世界16
「彩伽、この世界の事を話す前に、
まず、僕の話をしなくてはならない。」
彩伽は、父の話に耳を傾ける。
行隆の話はこうだ。
その昔、超新星爆発を起こしブラックホールとなる瞬間、
惑星の核であった自分が意思を持ち、どこかの星で生命として活動する事を願った。
その結果、地球に辿り着き、人間として生まれることが出来た行隆は、
自分の正体を忘れ、まったく普通の人間として生きていた。
本当は人間でない自分が、地球の人間をの間に授かったのが彩伽だった。
彩伽は宇宙の力を秘めていた。
行隆が宇宙の研究に没頭したのもそのためだった。
当時は自分が何者であるのかもしれなかったから、
宇宙を解明することが、彩伽を解明することに繋がると思っていた。
研究を重ね、あらゆる物質や理論から、
様々な実験を繰り返し、とうとう実際に小さな宇宙を創ることに成功した。
容器の中に閉じ込めた宇宙はそれは素晴らしく美しかったが、
その規模故にすぐに消滅してしまう。
宇宙のエネルギーについて、それは想像力なのではないかという途方もない理論については、
実験をするのが実に難しく、意識不明の人間から物質を採取する必要があった。
特に想像力が強い人間でなければ、その物質は放出されておらず、
集めるのに苦労したそうだ。
だが、ある日、眠っている間の彩伽から、その物質が大量に採取できる事に気が付いた。
それからというもの、眠っている彩伽からその物質を採取したが、
今度は保管する方法に困った。
ようやく保管する方法を見つけ、エネルギーを集め、
改めて実験したところ、今度は倉庫いっぱいに宇宙が生まれたという。
それでも小規模な宇宙だったが、惑星や恒星が活動し、
そのエネルギーを消費している。
宇宙を作り出す物質といっても過言ではないその物体を、
自分の娘が、寝ている間、大量に放出しているのは何故か。




