最終話
連邦国を征服しちゃいました。わずか三カ月の戦争でした。え?どういうことだって?そうだねぇ。まず、連邦国で勢力を拡大していたレジスタンス軍との密約が成立して、不可侵条約の破棄と宣戦布告がされたのが三カ月前。
その後、国境の連邦国側に建設されていた前線基地からアゴールとコレムを中心とした親衛隊を含む帝国軍の全軍による侵略は一日で砦や城を落とし、レジスタンス軍の北からの挟撃も相まって、一ヶ月で連邦国の半分を制圧。補給路の構築と、占領地の処理に一ヶ月半足止めされていたら、レジスタンス軍が独断で進軍を開始してしまい、連邦国軍に敗北してしまう。
そこで、親衛隊と皇帝軍で進攻を再開。アゴールとコレムの戦場での活躍は圧倒的で、連邦国の兵士たちはその姿を見るだけで逃げ出すほどだった。最初の戦いでだいぶ有名になったみたいですね。それで、連邦国軍を一気に壊滅まで追い込んでの無条件降伏となったのである。
レジスタンス軍との戦いでぼろぼろだったのも勝因ではあるが、レジスタンス軍の幹部たちは全員戦死か処刑されており、開戦前の密約はなかったことになってしまったが、帝国側からするとラッキーである。と、思っていたら、どうやら帝国の潜入工作部隊による作戦が大成功した結果らしく。戦後に表彰されていた。そして、その中にはマイケル・マーリンがいた。あいつ、潜入工作部隊に配属されていたのね。
まあ、そんなこんなで、ちょっと死の恐怖に脅えていたのが馬鹿らしくなるほどあっけない戦争だった。まあ、あんまりにも早く終わったので、一般人の被害がかなり少なくて済んだそうなので、良かったんだろうね。
連邦国は大陸から消滅し、統一帝国が大陸を制覇した。私や親衛隊の面々もその功績が認められて、貴族になったり、異動後に隊長職になったり、二人目の子供ができたりと・・・え?二人目の子供って誰のだって?そりゃあ、私の・・・と言いたいところだが、メリル副隊長です。えぇ。いい歳こいてやっちゃいましたよ。37歳にして妊娠って、大丈夫なのかね?前世の世界では医学が進んでいたのでほとんど問題なかったらしいけど、こっちの世界の医学ってそんなに進んでないような気も。まあ、念のため魔石を軍から借りて、回復魔法をいつでもかけられるように立ち会うこととなりましたけどね。ああ、私じゃなくて、エイムがね。さすがに下半身丸出しのメリル副隊長の横につく気はないです。というか、エイムさんが許しません。エイムはだいぶ人間らしくなりまして、嫉妬深くなっちゃったのよね。まあ、それもかわいいんですけどね。メリル副隊長に負けじと二人目、励んじゃいますかね?
そんなこんなで、平和な時代が訪れ、軍は縮小されていき、アゴールとコレムは凍結・解体されていき、子供たちは大きくなっていき、私も80歳を迎えたある朝。エイムや子や孫たちに見守られながら、眠るように私の一生は終わったのであった。
「ごくろうさまぁ~。いやぁ~ごめんね?なんか、手違いでさぁ~。虚無に流れちゃんだもん。異世界の人間の願いに引かれて転生してなきゃ無に帰っちゃうところだったよぉ~。」
え?誰?ん?ここどこだ?あれ?エイムは?子供たちはどこに行ったんだ?あれ?なんで私の手はしわくちゃじゃないの?ツルツルじゃん!
「あー。えっとねぇ。これからが本番といいますかぁ。無事に天寿を全うして、ここに戻って来てくれたのでぇ~。本来予定していた世界への転生をしてもらうこととなりまして・・・」
「はい?」
「いやぁ~おめでとうございます!二回も転生できちゃんなんてレアですよ?レア!普通なら、一回転生するにしても、何百万人の中から抽選ですからねぇ。それが二回も体験できちゃうなんて、あなたラッキーよ?」
なんだろう。この美少年。見た目は不思議と嫌いになれない感じがするのだが、性格が嫌いだ。ノリが軽すぎる。つか、まさかこいつが神様じゃないよね?
