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その3 ランクアップ試験……えっ。


 前回天使ちゃんと別れてからそろそろ1週間が経とうとしています。

 修行で山籠もりとか……はぁ、天使ちゃんはなんてまじめで可愛くて健気なんでしょう。


 朝のラッシュを適当にこなすと、黒髪がちらっと視界に入りました。

 天使ちゃんキタ?! って、クズさんのほうでしたか。 いや、天使ちゃんも一緒ですね、よしよし。


「どうも。一週間ぶりですね。本日はどんなご用件で?」

「ああ、まずはこれをお願いします」


 そう言って、カウンターにゴブリンの耳の詰まった袋が置かれました。

 ……えーっと、45個、依頼9回分ちょうど、ですねぇ。


「これでランクアップの試験が受けられるんですよね?」


 何か不正でもしたのか、いや、普通に考えれば天使ちゃんが1人いれば1週間でこの戦果は当たり前でしたか。問題ないですね。 さっくりランクアップ試験の手続きをするとしましょう。

 あと元Cランクもいましたっけ……っと。 とりあえずギルド長に報告したら、試験官の予定を確保しなきゃ……


「というわけで、ランクアップ試験の試験官に誰かいいのがいないか探してきますね」

「なら儂が試験官をやろう」

「……は? なんでですか?」

「何か問題でもあるのかね? 試験が早く受けられていいだろう。専属の居る優遇措置とでも言っておけ」


 いいですけど、変な試験にして天使ちゃんを不合格にしないでくださいね?

 というわけで、天使ちゃんご一行を訓練場に連れて行きます。


「久しいの。我が孫たちよ」


 わーい、おじーちゃーん(棒)

 まぁいいんですけどね。で、ギルド長によるランクアップ試験が始まりました。

 内容は簡単、【クリエイトゴーレム】で作ったクレイゴーレムとの戦闘です。このスキルが無ければ試験官をつれてモンスターを探しに外まで行く必要があるところでした。


「では早速だが、誰からやるかね?」

「じゃ、ウチからいってエエか」


 『食欲魔人』のソリン……今はイチカでしたっけ、元Cランク冒険者の彼女なら、試験する必要すらないでしょう。


「準備は良いか? いくぞ。……■■■、■■■、■■■■■■、【クリエイトゴーレム】」


 詠唱に呼応し、クレイゴーレムが産まれました。


「では、始めッ!」

「ほいっ」


 開始の合図と同時にイチカが仕掛け、そしてあっさり魔石を砕きました。

 ……速攻すぎて試験にならない!


「……あー、イチカといったか。Eランク昇格だ。……次はゴーレムが動き出すまで待ってくれんか? さすがに試験にならん」


 腕前を見る前に一瞬で終わってましたもんね。

 まぁこれは元Cランクのイチカさんなら当然でしょう。


 と、次はクズさんのようです。

 いったいどんな無様な戦いを見せてくれるのか楽しみですね。


「では、始めッ!」


 今度はゴーレムが動くのを待って開始しました。

 殴りかかるゴーレム。試験とはいえ当たれば無事では済みませんよ?


「とうっ」


 と、なんでもないといったようにゴーレムを左右にすっぱりと分割しました。


 ……?!


 一撃で綺麗に分断されています。

 戦闘慣れした……何度も繰り返し、その動きが体に染みついているという、洗練された動きでした。


「ケーマ殿、合格だ」

「あざっす」


 むむむ、戦闘経験ないって言ってましたよね? もしかして、才能が開花した、とかでしょうか。なんらかのスキルを得たのかもしれません。

 多少は見直してやってもいいかも……


「よし、最後はニクな」

「かっこいいとこみせます、ね」


 天使ちゃんを平然と性奴隷(ニク)呼ばわりするから差引0で。

 て、ちょっとまってください。天使ちゃん、武器構えてませんよ?


「始めていいのか?」

「どうぞ」


 ギルド長が尋ねると、しっかりと返事を返す天使ちゃん。それを聞いてギルド長もゴーレムを動かします。

 そして、戦闘開始……からの、これもまた瞬殺でした。

 ゴーレムの懐に潜り込んだ天使ちゃん。離れた時にはその手袋に包まれた愛らしい手に魔石が摘ままれていました。綺麗に魔石だけ抉り取ったようです。


 ……さすが天使ちゃん、無駄がないですね!


「……よし、試験終了だ。これでお前たちは全員Eランクとする。……シリア、ランクアップ処理は滞りなくしておくように」

「はい、かしこまりましたギルド長」


 私はギルドカードを回収して、ランクアップ処理をしに離れました。

 またあとでね、天使ちゃん!



