可愛い孫息子とお気に入りの侍女アイリスの仲人になれるかもしれない。ここが腕の見せ所だと、張りきるメアリーなのだった。

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