世界15
ゆっくり進むようになってからというもの、ずっと人型で進んでいる彩伽は、
時折、来た方を振り返った。
光の足跡が消えていないかを確かめるためだ。
消えていないことを確認して、また進む。
どのくらい辿ってきたのかは、もはや確かめようがない。
しかし、ここへきて更に変化を感じていた。
風が吹いている?
いや、後ろから風は吹いてきていない。
彩伽の向いている方向から、ちょうど彩伽のつま先のあたりに、
引き込まれるような空気の流れを感じた。
その方向へ進むと、流れは強くなり、吸い込まれそうだ。
彩伽は光の粒子の核となる部分を残し、一部だけをその方向へ投げた。
瞬く間に吸い込まれた光の粒子は、意外にもその吸い込み口の中心で滞留している。
どこかへ飛び出すようなことがないとわかり、今度は彩伽自身がその中心へと飛び込んだ。
すると、それまで流れていた風が止まる。
「彩伽…来たんだね。」
黒い粒子が集まり形を成す。
それは人型だが、すべてが黒いので顔の様子などがわかりづらく、
彩伽は目を凝らした。
「…お父さん?」
半信半疑で問いかけると、その黒い粒子の塊は頷いた。
この世界の創造主は、やはり父なのか。
彩伽が口を開く前に、行隆が口を開いた。




