はじまり 4
「あなたが種を植え、私が管理をしてきた39個の世界が、
あの棚にあります。」
39…。
数字が頭の中を巡る。
「…いつ?」
半分無意識に呟いていた。
「あなたが6歳になった時から、ずっとですよ。」
アルテルが微笑んだのを感じ、
私を見知っていたのだとわかった。
「どうして…。」
また半分無意識に呟いた言葉に、
アルテルは苦しそうな空気を放つ。
「それは、ワタシにもわからないのです。」
少し悲しそうな、自分を嘲笑するような雰囲気を感じた。
「何も疑問に思わないワタシは、愚かなのでしょうね。」
アルテルが、映し出されていた世界を棚に戻すと、
また一つ別の世界を棚から引き寄せ映し出した。
「これが、あなたが初めて作った世界です。」
それは明確な形を成していない世界だった。
ただ、幸せな空気だけが実態を持たずに満ちている。
そんな風だ。
眺めているだけなのに、温かさを感じる事が出来る。
不思議な世界だった。
しかし、ふと様子が変わる。
悲しみや怒り、虚無感にどんどん侵され、
ついには玉が割れてしまった。
「え…」
割れたガラスは粉々になり、やがて光の塵となり、
その全てが私の中に吸い込まれていく。
「その世界はもう寿命でした。
もうすぐ尽きると悟ったその世界が、
あなたを此処へ呼び寄せたのです。」




