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世界1
世界とは何か。
言葉とは時にひどく曖昧だ。
今、彩伽がいる世界。
これは、いったい何か。
いわゆる”宇宙”なのか。
そもそも、地球の人間には宇宙が何かほとんど解明できていない。
地球というのは宇宙の中にある銀河系という星雲にある一つの星に過ぎず、
更に、その一つの惑星の事すら、すべてを把握することが叶わない。
そのちっぽけな人間の一人だったはずの彩伽が、
世界を創っている。
創っている世界は、宇宙なのか。
この世界の広さも、目的地の目印もないのに、
果たしてたどり着けるのだろうか。
たどり着けなかった時、どうなってしまうのだろうか。
アルテルに起こされて、本体に無事戻れるのだろうか。
自分の不安がアルテルに伝わっていることは、
目に見えてわかっていた。
止めたいという思いを必死に堪え、送り出してくれたことも。
だから、例えたどり着けなかったとしても、
何か糸口だけでもつかみたい。
彩伽は、そんな思いを巡らせながら、
光の粒子の姿で、世界の主のような存在がいると言われる場所を、
当てもなく目指していた。
何となく、その主が自分の父親であるような予感を抱えながら。
 




