世界3
行隆は何度失敗しても心が折れることなく、
常に前を向き、いつか必ず成功すると信じていた。
その自信がどこから来ているのか、自身も不思議に感じるほどに、
揺るぎないもので、これは、もしかして、第三者の意思によって、
突き動かされているのではないか、と、想像した。
しかし、それが実際どうであれ、自分が成すべき事は一つ。
正に憑りつかれた様であった。
そんな夫に対し、妻は不信感を募らせていき、
溝はもはや埋められないところまで広がっていることにも気が付かなかった。
その結果として、娘が起こした行動も、予想できるはずがなく、
目の前で起きる何もかもが、混乱することでしかなかった。
彩伽の母が救急車を呼んだものの、
病院に着くまでの間に心肺停止状態となり、
到着した病院で彩伽の死亡が確認された。
そして、彩伽は、埋葬された。
葬式が済むと、行隆の妻は家を出ていき、
一人家に残された行隆は、数日は呆然と過ごしていた。
妻は去り、娘も逝ってしまった。
喪失感は思考能力を停止させ、生きる意志さえも奪い、
ろくに食事もせず、睡眠もとらず、
そのうちに時間の感覚もなくなった。
今日が何日なのか、何曜日なのか。
今が何時なのか・・・
ふと、宇宙の事が過る。
まるで信号を受信したかのように、
行隆は貪るように食事をとり、家を飛び出した。
 




