はじまり 3
アルテルは色のついた玉の並んだ一角を指差し。
「あれは、既に育っています。
知らなかったでしょうけれど、あなたが種を植えたんですよ。」
ステッキをかざすと、一つの玉がアルテルの元へ引き寄せられた。
部屋の上部は、屋根のように三角でも、
平らでもない。
丸い器のようになっていて、
アルテルも私も浮く様な形で、足を接地していなかった。
「私が?」
頷くアルテルは、そのまま手に持っていた玉を、
部屋の上部の中央へ向け手放した。
「これは“詳細を写す鏡”。
この中に育つものを確認する為に使います。」
“詳細を写す鏡”の中央に触れた玉は一瞬強い光を放ち、
次の瞬間、丸い大きな器の表面にその中身を映し出した。
続く山々、小川、木々、建物はなく生命も存在しない。
それはまるで惑星だが、地球とはかけ離れている。
「これは、一体なに?」
訊いておきながら、回答を恐れていた。
耳を塞ぎたい衝動を必死で抑えると、
自然に身体が震えた。
「世界です。」
覚悟を決める間もなく、返ってきた答えは、
なんとなく察していたものだった。
しかし、実感など湧くはずもなく、ただ凍りついていた。
全く理解が出来ない。
否、考える事が出来なかった。




