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(少しずつでも進めないと本編とどんどん離されていっちゃう…!)
冒険者ギルドの出張所でウゾーさんとムゾーさんから話を聞くことになりました。
「で、ケーマさんは言った。『ほら、食え。腹が減ってるだろう』、そう言ってパンをくれたんだ。いやぁ、あのパンはホント美味かった……なぁウゾー?」
「俺は天使というのを初めて見たよ、ムゾー」
「そうですか。……えっと、罠の方の話は?」
「ああ、そっちもな。ケーマさんが一発で、台座に魔剣が刺さっていないと扉があかないという事を見抜いてな。……しかも、自らの持つ魔剣を使ってまで助けてくれたんだ!」
「いやムゾー、あれは知ってたと思うぞ、あの仕組みを。ケーマさんならもうとっくにこのダンジョンを制覇していたとしても驚かないね」
「そ、そうなんですね」
やべぇ、なんかウゾーさんとムゾーさんがすっかりあのクズの信者になってるんですけど。これ、洗脳とかされてるんじゃないですか?
「しかも救助料も格安の金貨2枚だ。ツィーアに戻ったら送金の手続きをするから、ケーマさんに渡して欲しい」
「あ、貯金降ろすなら手続きしてくれればここでも渡せますよ」
「本当か! それならすぐ頼むよ」
金貨2枚ずつですよ? ええ、まぁ確かに格安ではありますが、決して安い金額というわけでもないです。金貨3枚もあれば1年は暮らせますしねぇ。
けど実際、命の対価としては安いです。非常に良心的と言えるでしょう。
「そうだ。魔剣の罠の情報料だけど、これ、ケーマさんの報酬に上乗せしてくれないか? いいよな? ウゾー」
「かまわない。俺から言おうと思ってたくらいだぞ、ムゾー」
「別に構いませんが……お金は入用なのでは?」
「死を覚悟してたからね。それが金貨2枚で助けられたんだ、できる限り報いたいじゃないか。なぁウゾー」
「こうしてムゾーと馬鹿話できるのも、ケーマさんのおかげだからな」
「そうですか。……まぁ、それならやっときますね。」
その後、例のあのクズからも話を聞いて、まぁこの罠とかの仕組みやダンジョンの生態系についての信憑性ある情報があつまってきた。
……モンスターはゴブリンとクレイゴーレム、ストーンゴーレムのみ。実に単調なダンジョンですね。トラップに気を付ければ初心者でも潜れるでしょう。
奥の方まではわかりませんが、今分かっている範囲なら新人冒険者のランクアップ試験に利用できるかもしれませんね。
今後も魔剣が産出される可能性は高い、と。よし、報告書も書けました。
折角だしウゾームゾーさんたちにツィーアまで配達してもらうとしましょうかね。そうすれば早いですし。
……『ただの洞窟』っていう名前のままにはならないでしょうね、このダンジョン。
一体どんな名前になるのやら。
*
数日後、とんでもない事態が発生しました。
Aランク冒険者「白の女神」にしてラヴェリオ帝国の祖にして冒険者ギルドグランドマスターという、紛うこと無き天上人、ハク・ラヴェリオ様がこのような辺境のダンジョンの冒険者ギルドにお目見えされたのでございますです。
……変な汗出そう。
「あ、あの、本日はお日柄も良く……」
「堅苦しい挨拶はいいわ、私は早く宿で休みたいの。決まったことだけ言うわね。……このダンジョンは引き続き冒険者ギルドの管理下にあるものとします。名称は『欲望の洞窟』に更新されます。難度はDランク以上よ。分かったわね? クロウェ、書類を渡してあげなさい」
「はっ、かしこまりました」
控えていた黒い執事、クロウェ様が先ほどハク・ラヴェリオ様がおっしゃられたことがかかれた書類を下さいました。……執事といっても女の人ですよ。私がみてもドキっとするくらい美形ですけど。
そして書類の受け渡しが終わるや否や、さっさと出て行かれてしまわれました。……あぁ、すっごい緊張した。敬語とかホント何が何だかわからなくなっちゃうレベルですよホントコレ。
例えて言うならドラゴンと対峙してる気分。下手すれば命が無いですからね。以前このダンジョンへ山賊退治にきた騎士団が、ハク・ラヴェリオ様の不興を買って国家反逆罪で処刑されたという話もあります。
それにしても、こんな安宿といってもいいくらいの宿に、あのお二方が泊まるとか不敬罪になったりしないでしょうか。
……クズ虫さんが責任をとって縛り首になってくれるんならそれでもいいのですが、連座で天使ちゃんたちまで被害があってはいけません。ここは無事に対応できることを祈りましょう。
けどまあ、十中八九、あの宿に噛んでるAランク冒険者ってあのお二方ですよねー。それならきっと問題ないはず……はずです!
……まぁ、とりあえず温泉にでも入ってリラックスするとしますか。