「あー。なんかそれ傷つくなぁ。まあ、僕は神様じゃないんだけどねぇ。というか、正確には女神様が一番上なんだけどねぇ~。神様の奥さんの女神様が実質最強だし~。」
「かかあ天下かな?」
「まあ、そんなところだねぇ。僕たち男は股間を握られたら、どうしようもないよねぇ~。」
「え?ああ。まあ、そうかな?」
「それでっと。自己紹介しちゃおうかな?ああ、そっちはしなくても大丈夫だよぉ~。全部知っているから。」
まあ、そうなんだろうなぁ。
「それじゃあ、改めまして、僕の名前はアリエル。天使をしています。天使というのは女神様に使える者たちの総称で、階級や上司部下の関係が一切ないフラットな組織の一社員みたいなもので、一人の人間に対して一人の天使が担当しています。つまり、君の担当はひとりね。チェンジは出来ないから、性格が合わなくても諦めて受け入れてね。まあ、そんなに長い付き合いになるわけじゃないと思うので、我慢してねぇ~。」
「は、はあ。」
「それでね。さっきまでの君の人生なんだけど、あれはね。手違いによって虚無に流れた君の魂が、運良く異世界の願いに引かれて転生して、今日に至ります。ここまではOK?」
「質問良いですか?」
「えー。質問しちゃうの?まあ、いいけどね!で、なになに~?」
「なんで、虚無に流れちゃったんですか?」
「そこ聞いちゃう?そこ聞いちゃうかぁぁぁ。」
なんか天使アリエルは頭を抱えてジタバタしているも、困っているというよりは遊んでいるようだ。
「実は・・・僕にもわかんない!」
「えー!」
「ごめんねぇ。いやねぇ。前の前っていうのかな?ようは日本での一生を事故死だか、病死だかで終えた君の魂が、本来くるべきこの場所を素通りしちゃって。虚無の隙間に吸い込まれちゃったんだよねぇ。」
「それって、よくあることなんですか?」
「まあ、割とあるみたいね。虚無への穴がどこにいつ開くのかは女神様でもわからないそうだから、運だね。運!それでも一億人に一人くらいの確率らしいので、君はさらにそこから脱出して異世界に転生しちゃったから、何千億分の一くらいの確率じゃないかな?あれ?もっとかな?まあ、君は超ラッキーってことだね!良かったねぇ~。」
「う~ん。なんだか喜べないですけど、それでまた転生と言っていましたけど・・・どういうことです?」
「それね。本来なら、日本からここに来て転生してもらうはずだったのを、今からやってもらいます!」
「それは、さっきの話で分かったんですけど、具体的にどうするんです?」
「女神様が新しく作った世界のとある惑星に転生してもらって、好き勝手に遊んでもらってのその世界の耐久度テストをしてもらうことになってま~す。」
「好き勝手に?」
「そそ。簡単にその世界を説明すると、君がさっきまでいた世界にちょっと似てるけど、もっと魔法が日常や戦争で使われていて、魔力量も成長しだいで上がるようなところだねぇ。」
「魔法が魔石の補助なしで使い放題も夢じゃないと。」
「そういうことだね。もちろん、魔石もあるんだけどね。まあ、それはおいおいその世界に行って知ってもらえば良い事なので、あと説明することは、スキルかな?」
「スキル?技能とか技術のことですか?」
「まあ、そんなところなんだけど、今までの世界とは違って、いわゆる君が前の前にいた世界のゲームに近いかなぁ。スキルを習得するだけで、そのスキルの内容の物が使いこなせちゃうって感じのものだねぇ~。」
「ほ、ほう。」
「お?俄然興味湧いてきた?まあ、いままでの世界にはそういうのが無くて、普通に努力と勉強の積み重ねだったもんねぇ。まあ、スキルを最初に取得するには多少努力が必要なんだけどね。努力しないでお金で解決できる場合もあるけど。」
「お金で?」
「そう。スキルをマスターすると出てくるスキル石っていうのがあるんだけど、それが高額だけど市場で取引されていて、それを買って使うとそのスキル石の内容の初期スキルがすぐに習得できちゃうの。便利だよね~。まあ、レアなのはマスターするのにも一生かかり勢いだから、いっさい出回ってないんだけどね。」
「ほうほう。他には何かあるの?」
「ふふふ。きっと君が喜ぶであろう情報があります!」
ごくり。
「なんと!獣人、魔人、魔物、魔王もその世界にはありまぁぁぁぁす!!」
ん?なんか最後のほうに嫌な単語が・・・
「魔王?」
「うん。魔王。魔人たちの王で、魔導を極めし者の魔王。その魔力は凄くて、一都市を消滅させちゃうくらいの魔法を使えちゃいます!」
「魔王はいらないかなぁ・・・」
「ん?ああ、大丈夫。大丈夫。君にはその魔王すらカスに思えるくらいの特典が満載だからね!」
「え?」
「さっきも言ったけど、新しく作った世界の耐久テストなんで、破壊しちゃう勢いでガンガン遊んじゃってね!それこそ、魔王にあんなことやこんなことしてぐふふ・・・」
「あ。鼻血出ていますよ。って、何を想像しているのかは知りたくないけど、思いっきりエロネタなんだろうなぁ・・・」
「それじゃあ。今から貰えるスキルや、チート能力の説明をしちゃいますねぇ。」
なんか、よくわからんが。終わったと思った私の一生はまた新しくスタートするらしい。どうなることやら・・・
なんか、気分を変えたくなったので、色々はっちゃけた物語で再出発します。ので、いったん完結とさせていただきます。ここまで読んで頂いた方。ありがとうございました。きっと、微妙だったことでしょう・・・感想も来ないくらいでしたからねぇ・・・まあ、受け取り方を知らないので、そもそも出せない状態の可能性もあるかもしれませんが・・・
では、次回作にご期待ください。設定とか、プロットを作ってからのスタートになるので、少し間が空いちゃいますけど、なるべく早くあげたいと思っています。




