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アイリス視点

 貴族令嬢の結婚といえば…幼い頃、下手したら産まれた時から親の決めた婚約者が決まっていたり、そうではなくても年頃になる頃には、やはり親の決めた相手と婚約を結ぶことになるのが普通だ。それは上級貴族の公爵であっても、下級貴族の子爵や男爵であっても。中には恋愛の末…なんてこともないことはないけど、たいていそんなのは小説の中だけ。


 そんな中、とある伯爵家に産まれた私、アイリス・クラウスにも婚約者が決まっているはずであった。幼い頃からとはいかなくても、私は今年16歳。もう完全に年頃だ。そろそろ婚約者が決まっていないとおかしいと言われるくらいには年頃なのだ。周りの幼馴染の貴族令嬢達も、皆とっくに婚約が整っているし、中にはすでに婚姻を結んだ方だって…。


 なのに何故私の婚約が決まっていないのか。それは…うちの両親が滅多にない…それこそ小説の中の話くらいだと言った…恋愛結婚をしているからなのだ。しかも、いろいろ波乱万丈な…。今でこそ両家にも認められ、幸せな生活を得ているが、結婚当初はなかなか大変だったようだ。


 さて、そんな大恋愛を経て結婚した両親は…私にも恋愛を勧めてくるのだ。


『恋愛って素敵よ~』


 これはお母様の口癖だ。いや、私だって恋愛結婚というものに興味はある。恋愛小説だって大好きだもの。でもね、まわりの貴族子息達はやはり親の決めた婚約者がいたりするわけで…。そんな中でどうやって恋愛相手を見つけろと…。

 そんな主張もしてみたのだけど、まぁどうしても恋愛が無理ならどうにかするからという、ゆる~い言葉しかもらえなかった。

 そんなこんなで…頼りにならない親を持ってしまった私は、年頃を過ぎる前に相手を探すべく…婚活に勤しまないといけなくなったのだ…。



 婚活に励む決意をした私は、王宮へと馳せ参じている。


『婚活でなぜ王宮? もしかして王族との結婚を狙ってる?』


 まさか、そんな恐れ多いこと微塵も思っていない。王族の皆様こそ、お産まれになられた時から婚約者が決まっているのだもの。私なんかの登場する幕はないのよ。

 私が王宮に来たのは、先代王妃殿下メアリー様付きの侍女となるため。メアリー様の目下のご趣味はご自分付きの侍女達の仲人役を買って出ることらしいのだ。

 ほとんどの貴族には親の決めた婚約者がいるのに、誰かいるのかって?

 例えば幼い頃から宿舎に入り鍛錬に勤しむ騎士様方、勉学にのみ邁進されてきた官僚の方々。騎士や官僚には優秀であれば、平民でもなることができる。そして、そこでさらに成果を上げることができれば、叙勲され男爵位を得ることもある。そういった方々は、鍛錬や仕事に明け暮れていた為に、婚約者が決まっていないことが多いのだ。平民と貴族の婚姻は認められないけれど、男爵位を叙勲された方との婚姻であれば認められる。そして、皆様優秀な方々だ。お相手として申し分ないだろう。


 貴族の子女が嫁入り前の花嫁修行と称して、女性王族付きの侍女となるのはよくあること。というわけで私の希望も問題なく通り、無事にメアリー様付きの侍女になることが出来た。


 さぁ、婚活頑張りましょう!



 ※



 メアリー様付きの侍女となって早数ヶ月。何人かの騎士様や官僚の方々とお話する機会があった。私に婚約者がいないとお知りになったメアリー様からも、どなたか気になる殿方がいたら遠慮無く言うようにと仰っていただいている。

 けれど、焦りは禁物。少しずつ交流を重ね、人柄を知っていき、この方は! という方を探したら、あとはメアリー様にご相談しよう!

 メアリー様付きの侍女や女官は数が揃っていることもあって、侍女のお仕事が忙し過ぎて、プライベートの時間が無いということはないのだから。



 ※



 あれから更に数ヶ月。騎士様や官僚の方々との交流は順調だったはずだ。このままいけば、メアリー様にご相談出来る日も近かったはず。

 なのに何故…。何故、今私の隣に立っていらっしゃるのは交流をはかっていた騎士様ではなく、カルザック公爵のご令息であるアルバート様なのだろう? しかも、カルザック公爵は現国王の王弟であり、その令息であるアルバート様にも皇位継承権があるという…貴公子の中の貴公子だ。

 そのアルバート様から向けられる視線には明らかに熱が込められている。恋愛的な、である。

 公爵家のご令息なんだから、婚約者がいるだろうって? 何故かいないのである…。そして、年齢的にも私の2歳上であるので釣りあいも……って!

 アルバート様と、特に重要な役職にも付いていない平々凡々な伯爵家の娘の私とでは、全く釣り合いとれていないから!

 だから! メアリー様もアルバート様の応援をするのはやめてくださいませっ! なんでこうなったの?!





 婚活というのは…中々自分の思い通りにはいかないものである。

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