彩伽14
彩伽は、まだ眠っている。
目が覚めるのか、不安になるほど、時は過ぎていた。
最も、この世界において正確な時間を確かめる術はなく、
早く目覚めないかと思うあまり、長く感じているだけなのかもしれない。
ゆっくりと再誕生した48体の分身は、アルテルが決めた担当の世界を守っている。
分身体は彩伽から産まれる光の粒子を集めてできたものだから、
彩伽から供給がストップすれば消えてしまう。
しかし、1体も消えていない。
彩伽は、眠っていても、48体の分身を維持するだけの光の粒子を消費し続けている。
裏を返せば、それ故に目覚めないのかもしれない。
自分が生み出した世界を守る為、今最善の策をとっている。
そういう事なのだろう。
彩伽が目覚めなくとも、この世界は保たれる。
この48体の分身さえ存在していれば。
だが、この空虚な感覚は、彩伽が目覚めない限り消えない。
アルテルは、外の様子を見に出た。
彩伽が、新しい部屋の集合体を3つ形成して以降、時折確認しに行っていた。
中心にある大きな部屋の集合体の周りに3つの小さな部屋の集合体。
中心のものが50階建てのマンションだとすれば、3つは10階建てくらいだ。
既に創造者の一部がそこに移ったようで、きちんと同等に機能しているようだった。
確認を終え、アルテルは部屋に戻る。
「おかえりなさい、アルテル。」
身に纏っている服がこれまでのドレスではなく、
ラフな白いワンピースだったが、元の彩伽だった。
「彩伽…おはようございます。」




