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旅立ち  作者: 白銀みゆ
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輪廻3

「この世界で子供たちの誕生と再生を担っているのは私よ。

もし、また卵が現れたら、すぐに持ってきてちょうだい。」


マザーはそう告げると、姿を消した。


「部屋に帰ろうか。」


卵の殻から顔を出している”47番目の子”にそう言うと、

なんだかうれしそうに短く鳴いた。


部屋へ戻ると、床に直接クッションを置き、

その上に卵を置いた。


すると、”47番目の子”は、いそいそと卵から出ようと奮闘する。

手伝いたい気持ちを抑え、彩伽は見守っていた。

卵の殻はかなり硬いので、一先ず頭だけ飛び出した状態ではどうにもならず、

一度顔を引っ込め、今度はおしりから出ようとしたり、ヒビが入ったところを、

一生懸命につついたりしていた。


「頑張って!」


彩伽が気持ちを込めて、しかし小さな声で言う。


その後もしばらく格闘していたが、結局出てこられず、

頭だけを出す生活がしばらく続いた。


「名前を考えないといけないわよね。」


頭だけ飛び出した卵を抱えて、彩伽が言う。


「クァー」


フクロウのような外見なのに、変わった鳴き方をする。

この世界の子供は、創造者の影響を受けてどのような姿にでもなるから、

実際にはフクロウではないのは理解しているのだが、

とても違和感を覚えていた。


「あ!!」


卵に今空いている穴を通れるサイズの何かに一時的に変えれば良いのでは?

と、おもいついて、細長い蛇になるようイメージした。


自分の姿に混乱したのか、卵の中で絡まってしまい、出てこられない。

仕方がなく一度他の姿に変えることにするが、

何が一番良いのかわからない。

質量も変えられるとよいのだが、どうやら絶対的な質量は変えられない様子だ。


それほど大きくないフクロウだから、

頭さえ出てしまえば出てこられそうなものだが、

何故出てこられなかったのか?と、考えて、合点がいった。

出ようとして卵の中で羽をバタつかせれば、それは当然出てこられない。

手伝おうとしなかった事が裏目に出ていた。

しかし、自力で出ようと試みることは大事なことだ。

これはもう助けが必要な状態だから仕方がない、

と、無理やり自分に言い聞かせた彩伽は、

”47番目の子供”を元の姿に戻す。


「私が出してあげるから、動かないでじっとしていて。」


少々乱暴だが、頭を掴み卵を抑えながら引っ張り出す。


「っ…出た。」


あっさりと卵から出た”47番目の子”は、すぐさま彩伽に飛びついた。

そして、穏やかな寝息を立てて寝てしまった。

彩伽は思わず苦笑する。


名前はなかなか決まらない。

アルテルの印象が強すぎて、決められないのだ。

しかし、いい加減決めなければ。

彩伽は思考を巡らせる。


「卵が虹色に輝いていてきれいだったから、虹って意味の言葉にしようかしら。」


なぜかこの世界はラテン語と縁が深い。

虹をラテン語でなんと言うのか。

そう訊ねると。


「プルウィウスアルクス」


目をパッチリ開いた”47番目の子”が答えた。


「もしかして、ルクスは光という意味かしら?」


”47番目の子”は頷いた。


「それなら、ルクスよ。

正式名称はプルウィウスアルクスだけど、

略してルクスと呼ぶことにするわ。」


光がそのまま流れてきたような不思議な風が吹いて、目が眩む。

ルクスの姿が変わっていく。

それは私の中により具体的なイメージが芽生えたことによるものだ。


顔は人間なのだが、頬のあたりから鱗があり、

それは身体全体に広がっている。

指と足には水かきがあり、その姿は半魚人のようだ。

キラキラと輝く白髪は長く、背中のあたりまである。

耳はなく、変わりにエラがあった。

彩伽は白い半そでワンピースのような服を着せ、マントも付けた。

ワンピースは踝のあたりまであり、襟元はふんわりと丸い。


「ルクス、私は彩伽よ。」


自己紹介をすると、ルクスは従者が主人にするように、

膝をついた。


「よろしくお願いします、彩伽。」

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