第二十六話 少女を説得
結局、所属していた国が無くなっていようとも、存在理由でもある【繁殖活動をする】という命令を取り消すことは出来なかった。ただし、先延ばしにすることに何とか成功した。相手の気持ちを尊重することはとても大事なことだとメリル隊長やアリス事務官たち女性隊員全員からの説得を受けて、しぶしぶ納得した感じではあったが、強行されることはないようだ。が、夜這いをかけられる可能性がある気がするので、寝室のドアに鍵をかけたり、魔法で対策したりしていかないとな・・・
それと、彼女の名前が正式に決定した。いくつか出ていた候補の中、私の出した案はどれかと聞かれて【エイム】と答えたら、それで良いと言われた。
エイムは様々な知識を持っていた。それこそ、自分自身の計画内容や目的、当時の勢力図や他の研究所の位置など凍結処置される前までに記録されたものはすべて。そこで、偵察部隊の次の目的地が決定された。エイムから得た情報を基に国内にある遺跡調査を行うということだ。なぜそんなことになったかというと、どのみち10年間の不可侵条約がある為、偵察部隊にはやることが無いからだ。
次の遺跡はここから少し北に行った場所にある。軍事兵器研究所だそうだ。ただ、そこで何が研究開発されていたのかまでは秘匿情報の為、エイムも知らないそうだ。にしても、結構すごい技術力を持った国だったようだが、なぜ滅んでしまったのだろう?エイムが言うには敵国との戦争で滅びを迎えたのだろうとのことだが、果たしてそれだけだろうか?
エイムは落ち着いて話してみると、無感情な喋り方以外は普通の女の子と変わらない気がする。やたら、私に体を寄せてくるのには周りからの呪詛のような視線が来るので困りものだが、エイムのその積極的な行動に触発されたのか、次の遺跡に到着して、拠点を建てる頃には女性隊員たちには彼氏ができていた。もちろん、あぶれた男性隊員たちがいるのだが、それは近くの街に休暇を多めに出してやることで不満を解消することとなった。カップルになった者たちは、カップルになったがゆえに街への休暇が減らされたが、特に不満は出ていないようだ。なぜなら、その代わりに男女同室の許可が出されたからだ。大丈夫かな?出産ラッシュとか来ないかな?
完成した拠点はログハウスのような丸太を組んだだけの簡単なもので、大きめに作られた食堂以外は二人用や、四人用のものがいくつか建てられた。ちょっとした村のようになっている。
そんなこんなで、ようやく落ち着いた頃に帝都に報告に行っていたメリル隊長やアリスさんが帰って来た。どうやら、エイムについての報告と偵察部隊預かりの許可や遺跡調査の続行許可を取って来たようだ。カップルだらけになっている隊を見て、メリル隊長は笑い、アリスさんは泣いた。どうやら、残った男性隊員の中に好みの男性がいない上に半数以上が帝都に彼女がいるそうだ。残り物には福がなかったようである。
今回の遺跡調査は、入り口を掘り出すところから始めないといけないので、遺跡調査に入る前が大変なことになりそうだな。道具を揃えるだけでも一ヶ月はかかった。そこから入口を掘り出すまでに半月、崩れないように整備するのに半月といった感じだ。
ようやく入り口までの道が確保されて、いざ遺跡の中へ!と思ったら、一階部分が半分ほど埋没していた。どうやら、もうしばらく土木作業は続きそうである。




