はじまり 5
壊れてしまった世界の悲しみと、苦痛。
それと同時に、安堵のような空気が、
身体を満たしていく。
この世界は、ずっと私を待っていたのだ。
感じると同時、自然と涙が溢れる。
溢れた涙は薄いピンク色の粉になり、
洋服のレース部分に微かな彩りを添えた。
この場所で、私は世界の種を植え、育て続ける。
すべき事は悟ったが、やはり疑問は残る。
しかし、問い詰めたい気持ちはあれど、
何を聞けばよいのかわからない。
そもそも私の知りたい事はなんだろう。
何を聞いたら、納得出来るのだろうか。
そう考えているうちに、
身体が無意識に動き出した。
そこに明確な意志はない。
手を伸ばせば器は引き寄せられ、
触れた瞬間に種が植えられた。
ほんの一瞬のこと。
それだけで世界が始まった。
すると育っている世界の方から、
光の粉が飛んでくる。
「新しい世界を歓迎していますよ。」
器に吸い込まれると、
中の様子は刻々と変わっていく。
「こんなに早く育つものなのね。」
まるで惑星の誕生を早送りで見ているかのような景色を注視すると、
尚更早く育つようだった。
「気をつけて。
あまり早く育て過ぎては、尽きるのも早くなります。」




