彩伽16
アルテルは、ふと彩伽の様子が少し以前と違うように感じるのが、
服の影響だけではない気がした。
目の前の彩伽を食い入るように見つめると、
彩伽は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
問いかけられても、アルテルはなお彩伽を見つめ続けていた。
光の粒子は以前と変わらず、彩伽から湧き出ている様に見える。
しかし、元は彩伽そのものも光の粒子で形成されている事が認識できた。
それが、今は認識できない。
「実態化している…」
光の粒子は、実態化した彩伽の内側から溢れ出ていた。
「え?」
彩伽はアルテルの言葉に自らの身体を調べた。
見える限りを目で確かめ、触れることが出来る範囲に触れ、確かめた。
それでも事足りず、鏡を自分の周りへ出し、全体を見つめた。
今まで、人の形を成して、実態化したかのように触れ合うこともできたので、
すぐには気が付かなかったが、明らかにこれまでとは違う。
「彩伽。
もしかしたら今後は、彩伽の生活サイクルを変えなくてはならないかもしれません。」
実態化したというのが、すなわち人間の身体そのものである場合は、
食事や睡眠など、元来必要なことを行わなくてはならないはずだ。
しかし、これが、この世界においての実態化なら、人間とは違うものなのか。
今は謎であった。
「お腹がすいたり、眠くなったりするかもしれないってこと?」
彩伽は自分自身を不思議そうに眺めていた。




