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旅立ち  作者: 白銀みゆ
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彩伽19

彩伽の父、行隆ゆきたかは、宇宙科学者であり、

ニュートリノの研究を専門にしていた。

そして、仲間と冗談半分で世界が実はこんな仕組みだったらという、

根拠もない話を度々していた。


ある日、研究チームのメンバーが家に遊びに来ていた時に、

ふと、父がこんなことを言ったのだ。


「なあ、彩伽!

実はこの世界が人の想像力でできているとしたらどう思う。」


あまりにも突飛な話に、反応に困った。

父の影響で宇宙に関する本はそれなりに読んできたし、

ニュートリノについても、多少は知っている。

科学者がなんとまた非科学的なことを言い出したものか、と、

一瞬思ったものの、彩伽は少し考えて、こう告げた。


「あり得ないとも言い切れないし、

そうだとしたら、私も世界を作ってみたいわ。」


父は嬉しそうにして、仲間たちは苦笑していた。


その実、父はその仮説を大真面目に検討していて、

論文まで出そうと考えていた。

宇宙が解明されていない以上、その仕組みがどうなっているか、

断定することはできない。

父の仮説が正しいと言えないと同時に、間違っているとも言い切れないのだ。


仮説と検証。

そして結論へつなげる。

父は、どのように行っているのかは誰にも告げていなかったが、

その検証を行っていたらしい。

それは母の話から推測できたことだった。


元は母も科学者であったが、地球上の自然科学の分野であり、

宇宙には目を向けていなかった。

時々馬鹿にするように、地球のことも解明できていないのに、

宇宙は広すぎるわ、と、言っていた。

途方もなくて雲をつかむよりもまだ不確かな分野だ、と。


だが、父は雲を足掛かりにして宇宙に飛び出し、

星を巡りこの宇宙の全てを知ることを夢想していた。

所属している研究所では、その論文の内容があまりにもロマンに満ちているので、

何度となくやり直しになっていた。

そのたびに、父は彩伽に、愚痴っていた。


「みんな夢がないよなぁ」


彩伽の記憶は自殺をしたところで、確かに終わりなのかもしれないが、

彩伽の身に起きたことには続きがあるのかもしれない。


「まさか…父さんが…」

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