世界9
「彩伽、道はもうどこまで続いているのか、こちらからではわかりません。」
部屋の外に出て道の様子を見ていたアルテルが告げる。
「そう。じゃあ、見えるようになるのもそんなに遠くないかしらね。」
明らかに疲れが現れている声。
「彩伽はすごく長い間移動していましたから、
もしかしたら、まだまだ見えないかもしれませんよ。
だって、それくらい頑張ったんですから。
そんなにすぐに見えたら、それこそがっかりじゃありませんか?」
彩伽は面食らった。
アルテルがすごく人間らしくなったような気がして。
それが、すごく成長したことのように感じられた。
なんとも不思議な気持ちだった。
「…そうね、そうよね。
アルテル、ありがとう。」
まさか、こんな風にアルテルに慰められたり、励まされたりする日が来るとは思わなかった。
それが、こんなにも心強いと感じるなんて。
一人ではない、という実感も伴い、どこまでも強くなれるような気がした。
すると、光の粒子が増大する。
そう、この世界は想像力がすべて。
「彩伽には出来ます。」
「私には出来る!」
声が重なって、笑みがこぼれる。
尚もあふれ出す光の粒子が、彩伽の見えないところで道を紡いでいく。
当てもなく進んでいた自分の暗く沈んだ心が停滞に繋がったのか。
そうか。
前向きにあふれる想像力に、限界なんて、ない!
いつの間にか彩伽は身体を形成していた。
光の粒子でできた、いわゆる分身のようなものだが、
それははっきりと人の形を成していた。
そして、その足元に道が到達した。
休むことなく、自分の足跡を視覚化する。
もう、迷うことも不安に感じることもなかった。
しかし、その足跡を見て、彩伽は愕然とし、
人の形を失い、再び光の粒子に戻ってしまった。
「なに、これ…」




