第二十一話 地下
三食続けてカレーはきついです・・・
朝からみんな胃もたれして弱り気味な中、遺跡調査は始まった。私たちの班は昇降機の先の地図作成となった。
昇降機の前に来てボタンを押すとすぐに扉が開く。周りは驚くも、私は前世でなじみのあるものなので驚きはないが、しかしまぁ。こんなものがあるとはねぇ。
「一階、神殿エリアです。」
音声案内がそう告げると、私以外がどこから声がするのか、誰かいるのかと騒ぎ出す。
「あ、あの。この声は人がしゃべっているわけじゃないですから。昨日も同じこと言っていましたし。たぶん、録音じゃないですかね?」
「録音?あの音を水晶に閉じ込めるやつか?結構高価な魔道具だけど、そんなものが使われているとか、この遺跡どれだけ凄いんだよ・・・」
あ、録音できるのがあるんだ。適当に言っただけだったので、言った後で無かったらどうしようと思ったが、あってよかった。
「それじゃあ、降りますか。」
一階から上の階が無いのは、入り口の呼び出しボタン?あのボタンなんていうのかわからないけど、あのボタンが下向けのだけだった。
「なあ、ユーロ。お前なんか慣れてない?」
「え?そ、そんなことないですよ?」
「ユーロさん。怪しいです。実は貴族様なんじゃないですか?」
「いえ。ケイトさんが玉の輿を狙っているところすみませんが、貴族ではないです。」
「な、なぜ私の壮大な野望を!」
いや、小さいから。とりあえず、ケイトさんは無視してとっととボタンを押した。ていうか、下の階と一階の二つしかボタンないんだ。まあ、地図作成が楽だけどさ。でも、このボタン。100って書いてない?昇降機が動き出すと、なぜかみんな静かにしている。出入り口の上に現在の階数が表示されているんだけど、ものすごい速さで10を超えた。え?本当に地下百階なの?この神殿って、何の施設なの?普通神殿といえば神様を祭るだけだよね?
一人不安を抱えつつも、なぜか皆静かに昇降機が停まるのを待っていた。他のみんなは昇降機初めてと言っていたんだけどな。エレベーターで静かになっちゃうのって本能なのかしら?そう思っていたら、ポーンという合図とともにドアが開いた。
「百階、研究エリアです。一般の方は赤いドアから先は入れません。入ってしまった場合は、強制排除されますのでご注意ください。」
え?なんか今物騒なこと言わなかった?強制排除されるって、何されるの?
「暗いな。誰か灯りを頼む。」
「了解。光よ灯れ!」
アントニオ先輩の指示で、ケントさんが魔法で灯りをつけた。すると、白い壁、白い天井、白い床といういかにも研究エリア感を出している通路が見えてきた。結構長いな。奥まで500mはあるかな?左右に等間隔にドアがある。左に5つ、右に12はあるかな?
「ドアは開けなくていいからな。メリル隊長からじっくり時間をかけるように言われているから。」
アントニオ先輩がそう指示を出すが、メリル隊長。やっぱり休暇を伸ばそうという作戦ですかね?幸い、ドアにはその部屋が何の部屋なのか書かれている。これは、金属のプレートに文字が掘られているのかな?
左の手前から検査室、診断室、採血室、病室A、病室Bと書かれており、右の手前からは病室の個室のようだ。個室1番から12番と書かれている。そして、一番奥には赤いドアがあり、関係者以外立ち入り禁止と書かれてドクロのマークが入っている。危険を知らせるマークってこっちでもドクロが使われているのかな?
「この先は霊安室か?なんか頭蓋骨の絵が描かれているが。」
あ、危険って言う意味は一般的じゃないっぽい。アントニオ先輩がこの絵はなんだ?と首をひねっている。私を除く三人も同じように首をひねっている。
「たぶん。この先は危険だってマークじゃないですかね?昇降機でも警告していましたし。」
四人そろって、なるほどね。という顔をする。ケイトさんは周りに合わせただけなのか、若干ずれる。
「それじゃあ、この先は行かなくていいな。誰が行くかはメリル隊長が決めるだろう。」
「私たちじゃないと良いですよねぇ。」
そうだねぇ。と男四人で戻ろうとした。あれ?ケイトさんはどこ行った?そう思って振り返ると、なぜか赤いドアを開けているケイトさんが居た。
「えー!ケ、ケイトさん!何開けているんですか!!」
「え?この先は部屋じゃないんじゃないかなぁと、ちょこっとだけ覗こうと思って。」
というか、何で普通に開くの?普通、カードキーとか暗証ロックかかっているでしょ!って、赤いドアの周りにはそれらしきものは無い。おい!急にアナログかよ!!昇降機がかなりすごいレベルっぽいのにセキュリティーはザルなのかよ!!
「あー!やっぱりこの先も通路ですよぉ~!みんなぁ~地図作成しましょ~!」
「しょうがないな・・・。みんな。もう少し頑張るか。」
「まあ、来てから一時間も経ってないですからねぇ。今から戻っても、上の階の調査に回されるでしょうし。部屋じゃないなら地図作成しといても大丈夫でしょう。」
「ですねぇ。」
ケイトさんの提案にアントニオ先輩もケントさんもアッシュ君も乗るようだ。まあ、しょうがないか。ドアを開けて少し経ったけど、ケイトさんが細切れになったりしてないようだし。セキュリティーは人力だったのかもねぇ。地下百階まで掘ったり、二階しか案内しないので無駄な音声案内付きのエレベーターまであったりするのになぁ。そういえば、監視カメラもないようだようなぁ。技術が偏っているのかねぇ?みんなが赤いドアの先に行くので私も付いて行くことにした。
大胆なケイトさんである。