  *


「はい? 出張所、ですか?」

「ああ。『ただの洞窟』に出張所を作ることが決定した」


 なんだってあんな何もない所に出張所を作るんでしょうね? 私は首をかしげました。


「で、お前はそこに異動だ」

「はい?! ちょ、ちょっとまってください左遷ですか?!」


 何もないダンジョンの出張所とか、どう考えても厄介払いかなにかにしか見えません。


「あの洞窟だがな、『転換期』があったらしい」

「……け、けど流石に優秀なギルド受付嬢の私でも何もない所にいきなり出張所を建てろっていわれても難しいですよ?!」

「なにもお前ひとりで全部やれとは言っていないが……できないとは言わないのだな」

「え? 別に出張所なんてテントでもいいじゃないですか。そりゃ、いろいろしっかりできればと思いますけど、最悪、書類とお金があれば十分ですし、私、【お財布】使えるからいくらでもお金持ってけますし?」


 時空魔法の【お財布】スキルは割と安く手に入るので、ギルド長の孫である私は当然嗜み程度に覚えています。ギルド長(おじいちゃん)の奢りですが。

 お金限定でいくらでも持ち運べる便利な魔法です。あまり知られてはいないようですが、銅貨100枚を入れておくと銀貨1枚を代わりに取り出せたりもします。地味に便利ですよ。


「そうだ。だからお前が適任なのだ、シリア」

「……はっ! まってください私は専属受付嬢です! 専属冒険者が居る以上、この町を離れるわけにはいきませんよ?!」

「お前ならそう言ってくれると思ってたよ」


 ニヤリ、とギルド長が笑いました。


  *


 くっ……まさか天使ちゃんが拠点をダンジョンに移すだなんて……ッ!

 しかもダンジョンには宿ができていて、天使ちゃんがそこで働くだなんて!

 そりゃついてくしかないじゃないですか!

 ないじゃないですか!


 あー可愛がりたい。だっこしてナデナデしたい。くんかくんかしたい。

 天使ちゃんの犬耳はむはむしたい。


 あ、ちなみに私、こう見えてCランク冒険者並の実力があったりします。なにせおじいちゃんがギルド長ですからね。色々危険もあるし、鍛えられましたし、いくつもスキルを身に着けています。

 その気になれば冒険者もできるんですが、いかんせん地の力はあまり強くなくてですね……後衛型です。

 有能なギルド受付嬢として活躍できる程度には頭脳明晰ですから、それを生かした適材適所と言えるでしょう。

 そんな優秀な私なら、この大変名誉なお仕事を任されても仕方ないというわけです。


 ……さ、左遷じゃないし! 出張所の支部長だし! 1人しかいないですけど!


「……さてー気を取り直して……」


 私は書類が詰まったリュックを背負います。……うぐ、書類が重いです。けど持てないほどではありません。実はこのリュック、見た目こそ大きいですが、重量軽減の魔道具でして。山ほど詰まった書類が、後衛な私でも持てる程度には軽くなってくれるんですよ。凄くないですか?


 まぁ、これ色々準備するのに結構な時間がかかってしまいました。

 そういえば、ギルドからCランクの冒険者に『ただの洞窟』の調査依頼を出したのですが、……まだ帰ってきてませんね……。

 残念ですがこれはおそらくダメでしょう。未帰還の冒険者は跡形も残らずダンジョンに消えてしまいます。

 飲み込まれる、とか言われますね。モンスターのエサになるんでしょうか。

 大抵は装備も消えてしまうので、本当にダンジョンで死んでしまったかどうかもよくわからない所です。


「おう? なんでぃシリアちゃんそんな大荷物背負っちゃって」

「……ああ、ゴゾーさんじゃないですか。昼間からお酒ですか?」

「おおよ、やっぱコレがねぇと仕事にならねぇからな!」


 ここらでは珍しい、ドワーフの冒険者、ゴゾーさんです。手にはお酒の入っているであろう革袋。

 相方のロップさんは人間の女の子なんですが、これまた酒好きで……色々な意味でいいパートナーなコンビです。どちらもCランク冒険者です。


「で、シリアちゃんはどうしたんだ?」

「ええとまぁ、これは隠す内容じゃないので言っちゃいますけど、近場のダンジョンに出張所を作ることになりまして……」

「近場のダンジョンねぇ……まだ出張所のないとこだと、どこがあったか……ああ、そういえば最近ウゾーとムゾーを見ねぇな。もしかして調査依頼か?」

「そこは業務規則あるので言えませんよ」

「ハハッ、シリアちゃんが真面目に仕事してやがる」


 失敬な。私はいつも真面目に仕事してますよ?


「調査依頼がでたらよろしくお願いしますね」

「俺がムゾーが還ってこねぇようなトコ、行けると思うか?」

「あら、それ答えたらまるでムゾーさんが調査依頼を受けて帰ってきてないみたいじゃないですか。というわけでノーコメントです」

「……ちっ、案外ガード固ぇよな、シリアちゃん」

「優秀なんですよ」


 舌打ちするゴゾーさん。まぁ気持ちは分かります。ウゾームゾー兄弟はゴゾーさんの弟子みたいなところがありましたからね。今でこそ同じCランクですが。


「どうしても聞きたいならギルド長に聞いてみてくださいよ」

「そうだなぁ……でも可愛い女の子に話しかけるならともかく、あのジジイはちょっとなぁ……仕方ねぇか。呼び止めて悪かったな」

「いえいえ。ではまた」


 私はゴゾーさんに軽く頭を下げて挨拶をすると、ツィーア山にある『ただの洞窟』に向かうこととしました。



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