世界8
彩伽の旅はいつまで続くのかわからない。
同じ場所をぐるぐる回っているような錯覚を覚え、めまいがした。
目印を示す方法は何かないのか。
考えを巡らせているうちに、ふと思いついた。
今まで自分が辿ってきた足跡を視覚化することは出来ないだろうか。
同時に、いつもの部屋がある場所までの道を創る。
しかし、自分が移動した距離を考えると、とても消耗しそうだ。
そこで彩伽は、しばらくは動くのをやめて、いつも自分がいる場所への道作りと、
足跡の視覚化に集中することにした。
思い返せば、何故最初からそうしなかったのかと思うが、
それほど何も考える間もなく、飛び出したのだから仕方がない。
アルテルと連絡を取りながら、光の道が出来ているかを確認し、
作業を進めていく。
その道は、足跡を無視してまっすぐ今いる場所まで伸びるように強くイメージした。
さすがにこの作業は、予想通り消耗が激しく、彩伽本体に異常が見られた為、
アルテルがそれを報告した。
「彩伽!身体が激しく痙攣をおこしています。」
彩伽はそれを聞き、いったん作業をやめる。
その繰り返しを、しばらくは続けることになりそうだった。
作業を続ける中で、48体のうちの1体が消えかけたり、
彩伽の部屋が激しく明滅したり、
起こる現象は様々だった。
だが、何があろうと、現状は維持するように努めた。
当てのない場所へ向かいながら、当てのない場所に留まり、
当てのない作業を続ける。
彩伽は疲弊していた。
もしかしたら、一度部屋に戻るという選択もあったのかもしれない。
しかし、戻っている間に、今いるこの場所がわからなくなってしまったら、
全てが無駄になってしまう。
光の粒子の状態になっている彩伽自身も、
時折その粒子が尽きるのではないかという危機感を覚えながら、
ギリギリのところで、作業は続いていく。
いつになれば、道が見えるのだろうか。
それほどの距離を移動してきたのか。
一向に見えない道に、彩伽は思わずため息を漏らした。




