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彩伽4
真っ暗で音のない世界。
死んだのかな?
漂って、漂って、どのくらいの時間が経ったのかわからない。
右も左も上も下も、自分の身体が存在しているのかさえも。
身体が動かない。
息してる?
それからまたしばらく漂いながら、
少なくともここが自分の生きていた世界ではないという事は理解した。
至極当然のことなのに、ずいぶん時間がかかったように思えたが、
時間の感覚もなく、そもそもこの場所に時間の概念があるのかもわからない。
痺れていた身体が元に戻るときのような感覚が全身に広がり、
不快感に意に反して声が漏れる。
「うっ…」
と、同時に、声は出せるという事を認識した。
不快感はかなり長い間続いている様に思え、同時に寒さに震える時のように、
声が漏れ続けていた。
やがて、それが収まると、ようやく身体の感覚を明確に感じた。
その後、この世界の一つの部屋へアルテルに導かれ、今日に至る。
それも、もう、おしまいなのだろうか。
「アルテル…もしかして、この世界にいる人は…」
俯き、アルテルは絞り出すような声で答えた。
「はい・・・。ここに居る人達は、すべて自分の人生を拒んだ人です。」




