彩伽20
行隆が自分の仮説を検証しようとしていたのであれば、
自殺して今にも死にそうな我が子を救うために、
なんらかの手を打つのではないか。
もし、それがこの現状なら?
地球という一つの星で人間という形ではもう生きていけなくなった彩伽を、
世界を創るというこの空間に投じたのだとしたら…
考えたところで答えなど出るはずもなく、
しかし、何らかの形で、行隆が関わっていることは、
もはや否定できないのではないだろうか。
「アルテル、マザーという存在よりも、
もっと大きな存在があると言っていたわね。」
彩伽の質問に、戸惑いつつも、アルテルは肯定した。
「しかし、その存在はあまりにも遠すぎて、たどり着くことはできないだろう、と。」
光の粒子だけの状態であったなら、まだ可能性はあっただろうが、
実態化してしまった今、距離の想像は全く出来ないものの、
恐らくは不可能だ。
しかし、光の粒子だけを飛ばすならば、あるいは…
「アルテル、私はその存在に近づくために、できる限りの光の粒子を飛ばすわ。
だから、またしばらく眠りにつくことになると思う。
もしかしたら、かなり長い時間、目が覚めないかもしれない。」
アルテルは止めたい気持ちを抑え、黙って頷いた。
「48体の分身体が動いている限りは私は問題ないから。
だから、もし、48体の分身体に異変が起きたら、私を起こして。
戻ってくるように、私を呼んで。」
彩伽の目には不安の色が見て取れた。
怖くないわけではない。
それは当たり前だ。
当てもないところへ向かって行くのだから。
アルテルは、一つ深呼吸をしてから。
「はい。わかりました。」
と、力強く応えた。




