世界7
どこまでも続く暗闇を、彩伽は懸命に駆けた。
時折、アルテルと通信しながら、移動を続けていたが、
上も下も右も左も前も後ろもわからないような空間で、
自分が本当に目的地へと進んでいるのか、不安が徐々に大きくなる。
その不安を、つい、アルテルに吐露する機会も増え、
アルテルは、
「もう戻ってきて下さい」
と、言いたいのを、何度となく耐えた。
戻るときは恐らく一瞬だ。
これまでの長い旅も、一瞬で終わってしまう。
それは、とても辛いことだと想像できるから、
もう終わりにして戻ってほしいとは言えなかった。
まっすぐに進んでいるつもりでも、実はそうではないかもしれない。
前に進んでいるつもりでも、後ろに…
そんな不安と戦いながら、彩伽は、答えを探している。
アルテルは、ある時の通信で、彩伽が話した事が忘れられない。
「私、地球では自分で命を絶ってしまったでしょう?
時間はもう戻らないし、もう地球に帰ることは出来ない。
今だから、思うのかな。
もっと、お母さんと、お父さんと、ちゃんと話していればよかったのかな。
友達にも、他のいろんな人にも、もっと、もっと、ちゃんと…」
ああしておけばよかった、こうしておけばよかった。
止め処なく溢れ出る後悔が、今、彩伽を突き動かしているのかもしれない。
もう、二度と後悔しないように。
きちんと向き合わず、背を向けてしまった事を悔いて、
今はひたすらに前を向いている。
今の彩伽は辛いとも、逃げ出したいとも思っていなくて、
自分の役割を全うしようとしているだけなのかもしれない。
そう思っていたアルテルには、
彩伽の弱音は衝撃であり、同時に少し安心もした。
最初の頃の彩伽は、それこそアルテル自身と近いイメージを持った。
まるで人形のようで、美しくも中身がないような。
イメージの力は強大だったが、喜怒哀楽などの人間らしい感情を、
あまり感じなかった。
少なくとも、マロンが現れるまでは。
その変化についても、アルテルはとても不思議に感じていた。
どんどん人間らしくなっていく彩伽と、同調するように、
人間らしい感情を強めていくアルテル。
創造者には人間らしい感情は元から備わっているもので、
アルテルたちには感情は元から備わっておらず、感情を持ったのはアルテルが初めてだ。
なにより、世界を変えたのは彩伽が初めて。
世界が彩伽を必要としたのか、彩伽が世界を必要としたのか。
とにかく、この関係性は不可思議で未知数故に、解き明かしたい。
それは、アルテルも同じだった。




